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サンデー猟師、異世界にコピーされる  作者: 鳥野葉霧
たった一人の駆除隊
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45.命の重さ

「ねぇ、タケル、そういえば残りの罠は未だ見てないわよね?」


べるでがトルティーヤを熊脂で揚げたタコチップをポリポリ食べながら、

アンがふと思い出したように喋る。


「そう言えば、そうだったね。でも自作罠だからなぁ、掛かって無いと思うんだけど」


「ダメよ、きちんと見るのが仕事なんでしょ?

そういえば、さっき二つ目の罠を見てる時、

ピャーって声が聞こえたような気がするんだけど、

タケルは聞こえた?」


「いやぁ、気が付かなかったけどなぁ・・・いやソレもっと早く言えよ」

・・・こぼれ話にしている場合ではない。


と言うことで、昼過ぎから罠の見回りと、ついでに新しく掛けてしまう事にした。


先程猪を取った罠を掛ける。

足跡は盛大についているし、罠周りもめちゃくちゃに荒らされている。

血の跡も残ったままだ。


まぁ良い、通るとすれば・・・きっとまたココを通る。


そして、それは4つ目の罠だった。

八尾はシカとその姿を見た。小鹿だ。バンビだ。バンビーノの略なので子供だ。

ぶっちゃけウリ坊だってバンビだ。


罠の横で小鹿が座っていた。

まだ鹿の子模様が抜けきらない1歳鹿だ。

罠に掛って動けないので座り込んでいるみたいだ。

初めてみるのであろう人のことなど全く気にしていない。シカトである。


そして、奥・・・5つ目の罠の方に目をやると、二回り大きい鹿が掛かっている。

そちらは前足に罠がかかり、とび跳ねて逃げようとしている。


「親子なのかな?タケル?」


「親子・・・ぽいかな」


「留めるの? タケル・・・」


シカた無い。情けは無用なのだ。

春になると畑の新芽を食い荒らす害獣になるのだ。

ようやく生えてきた新芽の先端をチョイチョイと喰って、作物をみなダメにしてしまうのだ。

それを考えると可哀想などと言っている暇はない。

カクカクシカジカと説明をしている暇もない。


留めるしかない。いや留めなくてはならないのだ。


心を鬼にして5つ目の罠に向かう。

薪ざっぽを手にして・・・


カツッ 


ふらふらっとする鹿の、罠が掛かって無い方の前足を掴んで、前から首の下に剣鉈を沈めた。

シカから力が抜けていく。目は瞬きもせず開いたままだ。

罠を外すと血抜きもせずにストレージに入れる。


続いて小鹿だ。

こちらもチャっと留めてストレージに入れる。


八尾もアンも終始無言だった。

アンも判っている。

里山に出てくる獣は畑を荒らす害獣なのだ。

でも小鹿だ。判っていても納得は出来ない。


親鹿が居なくなった小鹿が生き残る確率は低い。

それも理解は出来る。でも溢れる涙は止められない。


帰り道も無言だった。

八尾もアンが何も言わないことを判っている。


狩って食べることを目的とする狩猟と違って、有害駆除は駆除が目的なのだ。

それが意味するところは・・・重い。


八尾は一人、河原で鹿を捌いた。


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