137.真打ち昇進
カァ、カァ、カァ
上空を高くカラスが飛んで行く
日は西に傾き山に差し掛かる
家の脇の煙突から青白い煙がたなびいている
もう夕暮れ時だ、道具を仕舞い剪定した残滓を堆肥場所に運ぶ
庭ではべるでが鶏小屋の掃除を終えて餌を入れていた
「お疲れ様デス」
「そっちこそお疲れっ、でっ?どんな具合?」
「お風呂は大体元どおりデス、お湯をストレージ取り出し口で沸かせなく成ったのが残念デスが」
「材料を加工出来なく成っちゃったのが痛いわねっ、流石にボイラーまで棄てなくても良かったかしらっ、、、」
「まぁ何とか成りましたデス、元々水から沸かすには容量不足でシタので、それに手で加工するのも楽しいデスね」
べるでは空き缶で煙突を、鉄板でボイラーを作っていた
火を使うところはバッテリーに溶接棒を取り付けアーク溶接、気密が必要な水回りはロウ付けと適材適所でくっ付けた
もちろんアーク溶接でも気密をしっかり出来るのだが、ロウ付けのほうが数段早い
アーク溶接機と半自動溶接機まであったのだが、こちらは電源が無くて使えなかった
「じゃあ、ちゃちゃっとお風呂入って汚れを落としてさっぱりしましょうっ」
・・・
お風呂にはなみなみとお湯が張られている
洗い場にはポチ、アン、八尾、べるでが列を成して髪の毛を洗っている
「ああっもおっ、枯れ葉まで巻き込んで泥も取れやしないっ、幾ら石鹸付けても泡が立たないわっ」
「アン、髪の毛の色が抜けて来た?なんか根元が水色に成ってきて無い?」
「たけるサンの頭は結構砂まみれデスね、ザラザラしてマス」
「ええーいっ、いっぺん流すわよっ」
ザバーっとお湯を掛けられたポチは慌てて逃げ出そうとするが、アンに後ろ足を捕まれて何度もお湯をザブザブと掛けられた
泡が出なくなってアンが手を離すとポチは大慌てで洗い場を出て行き、庭でブルブルと水気を飛ばしていた
アンが桶を置くと八尾がアンの頭からお湯をザバザバと掛ける
次いでべるでも八尾の頭を流す、砂が良く落ちるように髪の毛を掻き分けながら掛ける
アンが体を洗い出す
後ろから八尾がボディソープでその背中を洗う
その後ろからべるでが石鹸で八尾の背中を洗う
べるでは八尾の腕が日焼けしているのを汚れと思い腕まで手を伸ばして洗い出した
背中にふよふよと何かあたる
頭の中が背中でいっぱいになるが、何とかあたらないように前傾となる
しかし密着するよりも当たるか当たらないか位が一番刺激が強いのだ
その時、前のめりに成ったべるでの足がツルリと滑って八尾を前に押し倒した
狭い洗い場で必死に両手で踏ん張るがボディソープはヌルヌルとして徐々に徐々にアンに倒れ込んでいく、上からはべるでがのしかかっている
「そこ違うっ、そこっ、あっ、アッーっ!」
狭い風呂場にアンの声が響いた
・・・
よく洗ってから風呂に浸かった
風呂桶は大きくなっており、膝を丸めて入れば横向で三人入れる
薪の消費を考えると纏めて入った方が効率が良い
茹で上がった三人は夕餉を済ませ、シヤルスクの長家で使っていた寝具に入った
ちょっと早いが明日も雑草取りが待っている
「ふぅっ全くっ、どーなるかと思ったわよっ」
布団の中でアンがボソッとつぶやいた
「事故デス、ごめんなさいデス、、で、どうでシタ?」
「ホント、不幸な事故だったなぁ、で、どんな感じだったの?」
「あんた達、もっと反省しなさいっ、馬鹿っ」
「それはそうとオネェサマ、昇進おめでとうございマス」
「何よっ?昇進って?」
「二つ目を卒業しまシタので、晴れて真打ち昇進デス」
「アハハっ、二つ目を卒業で真打ちねっ、そりゃ面白いわねっ」
アンの目は笑っていない
べるでを後ろから羽交い締めると
「助べぇなタケさんっ、懲らしめておヤリなさいっ」
八尾はアンの気迫と劣情に勝てなかった
「アッー!」
べるでも以外とすんなり真打ちに昇進した
そして夢中に成ってる八尾は後ろにオレンジ色の厚めなゴム手袋を付けたアンに気が付かない
「タケルもそんなにシリたいなら教えてあげるわよっ」
「アッー!」




