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第64話 不思議の国の在り処

驚くほどに短いです。す、すみません……!

 白兎が導いた、長い長い穴を抜けた先の夢の世界。

 アリスは迷い込んでしまった。――結末を、願ったが故に。



 ――《不思議の国の黙示録》



 《異端の少女アリス》を崇拝する《敬虔なる邪教徒の集団ワンダーランドのじゅうにん》。

 彼らは異端の神を愛したが故に、我が物顔で世を闊歩する、不義の人間たちが蔓延り跋扈する楽園から追放された。

 辿り着いたのは、エデンに次ぐ第二の楽園アナスタシア。けれどそこには、彼らが愛したアリスはいない。敬愛する少女は居無い。

 だから彼らは、アリスを『喚』ぶことにした。彼女がいなければ脆く崩れ去ってしまう世界ならば。

 さながら呪いのように。さながら夢を見るように。不思議の国の住人たちは、愛した少女を壊れるまで弄ぶように――。



 白兎はアリスを導いて、


 帽子屋はアリスを守って、


 女王はアリスを壊して、


 眠りネズミはアリスを癒して、


 双子はアリスを惑わせて、


 三月兎はアリスを愛して、


 トランプ兵はアリスを傷付けて、


 公爵夫人はアリスを庇って、


 グリフォンはアリスを喰らって、


 メアリ=アンはアリスを殺めて、


 チェシャ猫はアリスを導いた、




 その真意こたえに辿り着けたならば、彼女は真の《穴に堕ちた少女アリス》――

 彼女を愛するならば、呪いは全て、無へと帰そう。




 ☆★☆




「あぁ、腹が立つ」


 彼女は呟いて、しおれかけた花弁を乱暴に毟る。

 長い睫毛をそっと伏せれば、嫌になるほど立つ色香。そんな自分の美貌を理解しているのかいないのか、彼女は加えて艶めかしく嘆息した。


「腹が立つ腹が立つ腹が立つ腹が立つ腹が立つ腹が立つ腹が立つ腹が立つ腹が立つ腹が立つ腹が立つ腹が立つ腹が立つ腹が立つ――……どうしてお前は、私のものにならない?」


 散った赤い飛沫をヒールで踏みつけながら、彼女はすうっと目を細める。

 狂ったかのようだった。

 否、実際、狂ってはいるのだろう。その美しかったはずの脳髄をどこまで壊せば、ここまで狂ってしまうのだろうか。少しだけ興味はある。勿論彼女に対し、そんなことをできるはずもないが。


「――白兎」

「何でしょうか、我が女王陛下」


 僕は役名で呼ばれ、いつも通りに無機質な声音で返事をする。今までのひずんだ思考は一片たりとも外には出さない。そして彼女も、そんなことには触れなかった。


「アリスは今、一体どうなっている? つい先日接触してきたばかりのお前なら分かるはずだろう」


 相変わらず僕とは目を合わせないまま、薔薇の花弁を散らしつつ【女王】は言った。

 尋ねるというより、それは命令のような。横暴な彼女の癖だった。

 けれど僕は抗うこともせず、ただ敬うように傅いてみせる。


「……アリスは既に、味方を全て見つけ終えました。後は彼女が僕を捕まえるだけで」

「違う、そうじゃない。私はそんなことを聞いているのではない、アリスは答えを見つけたのかと聞いているのだ」

「――……いいえ。先日メアリ=アンと接触したところです、ひどく混乱していたようですので眠らせてきました。そろそろ目覚めたところかと」


 こうべを垂れ、彼女の聞きたいこととやらを淡々と報告する。

 僕の言葉に彼女は、ふうん、と心底興味なさそうに呟いた。自分で聞いた癖にはあんまりな態度だ。


「そうか。メアリ=アンか……」


 けれどもその中で、その名前には何か引っかかりを覚えたらしく彼女は何度も反芻する。

 メアリ=アン。

 それは本来ならば無いはずの、もう一人の【アリス】の名前。彼女もそれは理解しているはずだ。

 彼女は逡巡したようにぐるりと眸を回した後、僕の方を見据えた。


「そこまで辿り着いたか。奴が出てきたということは、アリスは何かをつかみ始めたのか?」

「さあ……そこまでは何とも。彼女自身の感情のことならば理解しつつあるかもしれません」

「この国で何かを見つけたということか。――それでいい、この国に依存すればするほどアリスは帰れなくなる」


 真っ赤なルージュを引いた唇を弧の形に吊り上げて、彼女は不気味に笑む。

 先刻までの苛立った態度はいずこへか。

 麗しい薔薇の棘が食い込んで紅に染められた細い腕に、痛みを感じることもないらしく。


「一年だ。365日、季節が巡るのをあともう少し待てば、やはり全ては女王わたしの思い通り」


 美しすぎるほどに美しく、それは狂ってしまっている。

 アリスに狂ってしまったのか。――それともそれは、自身に狂ってしまったのか。


「あははははっ! 共に永遠の悪夢を愉しもうではないか、――なあ、アリス?」


 いずれかは解らない彼女の狂った言葉に、僕はただ、辟易するかのようにこうべを垂れた。

 止められない。止まらない。きっと、この人は。


 ――それなら貴女はどうします、ありす?


 大きな黒い瞳が笑うところを想像して、僕は、高らかに狂笑わらう女王を前に頭を上げた。




というわけで修学旅行行ってきました(←どういうわけ)

テスト前で7月まで来れないかも~なんてことを示唆していたのに普通に復活。い、いいんだもん! 勉強は明日から始めるから!

というか今回もほのぼのしなかったですね。すみません´`次回こそは……頑張れない。←

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