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146.痕跡

「デカいな」


「ねっ、言った通りでしょっ、間違いなく熊よねっ?」


アンは周りを気にしつつ八尾と足跡を眺めていた


「ん、検討の余地も無い程くっきりした足跡だなぁこれは」


八尾はアンに連れられて山の尾根までやってきている

朝の散歩で熊の足跡を見つけたと言うのだ


尾根の向こう側には大きな熊の足跡が有るのに何故かそれ以上の歩みは無く、ウロウロした後、尾根の所から村に向かわず引き返したようだ


「まぁ角の取れ方とか見る限り先週位かね」


「掌だけであたしの手より大きいわねっ」


「爪も長いなぁ、やだなぁ、片目の奴より大きいんじゃないか?これ」


「なんで此処で引き返したのかしらねっ?」


「なんでだろうね、なんか気に食わない事でもあったかね」


「案外この間の爆竹騒ぎだったりしてねっ」


その言葉で思い出したようにストレージからライフルを取り出した


「なに?急にっ、獲物でも居たのっ?」


「いや、この所少し暑いだろ、少し撃って着弾を確かめておこうかな、と」


「なるほどっ、音と火薬の匂いもついて一石二鳥って事ねっ?

じゃせっかくだから的紙も用意しましょっ」


とアンは尾根沿いを走って連れられて山の尾根までやってきている

朝の散歩で熊の足跡を見つけたとの事


尾根の向こう側には大きな熊の足跡が有るのに何故かそれ以上の歩みは無く、ウロウロした後、尾根の所から村に向かわず引き返したようだ


「まぁ角の取れ方とか見る限り先週位かね」


「掌だけであたしの手より大きいわねっ」


「爪も長いなぁ、やだなぁ、片目の奴より大きいんじゃないか?これ」


「なんで此処で引き返したのかしらねっ?」


「なんでだろうね、なんか気に食わない事でもあったかね」


「案外この間の爆竹騒ぎだったりしてねっ」


その言葉で思い出したようにストレージからライフルを取り出した


「なに?急にっ、獲物でも居たのっ?」


「いや、この所少し暑いだろ、少し撃って着弾を確かめておこうかな、と」


「なるほどっ、音と火薬の匂いもついて一石二鳥って事ねっ?

じゃせっかくだから的紙も用意しましょっ」


とアンは尾根沿いを走って行き、距離を測りながら100mの位置に的紙をセットした

さらっと2、3発撃つつもりが射撃練習になってしまった


二人で二丁のライフルを交互に撃つ

銃身が熱く成らないように3発撃ったら一休みだ


「150グレインの弾頭は冬レシピのままで大丈夫っぽいわねっ もっとも100mじゃそんなに違いは無いのかしらねっ」


「いやいや168グレインの方は散るし痛い」


「確か火薬は同じ物なのよねっ?」


「そうそう、それでそっちより2グレイン少なくしてる」


「雷管見る限りまだ圧力的には余裕ありそうなのよねっ 上側に振ってみるのはっ?」


「薬莢の尻みる限りはね、マニュアルのベースは10インチツイストだけど、こいつらは12インチツイストだからマニュアルより上限の余裕は有ると思うんだよね、ただこの火薬だとコンプレッションロードになりそうだ」


「もっと速めの火薬にした方が良いのかしらっ?でももう痛いのよねっ?そんなに反動キツいのっ?」


「んー熊用に作ったけど、弾速考えると150一本でも良い気がしてきた まだ168撃ってないでしょ?撃つ?」


とアンに弾倉を渡した


X-BOLTに持ち替えて弾倉をカチッと入れた


ドンっ、、、ドンっ


「あー確かに痛いわっ 2発目は引き金引くときに身構えちゃったわねっ、3発目はもういいわっ」


「な、レシピだか腕だか正直判断つかないよ」


八尾は薬莢を拾いあげるとX-BOLT用の空薬莢入れに放り込んだ

箱からチンという短い音が鳴った


「薬量減らしたのはないのっ?」


「あぁ、確かいくつか作ったけど多分弾速が出てないんじゃないかなぁ」


「ちょっと試してみるっ」


と、アンは銃身が冷めたBARに持ち替えて撃ちだした


尾根の上はドゴンドゴンと賑やかである

、、、が、中にはクレー射撃場のようにひっきりなしにバンバン撃ちまくって居るところにひょっこり顔を出す奴もいるのである


「あっ!鹿っ!鹿よっ、鹿、鹿っ」


アンが小声と共に指差した方を見ると、斜面の下から見上げるようにこちらを見ている鹿がいた。

八尾はそのままゆっくりとしゃがみこんで持っていたX-BOLTの薬室に一発込め、ボルトをゆっくりと閉鎖した

そして鹿を見ながら銃をゆっくりと構えスコープに収めていく


「近いな」


距離は50mも無い

スコープ越しに袋角が良く見えた・・・見えすぎた

そのまま右手でスコープの倍率調整して12倍から6倍程度に戻した


「撃ち下ろしだから少し下を、、いや距離が近いから、、、ええと、、、」


鼻の少し上を狙う

鹿が大きく見える


指の動きで狙いがズレないようにそっと動かす

中った、と不思議な予感めいた瞬間に指が引き金に触れた


ダンっ


反動で動くスコープ越しに鹿がのけぞって倒れるのが見えた


「うわぁっ、ホント映画みたいに飛び散るのねっ」


フィールドスコープから目を離したアンは少し呆けたような顔で呟く


「何が?」


「狙って頭撃ち抜いたのよねっ?盛大に飛び散ったわよっ」


「良いとこ入ったみたいだな」


「うぇぇ見てるんじゃ無かったっ、夢に出そうっ、って火薬の匂いにも音にも怯まずに良く出て来たわねっ」


「あっちが風下っぽいんだけどねぇ、あんま匂いとか問題ないのかね?、まぁどうでもいいや回収行こう」


とライフルをストレージにしまうと尾根を下って行くのだった


・・・


回収作業は辛い


荷物の入ったリュックと3キロ以上有る鉄砲を担いだ上で道の無い山の中を引きずり出す

登山道と違いスキー場の休業中斜面のような所だ 

獲物の頭にロープをかけ、人数が少なければ滑車も使い急斜面を何度も往復するのだ


「ストレージはホント楽で良いなぁ」


八尾は呟きながらスコップで小さな穴を掘る


「何よ?いまさらっ?」


アンは鹿をストレージに仕舞うとダニやヒルだけを取り出し、八尾が掘った穴にパラパラっと捨てた

穴の底を覗くとワラワラと沢山の小さな虫達が蠢いている


「うわぁっ、よくもまぁこんなに付いていたわねっ、分別出来てホント良かったっ」


八尾は穴を埋め戻してスコップでペチペチと叩く

斜面を見上げながら、またこれを登るのかぁ、と溜め息をついた


「あっ、べるでがご飯って書き込んでるっ、さぁ帰るわよっ」


と、ちょろちょろと生えた笹を掴みながら斜面を登り始めた


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