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141.去る者は追わず

「皆の衆、集まって貰ろぉたのは他でもねぇ、あのエテ公共の事じゃ」


『共? 群で来てるのか?』


昼前に八尾は呼ばれて村の集会に出ていた

重苦しい雰囲気の中、村長のルイが重い口を開いた

話によると八尾の家から反対側の畑が軒並み被害に有ったとかと言う事である


「長よぉ、去年の病や猪と言い、山神様の祟りでねぇだか?」

「オラの畑さ群れば来おって芋っこさ全部引っこ抜きよっただ、親芋さ一齧りして次さいくで始末がわりいだ」

「そだそだ、アイツ等オラ達見ても逃げもしねぇし普通じゃねぇだよ、萌ばぁも棒さ持って追い回したら噛みつかれて寝込んでるんだべ」


「馬鹿こくでねぇ、こんバチあたりめぇが、婆さまは棒さ振り上げたぁところでぎっくり腰患っただけでねぇだか、めったな事ば言うでねぇ」


ルイが場を納めたが、里芋類の被害は甚大で畑半分がやられてしまった

やられた畑は皆で苗を融通するそうだが、去年の飢饉で種芋の余りも少なく、齧り方の少ない芋は灰を付けて埋めもどすと言うことだ


「駆除はせんのかのぉ?」

「そうじゃ、与作、おめさ鉄砲で撃てば良いでねぇでか」


「うんにゃ、有害駆除対象にゃへぇってねぇだで鉄砲さ撃ったらコレもんだべ」

ルイは手を前にお縄頂戴のポーズを取った


「駄目だか?ここに居る連中は口ば堅ぇでよ、こっそり撃っちまったら判らんじゃねぇかのう、なぁ与作」


与作は何と答えて良いかオロオロとするばかりである


「駄目なものは駄目じゃ、だば鉄砲貸すだでおめさ撃つだか?」


「そだた恐ろしかことさ出来っこねぇだ、おっかねぇおっかねぇ」


「おめさ手前で出来んことさ与作にやれと言うとか?」


「長よぉ、オラが悪かったで、ほれ、与作もよぉこの通りだで許してくれろ」


「判ってくれたばそれでええ、そろそろ昼時じゃで一旦しめぇじゃ」


と、皆ゾロゾロと家を出た時の事だった


シューーーっ  バーン


ロケット花火の音がした。


「すげぇ、すげぇ、アンねーちゃん、サル共一目散だぁ」


見ると畑に居たのだろうサルが数頭ほど山に向かって凄い勢いで逃げて行くのが見えた

サルが驚く様を見て村の子供達は大喜びである


「ふふふんっ、効き目バツグンねっ」


アンは得意気に胸を張って村の子の声援に応える

手にはもう一本、極太のロケット花火が見えた


「八尾どん、あの水色の髪の毛ばアンでねぇだか?、ありゃ何をつこうとるんかの?」


「ロケット花火ですね、脅かし用の」


「ろけっと?花火だか?、おぉ飛んだ?」


アンは駄目押しでお代わりに着火する

ロケット花火はひゅうと飛んで畑の中の堆肥置き場に刺さった後、爆ぜる


ドゴーン


豪快な土煙をあげて堆肥が吹き飛んだ

堆肥置き場は跡形もない

未だに残っていたボスザルも一目散に逃げて行く

畑の周りに逃げていたサルもそれを見て山に逃げて行った


『戦争でもするつもりか?火薬どれだけ入れたのっ?』

と見るとアンも引きつった笑い顔をしていた


「ひええぇ、くわばらくわばら」


男はたまらずに屈み込んでしまった


「おぉこりゃ効き目抜群じゃの」

遅れて外に出てきたルイは逃げて行くサルと男を笑いながら見て言った


「慣れるまでの一時しのぎだとは思いますがね」


「慣れるめぇに道ばなおりゃのぉ、あとはダル、おめぇさまの出番よなぁ」


ルイは脇にいたダルに声を掛けるとダルは嫌そうに応えた


「えぇえぇーっ、オラさまた街まで行くだか、勘弁してけれ」


「なぁに、おめの足っこさなら朝飯前だでよ」


・・・


夜、べるでとアンは囲炉裏の前で正座をしている


「で、何グラム(・・・)入れたの?」


「ちょーっとだけよっ、サラサラっと」


「サラサラっと、無煙火薬を?」


「そうそう、サラサラーっと」


「サラサラっと?どんだけ?」


「ほんの数グラムっ」


「計ってませんが十数グラムデス」


「あのね、爆竹の中身でコンマ05グラムなのよ?1グラムで散弾1発なのよ?」


「効き目抜群だったわねっ」


死人(しにびと)が出るわっ、馬鹿たれ

大体べるでがやってて何でこんな物騒な物をつくるかね?」


「申し訳ありませんデス、好奇心に勝てませんでシタ」


「はぁーっ?、何本?何本作ったの?」


「残りあと20本、、、デス」


「一本目が真っ直ぐ飛んでよかったよ、本当に、、、」


全部没収してストレージに格納した



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