表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サンデー猟師、異世界にコピーされる  作者: 鳥野葉霧
村の暮らしもサバイバル
17/146

17.かの山を越えて

南に行こう。


川沿いに海へ向かえば、人に会えるかもしれない。

水の心配もない。


ただ、川沿いを素直に歩く、というのは効率が悪い。

川は蛇行しているし、蛇行の外側は抉れていて斜面も急だ。

勿論、遊歩道など無い。

川から付かず離れず、なるべく高低差が無いように歩く。

獣道はちょうどそんな感じに続いている。


ただよく見て歩かないと餌場や水場に向かう道や遊び場と言ったところもあるので注意が必要だ。

まして此方は二足歩行、4WDには敵わない。

獣道は人間用の道では無いのだ。周りをよく見て進む。


たまにウサギを見かける。雪が日陰にしか残ってないからだろうか?毛の色は茶色だ。

ピョンピョン跳ねて木のウロに隠れる。

現れては隠れる。隠れては現れる。

まるで一羽のウサギに監視されているような気になる。


ウサギはなかなか難しい。驚くと飛ぶように跳ねて逃げる。

ピョンピョンはねたかと思うと、パッと方向を変えたりする。

鷹や鷲等が天敵だ。

大きな耳・・・と言っても飼いウサギより小さいが・・・

を駆使して音を拾い、危険を察知する。

どうやらポチの足音を聞いて逃げ出しているようだ。


クレー射撃でもラビットと言う競技がある。

クレーが飛ぶのではなく、横に転がっていくのである。

射撃回数が増えるとクレーのコースに散らばった破片も増え、不規則にクレーが跳ねるようになる。

速いのでなかなか中てるのが難しい。


たまたま手ごろな距離に現れたので、さっと870を取り出して三号弾を一発掛けた。

ポケットの弾刺しにいくつか弾を入れているので、870を出して装填するだけで撃てる。

勿論、近くに出たら捕ってやろうと頭の中でシミュレーションしていたのは言うまでもない。


バンっ! 散弾の乾いた音がこだまする。


ウサギは一度倒れたが致命傷にならなかったらしく逃げる。

ダメージはあるらしく後ろ足を引きずるように逃げる。


追いかけるが斜面も急である。


突然、ポチが動いた。

斜面を勢いよく駆け上がるとウサギを追い出した。

急斜面であるが、動きが良い。 

流石四つ足駆動。


ウサギに追いつくと首筋に噛みついてブルっと振った。

一瞬の技である。

ウサギはだらりと力を失った。

ポチは足元まで戻ってくるとウサギを地面に置き、鼻高々でこちらを見上げた。


「どやっ!」


鼻息が荒い。・・・気がした。

ポチが猟欲を覚えた瞬間であった。


「おー偉い偉い。よくやったな」

ワシワシと頬を揉む。ポチはちょっと迷惑そうな顔をするも、褒められて嬉しいのか尻尾はブンブンと振っている。

猟犬ならぬ猟オオカミの誕生か?

教えてもいないのに大したものである。


折角だから昼飯にすることにした。

河原まで頑張って降りる。

本流は今までより少し流れが緩やかで、そのぶん水量が多い。

デカい魚が居そうな感じにワクワクする。

水も欲しかった。ペットボトルは既に空だ。

食後に川の水を湯冷ましにしよう。

冷ましている間に釣りも出きるな。

と、流木を多めに集めてたき火を熾す。


そしてウサギを捌く。

ウサギは野兎病の病原菌を保菌していることがある。

傷の無い皮膚からも侵入するケースがあると言うことなので、ビニール手袋をして捌く。

まず、全身を触ってリンパ線が腫れて無いか確認する。

捌き方は他とほぼ同じだ。こちらも毛皮に瑕を付けないように慎重に剥く位か・・・

毛皮はフワフワで触り心地が非常に良かった。


肉になった。

一口大に切って枝に刺し、たき火で焼いていく。

自分の分には塩コショウで味を付けた。

齧歯類なので火は十分に通す。


ウサギ肉は一度、友人の結婚式でゼリー寄せになっているものを食べた事があった。

正直な話、コンソメの味としか分からなかった。

旨かったが・・・


今度はダイレクトに肉、素材の味の追求だ。

昔から猟をやっている人は焼いて喰うと焼き鳥みたいで旨いよ。

と、”焼き鳥のよう”と言う微妙な表現だったが、旨いと言っていたので楽しみである。


捌いている間に赤々と熾きになったたき火に炙られて、肉が焼ける匂いが辺りに漂う。


味の付いていない肉は枝を抜いて石の上に置く。

石は冷たく、熱々の肉から熱を急速に奪う。


味の付いた方を食べる。

焼き縮むかと思ってちょっと大きめに切ったが、なかなかのボリュームだ。

噛みついてちぎる。中から熱々の肉汁が出て口の中をやけどする。


咀嚼していくと旨みが口に広がる。 

疲れた体にしみいるような優しい味である。

旨い。


ポチも冷めた肉を一口飲み込むと、こちらを向いて「どやっ!」っとした顔をする。


「旨いな、よくやったぞ」 


褒めてやると尻尾が左右に動く。


「どやっ!」「どやっ!」前脚でさらにバンバンしてる


しつこい・・・


見れば肉を食い尽くしたらしく、お代わりの要求だったらしい。・・・大食いである。



さて、お湯を沸かすかな、と立ち上がった所てポチが唸った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ