第32話 命を運ぶ儚い羽で
更新が遅れました…すみませんorz
頼りない羽取り? で飛んでいくグリフォンと、それに連れられ共飛び中の私。
視界はぐらぐらと揺れる。今にも落ちそうで、息もつけない。
怖い。怖すぎる。
でも、グリフォンはふらふら〜とそこらへんを行ったり来たりするばかり。
「あっれ〜、おかしいなぁぁ〜」
「ど、どうしたの」
「俺の頭の中ってどうやって行くの」
「行けねえっつってんだろこの野郎!」
真顔でおかしなことを言い出すグリフォンに私は全力で突っ込む。
どうしてか、こいつといると口が悪くなってしまう。
何でこんなに突っ込まなきゃならんのだ。
ていうか、本気で行けると思ってるのか? 頭が痛い。
「もう〜乱暴なんだから〜♪」
「何で嬉しそうなの!?」
「えへへ〜」
「気持ち悪い!」
ぎゃーぎゃーとやり合う私たち。
かなりの近所迷惑っていうか、うるさい。
「あ〜あ〜、そんな大声で叫ばないでよ〜。見つかっちゃうかもよぉ〜」
「え、ちょ、ちょ!? 嘘!」
「嘘じゃないもん〜」
へらへらと笑いながらとんでもないことを言い出すグリフォン。
私、どうなるんだろう……。
窓から飛び降りるときの数倍不安なんですけど。
「まあ、きっと大丈夫だと思うよ〜? 捕まったら何してくれるのかなぁ女王様。女王様って素敵な響きだよね」
「ちょっと待てお前落ち着け本気で落ち着いて。まだ私死にたくないよ?」
その響きが素敵に聞こえるのは多分こいつだけだろうなと思いつつ、頬を染めて何かほざいているグリフォンを見る。
喋らなきゃ格好良いのに、なんて勿体ない奴だこいつは。
「やだなあ、死ぬことにはならないって。アリスは女王様にも愛されるから」
「屈服も嫌よ絶対嫌だからね」
「ええ〜、俺すんごい羨ましいんだけど」
そんなのを羨ましがるのもお前だけだよ。
会話するのも一苦労だと私はため息をつく。
一生通じ合えないんだろうな、こいつとは。
『アリスがいないぞっ!』
『探せ! 探すんだ!』
大きく響いてきたその声に、私は固まる。
聞こえたのは、城の方から。
も、もう、気付かれたの……!?
そう思うと、血が逆流するような感覚に襲われる。
「ぐ、グリフォン……っ」
「あっはっは、もうかぁ〜早いね〜。仕方ない、逃げますかっと」
グリフォンはけらけらと笑うと、突然さっきとは比べ物にならない速度で飛び始める。
私は慌てながらも感心する。
グリフォン、ちゃんと飛べば速いんじゃん。
もしかしたらあいつらから逃げきれる……かも?
『あ、あそこにいるのは何だ!?』
『何か飛んでいるぞ! 追いかけろ!』
ぎゃ、逆に見つかったっ!?
ど、どうすればいいの……!?
怖くて、恐ろしくて、ばくばくと心臓が鳴っているのが分かる。
追いかけてきている人たちに聞こえるんじゃないかと思うほど、大きな音で。
「ああ〜どうしようねぇ〜」
「わ、笑ってないで頑張ろうよっ!?」
「そんなこと言ったってぇ〜……って、あ」
え? とグリフォンを見上げると、私は突然空に置き去りにされたような感覚に陥る。
今にも落ちそうな、そう……落ちそうな?
「ごめん、手滑ったぁ〜」
グリフォンがそう言って笑った瞬間、私はまっさかさまに落ち始めた。
「滑らすなぁぁぁぁ!?」
こんな時まで突っ込みをしながら、私は落ちていく。
下は緑。森だろうか?
今度こそ、きっと私の人生がジ・エンド……そんなの。
そんなの―――絶対嫌なのにっ!
「いやぁぁぁ―――っ!!」
「―――ふう」
グリフォンは、満足そうに羽ばたいていく。
「俺が兵を引き付けてる間に、ちゃんと逃げてよぉ〜? アリス」
そう、行き先は、城の兵たちのど真ん中――。
それは、アリスのため?
自分のため?
城の兵に突っ込んでいく儚い命の真実も知らず、アリスは堕ちていく。