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夜空…

それから夏。あの日のことは忘れられない大切な思い出、私の宝物…


今日、8月16日はこの病院のある街の小さな花火大会の日。私は花火を見たことがまだ一度もない。いつもいつもこの時期はきまって体調をくずしてしまうからだ。でも、今年はどうしても花火を見たかった。あの子と一緒に。今年は体調だっていいし、先生も私がしたいと言えば大抵のことは許してくれるということも知っている。だから、あの子を誘って一緒に花火を見ようかとしばしば考えては見るもののなかなか誘う勇気がでずにいた。しかし、そう考えているうちにも時間は刻一刻と迫っているわけで、最終的に一人で悶々と考えることはやめた。見れるかどうか、あの子が来てくれるかどうかなんてまったく分からないけど、とにかく誘ってみようという局所についたのだった。

そう決まってからは思った以上に順調に物事が決まった。先生は無理をしないことを条件に快く許してくれた。あとはあの子を誘うことのみ。でも、探す必要なんてない。あの子はきっといつものようにあの桜の木の下に来てくれると信じているから。待っていればきっと大丈夫。そう思いしばし待つことにした。

辺りは次第に暗くなってきた。いつもならとっくに来ているはずの時間なのにあの子はまだ来ていない。諦めて帰ろうかと何回も思った。けど、今年はどうしてもあの子と一緒に見たかったから、見ないといけないような気がしたから諦められなかった。それから少し経って、辺りはすっかり真っ暗になり一発目の花火が打ち上がった時の事だった。真っ白なカーディガンに身を包んだあの子が現れたのは。私は花火を見に来たはずだったのに、あの子がここに来てくれた事への喜びのあまり一発目の花火を見ることも忘れて泣き出しそうだった。諦めなくて良かったとそう心から思った瞬間だった。

私を見つけたあの子は迷わず私のもとに歩いて来てくれた。それからは二人で何も言わず一緒に花火を見た。何も話さなかったけど、私は隣にあの子がいるというだけで満足だった。二人だけの空間がただただ愛おしかった。

そして最後の花火が打ち上がり、私の初めての花火大会は終わった。花火が完全に見えなくなってもなを私達はその場から去ろうとはしなかった。二人揃って星と月だけが輝く空を静かに眺めていた。しかし、あまり長くここに居ては先生に心配を掛けてしまうだろうと思い、私はあの子に別れの挨拶を告げようとあの子の方を向くと、あの子は大粒の涙を流していた。私は突然のことで焦ってしまったがしかし、あの子の涙は綺麗だと思った。何故泣いているのか聞きたいことはあったけが、私はまた黙って星の輝く夜空を一人眺めた。

それから少し経って、消灯の時間が過ぎていることに気付いた私達は、黙ってその場を後にした。その頃にはもうあの子は泣いてはいなかった。別れ際、私達は笑顔で別れの挨拶をした。

「また明日。さようなら。」と。あの子は決まってさようならとしか言ってはくれなかったけど、また明日会うことができるだろうと私は一人信じてその場を去った。その時、ふと「ごめんね。」というあの子の声がした気がして、振り返ってももうあの子は居なかった。


あなたと一緒に花火を見れて良かった。あなたと見た花火は本当に綺麗だったなんて恥ずかしく言えないけど…


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