144.竹は有能
バーン
Jアラートは鳴らないが、今日も朝から村のどこかでロケット花火が飛んでいる
「またか」
縁側で桶を作りながら八尾はつぶやく
「サルもしつこいわねっ」
「今時分山に餌も多いのに何故畑に来るんデスかね」
「そりゃ木の芽とかより野菜の方がカロリー高いから一度喰ったら病み付きに成るんだろうなぁ」
「なんか良い方法無いかしらっ?」
「べるでの電気柵は増やせないの?」
「鉛バッテリーの個数と容量が問題デス」
バッテリーは消耗品扱いでは無かった
充電はストレージに一度戻せば良いが、増やせないのだ
「バッテリーなんて消耗品なんだけどなぁ」
「まぁ仕方無いわねっ、どのみち個数が有っても毎日入れ替えだと手間がかかりすぎるわよっ」
「太陽光発電とか有れば何とか成るのデスが」
「流石のタケルでもソーラーパネルは部屋に置かないわねえっ」
「ちょっと痛い目に遭えば警戒して畑に入らなくなるかなぁ、、、そう言えばストレージにスリングショットが有ったな」
と八尾は早速取り出す
「なぁにっ?、これ」
「大人用のパチンコ」
「どうやって使うのっ?」
八尾は右手にスリングショットを構えると
ゴムを勢い良く引いた
バチっ
「痛ててて」
「なーる程っ、結構自虐的なおもちゃねっ
でもサルにどうやって遊び方を教えるのっ?」
「戯け者っ、、ゴムが劣化してたのか?、更新されたとき既に劣化した状態だったのかな?まぁ買って随分経ってたような気がするな」
「こっちの換えゴムは消耗品扱いなので新品が出ますデス」
「どれどれ、これをこうしてゴムを替えてと」
八尾はoooB弾を一粒つがえてゆっくりと引き絞り縁側から畑に向かって放つ
パシッ
弾はそのまま畑に吸い込まれて行った
「結構な威力デスね」
「まぁこれなら死にはしないだろ」
「でも、これ一つだけだと全部の畑の防衛には使えないわよっ?」
「ゴムだけ使って、、、ってこれ高いかぁ、こんなに高かったっけ?、、」
木でパチンコを作ってと思ったが止めた
「痛い目に合えば来なくなると思うんだがなぁ」
「巡回を持ち回りにするとかっ?それなら一つでも行けるんじゃないのっ?」
「うーん、やっぱり数は欲しいよね、被害はうちだけじゃ無いし、何処に出没するか判らないし」
ああでもない、こうでもない、と散々検討を重ねる
と、べるでか鍋を煮詰めながら不思議そうな顔で聞く
「矢尻付けない弓矢じゃ駄目なのデスか?」
「矢尻を付けない?、、、あぁっ、何でそれに気が付かなかったんだ、それだそれそれ!威力も要らないから適当に竹で作れば材料費もロハだ、弓矢は禁止猟方でも無い、追い払いにはもってこいじゃないか」
と竹を切りに出かける
本来は晩秋に切ったものが良いのだが仕方が無い
「もうちょっと早ければタケノコが採れたのにねっ」
すくすくと育ったタケノコは既に竹の風格を醸し出している
それでも良く探すと出遅れたタケノコが数カ所地面を膨らましているのが判る
べるでは鍬を取り出して掘り始めた
「真竹だからえぐ味キツいぞ」
所々にイノシシが掘って先端を食べた跡があるが、口に合わないのか一齧りしただけの痕跡しかない
「しっかり灰汁抜きすれば大丈夫デス、多分」
竹は古めの良く育った竹を選んだ
根元からノコを入れて切る
切れたら引っ張ると葉っぱで隣と支え合ってた竹がズルズルと倒れて行く
残った切り口には鉈を入れて割っておく
片刃の鉈で枝を払う先端部分も使わないのでノコで切って捨てる
八尾が根元、アンが先端を担いで家まで往復する
べるでは小さなシャベルで何かしている
3本目を運ぶ所でべるでに指摘されてストレージに入れる事にした
その後、べるでは竹の皮を剥いでいた
その後、篠竹の藪に行き、矢になる竹を切る
こちらは細いので鉈でも切れるが、切り跡で足を踏み抜いたりして危ないので面倒だがノコギリで切って行く
こちらもストレージに入れる
篠竹の束が沢山出来たので八尾は一息ついた
べるではこちらでもタケノコを取っている
こちらは掘らずに伸びた物を折り採るだけだ
アンも夢中になって収穫している
八尾も数本採ってたら夢中に成ってしまい、気が付くと日は傾いていた
・・・
竹を割る
夕餉の後のお仕事だ
タケノコを茹でる合間に弓矢を作ろうと言う事になった
2m程度に切った竹を先端方向から鉈を入れて割る
鉈を当てて上から木槌で叩くとスルスルとまでは行かないが、ミシミシと割れて行く
半分にしたら節を金槌で叩いて取る
それをまた鉈で半分に割る
後は小刀で形を整えるだけ
まぁ要はおもちゃだ
弦は凧糸を四重にした
矢の方も真っ直ぐな篠竹を選び適当な長さに切りそろえるだけ、、、
と思ったら、べるでが先端にぼろ切れや端切れを使い照る照る坊主のような物を付けている
たんぽだ
まぁ万一人に当たって怪我をされるより良いかと手伝う
試しにに数セット作ったら自分の使う分を作る
それぞれ持ち手に凧糸を巻いたり、色を塗ったり、あれ?
アンが良い色の竹を張り合わせている
べるでは滑車みたいな物を、、、
見ない事にしようと思いつつ参戦してしまった
おもちゃの魔改造って男心を擽るよね、、よね?




