136.雑草はすぐ繁る
気持ちの良い朝だった
昨夜の報告会も鹿肉に山菜、鹿肉と山菜、鹿肉と山菜と盛り沢山であったが、酒は出ずに終わった。
八尾達は無事ライセンスが取れた事、村の方は減った村人も移住者が来て全ての家が埋まったとの話など、あれやこれやとたった数週間でも話題は多かった
今日からしばらくは農作業が続くのだ
朝飯をかき込み麦わら帽子を被る
小さなスコップと竹蓑をかかえて畑に出た
今日は雑草取りだ、畑の中に生えた雑草を根こそぎ除去するのだ
アンは鶏に餌をやって、畑に水を撒く
べるでは、、、べるでは野太い針で畳を張り替えている? やかんから水をダイレクトに口に含み、プーっとゴザに吹きかけて、太い針で縫い付けて行く
肘をテコにして畳糸を引っ張る姿は中々堂に入ったものである
だが、豆絞りの手拭いで鉢巻きをするのはやり過ぎでは無かろうか?
八尾は抜いた雑草を纏めて畑の一画に捨てる
スコップを雑草の根元に差し込み土を柔らかくして根こそぎ抜く、そして根に付いた土を払い落として竹蓑に置いて行く
大きめのザルでも直ぐに山盛りと成ってしまうようだ
アンも水やりが終わって雑草取りに参戦してきたので更にペースが速い
雑草でもハコべ等は別な駕籠に入れていく
「何を分けてるの?」
「ピヨピヨご飯よっ、後で餌に混ぜるのっ」
せっせと雑草を取って行く
手入れはされているが雑草の勢いはもの凄い
午前中で畑の四半分までたどり着かなかった
畑から戻って見ると、べるでは畳の表替えを終わらせ、今度は大工仕事に勤しんでいた
ペカペカに研がれたカンナでスルスルと一皮剥かれた杉板はスベスベに成っている
既に溝も掘られて後払い組み上げるだけになっていた
豆絞りの鉢巻きは結び目が前に来ており、ヤル気が高い事を物語っている
しかし毛糸の腹巻きは何の影響なのだろうか?
テキ屋の人じゃないし、天才のハンタイの人だろうか? 悩む八尾であった。
アンは戻るなり日に焼けるとの事で、腕カバーを縫い始めた
べるでも忙しそうなので、八尾は庭で昼飯を作り始めた
コールマンの3バーナーを台に置いて燃料タンクを取り外す
タンクを振ってガソリンが入っていることを確認するとポンピングしてタンクを加圧する
予熱が要らないタイプは割と圧力が要るので多めにポンプする
サイドの火力調節バルブが閉まって居ることを確認して、バーを点火位置にする
チャッカマンを中央のバーナーに近づけてからタンクのバルブを開いた
ゴーっと言う音と共に黄色の炎が舞い上がる
十数秒待ってレバーを点火位置から燃焼位置に変え、バルブを閉じたり開いたりすると炎は青くなり完全燃焼を始めた
大きめの鍋に水を入れてお湯を沸かす
玉ねぎ半分をみじん切りにする
予め縦横に切れ目を入れて刻んで行く
残ったお尻もちゃちゃっと刻む
横で与作から貰った鹿肉も細かく切る
多少のバラつきは愛嬌である
右手のバーナーにチャッカマンを近づけてバルブを開くと中央の火力が下がり、右手側に青い炎があがる
火力調節バルブを更に開いて調節する
フライパンに油を入れて潰して切ったニンニクを入れてコンロに置くと次第に熱くなる油にニンニクから泡が出始める 玉ねぎをざらっと入れた
鍋のお湯が沸いた
紙箱を開けてバリラの1.8mmを投入する
お湯に揉まれたスパゲティは鍋の中で幾何学模様を失って行く
フライパンに鹿肉を入れて、コンソメブイヨンと缶からトマトを投入、隠し味にウスターソースも追加だ
左手の菜箸でスパゲティをかき回し、右手でソースを捏ねる
スパゲティの芯が無くなった瞬間を見計らってザルに上げる
皿にクルクルっと捻りながら盛るとの周りにソースを掛け、とろけるチーズを上から振りかけた
「ベスパゲティニヨンソース完成!お好みで粗挽きコショウ掛けて」
「無駄にオシャレな昼ご飯ねっ、チーズをかけるときにわざわざ肘を立てる必要ってあるのっ」
「上に乗ってるシャウエッセンが美味しいデス」
「何で部屋にこんな物があったのよっ?」
「知らん、キャンプの準備かなんかじゃ無いの?」
楽しい昼飯であった
べるでは昼から赤いシャツにサスペンダーパンツに着替えていた
配管工なのだろうか?




