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139.おそらく平穏な日々

ここ最近八尾は早起きをしている


空が徐々に白くなる頃に起きる

雨戸を開けると未だ外はモノクロの世界だ

支度をして外に出る

西の山の頂に日が差し始め、失っていた色彩を取り戻すように明るくなる

林の木々からはガサガサ音が出始め、キジバトどもが朝食を求め飛び立って行く

時折鶏小屋でガタゴトと音がするが若鶏はまだ起きない


かぼちゃの畝に行き、咲いている雄花をもぎ取り花弁を剥ぎ取る

そして今日咲いたばかりの雌花に花粉を塗りたくる

かぼちゃの雌花は寿命が短い、日が高く成る頃にはもうEOLである

早めに受粉させたら紙袋を被せて害虫除けを施す


時々雄花の中に青虫が居るので畦道で踏み潰す


人工受粉が終わると雑草取りだ

日が登ると暑く感じるように成ってきたので、雑草を抜くのは朝の仕事だ

畑の作物も良く茂り、剪定作業も欠かせない


メキっガサガサ パリッ パリッパリッ


突然の音に驚いて振り返ると赤い顔が目に入った

キジでは無い サルだ

距離は15mも無いのに今の今まで気が付かなかった

サルは八尾を見ても気にせずにトウモロコシをもぎり取って皮を剥ぐ、歯と手を器用に使いキレイに剥いた、トウモロコシは未だ白くて小さかった


「この野郎っ」


大声を張り上げて手に持っていたスコップをぶん投げた


サルは怯んで手に持っていたまだ小さなトウモロコシを落として数歩ほど逃げた

そして振り返りキバを剥いて八尾を威嚇した

剥き出しに成った犬歯は犬のより大きく見えた

八尾はゴクリと唾を飲み込んだ

するとサルは悠然と落としたトウモロコシを拾いに戻り、歩いて山に戻って行く、、、

と、思ったら山の際から走り出して逃げて行った


「どーしたのよっ?」


アンとポチが走ってやってくる

べるでもその後を追ってくる


「サ、サルだ、サルが出た」


「あーっキュウリが派手にやられてるわねっ」


「そこのトウモロコシもやられたよ」


「えっトウモロコシもデスか」


べるでは振り返ってトウモロコシの畝を見る

普通のトウモロコシが植わっている畝だったのでふぅと安心した。


「駆除しマスか?」


とストレージから剥き身のブローニング自動銃を取り出した。

畑の中とはいえ余り安易に取り出すのは良くない


「いや、サルは有害駆除(捕獲)の指定に入ってなかったような気がする」


「確かに他田畑を荒らす小動物類、、には該当しなさそうねっ」


べるでは銃をストレージに戻した


「当面追い払うしか無いか」


・・・


「でっ?アレは何をやってるのよっ?」


深夜遅くにアンに起こされた

べるでが何か作っているらしい

掛け布団を被ったまま寝室の破れ襖の穴から居間を覗く

アンは薄ら寒かったのか八尾の下に潜り込む


「こより?火薬入れてるから導火線か?

火薬を紙で巻いて?爆竹も?ロケット花火か?」


「ロケット花火って?」


べるでは夜なべしてロケット花火を作っていた

黒色火薬を紙で巻いて筒状にし先端に爆竹を装備した。それを竹ヒゴに付ければ完成だ

しばし第一号を眺めて次を作る

今度は先端に爆竹の代わりに燃焼速度の早い火薬を入れた


「やっぱりロケット花火だな」


「だからロケット花火ってなによっ?」


勿論真似すると火薬取締法か何かで検挙されてしまうのだ


因みに本物の鳥獣追い払い用煙火と言う物が有るのだが、資格の取得と維持が面倒くさいので八尾は持っていない

爆竹の音は意外に小さい 獣には余り効いてないような感じだ、慣れも有るのだろうか

なので追い払いには結構音量があるロケット花火が使われている事が有る

もっと音圧の有る花火を有害駆除の許可に付帯させればよいのにとか思っている


「足がしびれちゃったわっ」


「どれどれ?」


「触るんじゃないっ、こんな事ばかり反応するんじゃないわよっ」


アンは後頭部を八尾の鳩尾にドスっと当てる

グホッと声が聞こえたが、構わず襖を開けて居間に寝酒を呑みに行った


・・・


今日も朝早くから野良仕事だ


べるでは家から双眼鏡で畑の監視

アンはポチと一緒に見回りと言う名の散歩だ


八尾は受粉を済ませ雑草取りと足跡の調査をする

タヌキかなんかの足跡も有るが特に悪さはしていなかった


雑草はもの凄い

早朝に出来るだけの場所を順に根こそぎ取っているが、一順する頃にはまた生えている

今日も竹簑一杯の雑草が取れた

堆肥場に捨てて代わりに乾いた雑草を畑の畝に撒く、保湿と遮光効果を狙う


朝から晩まで野良仕事だ

大変だが目に見える仕事はやりがいを感じる

今日も飯が旨い


・・・


「今日は出ませんでシタね」


べるでは半田ゴテを囲炉裏の熾火で加熱してコンデンサーやらコイルやらをくっつけている

付け残った半田が丸く球に成って転がっている

少量とはいえコテに残った半田が炙られて体に悪そうな煙が出ている

家は茅葺きの板張りなので気密性は無いが気になった八尾は戸を開け放している


「昨日のシャベルを投げたのが利いたか」


シャベルを投げた後に威嚇されてしまってるので、どっちが驚かされたのか良く分からないが、、、


「あたしとポチのおかげよっ」


畑の周りや林を歩き回り痕跡探しや山菜採りをしていたのだ


「そう言えば狼とかトラのおしっこを鹿除けにするとか何かで読んだような気もするなぁ」


「そーよ、それそれっ、それなのよっ」


「大トラのおしっこはかなり効きそうデス」


「誰が大トラよっ、昨日はコップ一杯だけよっ、それにっ、おしっこ掛けてたのはポチだけよっ」


平穏な日々はまだ続く


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