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碧空の下で 01  作者: 安曇 穂高
04. カナダへの適応
12/27

碧空の下で 011

 列車はセントローレンス川を渡河し、ケベックに辿りついた。オリンピックの開会式が今日開かれる。ケベック中央駅に到着する間際になって、実父からメールが来た。ここは地下区間だがインターネットは繋がる。文面は以下の通りだった。

―第2次日中戦争で停戦が成立した。もう日本は、関西地方から東しかないが、平和になったしどこにいるかわからないが戻れ。―

 しかし、それを遺憾に思うかのように北朝鮮がアメリカの領海にミサイルを着弾させ、米朝戦争が開戦した。もう平和は極東にない。

 しかし、オリンピックは平和の式典だ。日本やアメリカ、中国など2つの戦争に参加した国及び地域は参加不可能というわけではないが、選手の数が明らかに少ないのだ。それをジャスティンは複雑に思いながらケベック中央駅の地下通路を通り抜けた。この先には先月開業したケベック地下鉄が走っている。

 しかし、表記が全てフランス語だ。フランス語しかない。僕は英語なら概ね理解できるが、フランス語だと一切のことが分からない。日本の中学校の頃は一切習っていないから。

 その表記について、すぐ横に座っているジェシカに尋ねると、意表をつくような発言が返ってきた。

「フランス語、全くわからないの?」

「そうだよ。日本の学校では、外国語の勉強は全て英語と規定されているんだ。」

 ここでアンドリューが「子どもがやりたい勉強をさせれば勝手に伸びていくんだし、なんで日本では宛かも既存の軌道しか通ろうとしないの?」と的を射た質問を投げた。しかも県ごとに違うのか聞いている。

「日本の学校は集団主義な考え方を採用し、個人主義的な思考や論理は全て粛清されるんだ。」と返す。

思い返してみると、何度も体育の授業では組体操やマスゲームをさせられたな。それはその象徴的存在となる。しかも、生徒の自主性によるものではなく教師の強制だった。これはカナダ人からしたら目を疑わせるのだろう。昨日、ミシェルは日本とカナダの学校の違いに関して簡単に教えてくれたな。簡単に言うと、飛び級制度がある、落第もある、クラブは地域が運営。そんなことだった。

 La Cité-Limoilouという、Québec Centre 駅から西に五駅のところで降りると、オリンピックの開会式が始まりそうなところだった。今年のオリンピックは、戦争によって日本・韓国・北朝鮮・中国・ロシア・アメリカの選手がかなり少ない。戦場にいるのも少なくない。そうCBCは語る。

 世界中およそ200の国家の選手たちが入場する。カナダはCで始まるから、かなり早い。最初に入ってきたのは当然ながらギリシャ共和国。次はアフガニスタン民主共和国。5年前、金融封鎖や紛争で世界情勢を動かしていたが、どれも今は解決した。そうこうするうち、カナダの選手団が入場した。第2の我が国とも言える国と考えると、途端にあの楓の葉の国旗に愛着を持つことができる。ジンバブエの選手団の入場が終わったとき、カナダは今回、かなり多い人数だと思った。

 しかし、日の丸とメイプルリーフの2つが並存する式典には複雑な思いをしているジャスティンがいた。その側のエリックはそういう思いをしないで済んでいた。

 開会式の後は、サッカーの試合が行われる。今日はカナダvsイギリスだ。というか、イングランド、スコットランド...と分かれないのか。ワールドカップのとき分かれてるのに。

 試合を始める前に、当然ながら国歌を斉唱した。勿論だけど、右手を左胸に当てながら。とやるのはアメリカ式。我々はカナダ在住なので行わないけれど。こうすると、国家や国旗への忠誠の証になるらしいと聞いたことがあるが。ただそこにあるのは起立して歌う光景だ。

 しかし、文化の違いだけを取り上げて、aとbは違うと結論付けるのはまずいと思う。先ず、同化しなくては。

 結局、カナダが得点すると概ね盛り上がった。カナダのミニフラッグを掲げている私たち、スティーブンソン家がそこには存在した。

そして、カナダは金を取った。実に圧勝だった。皆が喜びに包まれた瞬間だった。横を見ると、なぜかイギリス出身の筈のエリックが満面の笑顔を見せる。何故だろうか。

 夏休みも終わり、高校生活が始まった。思い出といえば、ケベックオリンピックと、奉仕活動だった。なにせ、大学入試にこういうことも問われているというし、自己や他者の為にもなるしと思ってやった。そして、なによりもジェシカに受け入れてもらったこと。

さて、カナダでの高校生活1日目は、学級を確認した後、数学が1時間目だから、数学の教室に向かう。日本の学校でも数学は特に不得意だった。そういうことを考えると、小雨が降り出してきた。傘を持ってきていない。

 前の棚から教科書を取ると、授業が始まった。しかも最初から先生が遅れてくる。よりによって、三平方の定理か。これは暗澹たる単元ではないか。

三平方の定理の授業では、証明を複数考えろと言われた。授業を先生主導で行わないのか。しかし、一つも出てこない。なにせ英語で発表しないと伝わらない。単語は出てこないし、方法もわからない。それを探求するのがこの授業だ。数学は靄の中のままか。

 2時間目は地理の授業である。まじか。今回の授業で、東アジアの話だった。で、授業の前に日本の話になったとき、ジャスティンは呼び出された。そして日本にいたときのことに関する話をして欲しいという。ジョシュアは北朝鮮に関する話で同様のことがあったそうだ。

 そんなこんなで、初回の授業では、中国の地理を扱った。安徽省、陝西省、浙江省…。ある程度覚えないと、次の地理のディベートの授業が聞き流しになる。漢字では覚えているのに、英語名では覚えてない。

 さて、3時間目は国語…と思いきや、体育だった。なにを行うのかはわからない。いやいや、よく見れば国語という文字がある。要するに英語かいな。

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