130.シヤルスク東射撃場で試し撃ち
「ヤホーっ、おばあちゃん元気だったっ?」
「へいっいらっしゃい、ばぁさん?あぁ奥でまだ寝てるよ」
八尾達は朝一番で罠場を見回り、早々にシヤルスク東射撃場にやってきた。
新しい鉄砲を持つとテンションが上がるのだ。
まだ残っていた割引券と一人一銀を払う
前回来たときと比べると幾分人が多い
「あんたらどっち撃つ?動的なら追加で二銀な」
「試し撃ちなんで静的でお願いします」
「動的なんて出来たのねっ」
「そうそう、鉄砲屋の社長の発案でな、やってみたら面白れぇの面白くねぇのったらありゃしねぇぜ、こりゃまたバカうけでよぉ、あんた達も試し撃ちが終わったら一度やってみんのがお勧めよぉ」
「はーっ、それは面白そうねっ」
「アイデア料のチャンスが消えてしまいまシタ」
「まぁまぁ、そんなことよりゼロインだ、ゼロイン」
・・・
静的の射台に行くと数人が待機していたが、誰も射台には入って居なかったので、早速的を張りに行くことにした。
「こんちは、的紙貼りに行きますね」
「おうょ、合点承知の助だ、おぃ野郎共、銃荷に鉄砲を置きやがれぃ、火縄もキッチリ外してんだろうな」
「おぅ、あたぼうよ、こちとらそんじょそこらのトウシロたぁ訳がちげぇんだ、それより、おーい動的のぉ、そっちはどうでぃ」
「おーぅ、聞こえてっぞ、こっちも良いぜぃ」
と赤い旗を射台前に突き刺した。
何やら丸太で仕切られた奥の動的射台には人が一杯いるようだ。
早速八尾達は的紙を貼ってきた。
戻りすがら見ると動的射撃には人が多い、何やら滑車やらロープやら工夫の跡が見られる。
「お待たせっ、もー良いわよっ」
と赤旗を取り除くと動的側も待ってましたと言わんばかりに赤旗を下ろし射台に人が入って行った。
なかなかの盛況ぶりで賑やかだ。
「さて、今朝説明した通りなんだけど、撃った感触が違ったり異常かと思ったら必ず点検な」
「了解デス」
「とりあえず、、、タケルが先ず一発撃ってみなさいよっ」
散々脅すような説明に弱気となったアンは銃のテストを兼ねて初弾を八尾に撃たせる事にした。
「じゃぁまずボルトから行こうか
50mの台に委託台を置いて落ちないようにして、抜けてるボルト側から銃身を覗いて、的の中心が銃身の真ん中に成るように微調整する
んで次にな、スコープのレティクルが的の中心に成るように、こうカチカチとダイヤルを回す
大体合ったら試射をして、3発撃ったらズレを修正、銃身を良く冷ましてから次の弾を撃つこと、薬室一発で弾倉には装填しないこと、じゃ撃つよ」
3人ともイヤウィスパーを耳にねじ込みイヤーマフを装着した。装着したのを確認すると他の人にも撃ちますと声を掛けた。
しばらくモゾモゾとしていたが、状態が安定してきたと思えた瞬間、ダンと重低音を響かせてライフルは火を噴いた
「凄い音ねっ散弾とは迫力が段違いだわっ」
「まだまだ可愛いもんだ、マグナム口径のボス次とか隣で撃ってると内臓まで響くよ、さっ一通り撃ってみよう」
周りの人達は音の大きさに驚いて声も出なかった。
・・・
「ええっと、大まかなゼロインはタケルがやったからっ、ボルトを入れ、、、る前に銃身覗いてっ、異物無し、オケねっ、ボルトを入れて弾を薬室に入れて、ボルトを送り出して閉めるっ」
「レティクルをあまり意識しないように的の中心にレティクルを合わせて、、って難しいわねっ」
ダンっ
「うーん、散弾に比べると弾が出るのも速いわねっ、引き金引いた瞬間に的に届いてるような感じねっ、思ったらよりリコイルも無い感じなのはこのバットプレートが良い仕事してんのかしらっ?」
「ええと着弾は4時方向の8点ねっスコープだと良く判るわねっ」
アンはボルトレバーを上に上げ、ゆっくり手前に引くと同時に左手の中指で薬莢を押さえ、ボルトを引ききった所で取り出す。
雷管は角が平らになり、中心がファイアリングピンで丸く凹んでいる。正常だ
「薬莢はあまり熱く成らないのねっ不思議っ」
数発撃ってレティクルを調整、銃身を冷ましてから再度数発撃って調整を繰り返す
そして狙った所に纏まりだしたので、市販装弾から手詰めの弾に変える。
銃身はまだ熱かったので、銃架に置いて冷ます間にお茶タイムを取った。
八尾の所には薬莢が散らばってたのて拾う
薬莢は仄かに温かかった。
「薬莢は再利用するんでしょっ?ちゃんと拾いなさいよっ」
「もう熱く無かった?撃ちたては熱くて拾えなくってさ、冷めるの待ってたのよ」
「えーっ、こっちのは全然熱く無かったわよっ?」
「ガス圧で排莢するのは内圧高い内に出すからガスで焼けるって説とか張りついた状態で抜くから摩擦熱でとか言われるけど詳しくは知らん。まぁ自動銃のは火傷するほど熱いから気を付けてな」
と八尾も銃架に置いて休憩をとる
「二発目撃って散らばり様を見てっ、って貧乏臭いわねっ」
「仕方無いだろ、弾頭も火薬も結構高いんだから、普通にテストすりゃまた質屋だ」
「そろそろ冷めたかしらっ、まだ温いわねっ」
「まだまだデスよ、M94はゼロイン完了デス
弾の差もあまり良く判らないデス」
「あーオープンサイトで50mだからね、黒点に入っていれば大丈夫、こっちもそんな感じだ、後は撃った時の反動が少なく感じる方が楽だからその辺りをチェックしてみて」
「タケルはスコープ付けないのっ?」
「1ー6xが有るんだけどなぁ取り回しがなぁ、うーん、手詰めの弾を確認するときだけでも取り付けるかな」
とぶつくさ言いながらもスコープを取り付け始めた
結果、『.308ウィンチェスター』のアンと八尾の弾は奇しくも同じレシピに成った。
べるでも100mの的を撃ち、具合の良い『.30ー30ウィンチェスター』のレシピを見つけたようだった。




