第25話 絶望ばかりの壊れたセカイ
沈黙の中、私たちはそっと顔を見合わせる。
静かすぎて怖い。
何も聞こえない屋敷の部屋の一角で、私たちは身を寄せ合って固まっていた。
銃声も何もない。
本当に静かで、音のない世界かと疑ってしまうほど。
でも、それも怖くて。
どうしたんだろう。
事態が終わったわけではないとは分かる。だって、誰も安堵の表情で飛び込んでこない。それの終わりを、誰も告げてはくれない。
不安は溢れ出ていくばかり。
「ねえアリス……」
「どうなったんだろ……」
不安なのはこの子たちも同じ。
それもそうだ。私より小さい子たちだもの。
護るとは言ってくれたけど、こんなに幼いのだから。
「……どう、しようか」
迷っていた。
出ていけばどうにかなるものでもない。逆に、最悪の事態も考えられる。
でも、ここでじっとしているのも嫌だ。
こうしているうちに、みんなが殺されていく気がして怖い。
「アリス……アリス、駄目だよ」
「自分から捕まるようなことだけは絶対に駄目」
暖かい手が、私の手を強く握る。
有無を言わせない強い視線が私を射抜いた。
「……じゃあ、みんなはどうなるの?」
「どうなっても、みんなは後悔しないから」
「アリスのためなら、命すら捨てられる」
そんな。
そんなの、間違ってる。
私はそう叫びたかった。
そう考える私が間違いでも、そんなの嫌。
この静寂が何を物語る? 静寂=死という簡単な方程式ではないはず。
「私は……そんな、護られるほどの存在じゃ」
「それだけの存在だよ」
「君はアリスだから」
アリスなんて、ただの肩書きに過ぎないのに。
どうしてそこまで囚われる必要があるの?
アリスというたった3字の言葉に、どうしてみんな意味を見い出そうとするの。
「どうして……」
疑問の言葉は虚空に消えた。
その答えなど誰も教えてはくれない。
呪いって何なの?
アリスって何?
500年前から、この国で何が起きているの?
ああ、何もかも壊れそうになる。
アリスという言葉で、世界の全てが狂い始めた。
「アリス! 出て来いっ!!」
聞き覚えのない声が、部屋の外から響いてきた。
刹那、戦慄が走る。
―――誰。みんなはどうしたの。
恐怖に、頭がカッと熱くなる。
「アリス! どこだ!」
低いその声は、私じゃない何かを呼ぶよう。
そうよ、私はアリスじゃない。でもアリスなの。
彼が探しているアリスではないけれど、みんなが探しているアリスではある。
分からない。考えれば考えるほど分からなくなって、私は蹲った。
「……アリス……?」
「しっかり、して」
ディーとダムが小声で私を励ます。
でも恐怖はとどまることを知らず私を塗り潰していくから。
闇はもうそこまで迫っているんだ。
唯一それを浄化する光は、ここでは見えない。
「助けて……」
誰に向かって言ったのか、自分でも分からない。
でも、確かなことは一つ。
―――助けは来ない。
光なんて見えないよ。
そう、もう、足音は部屋の中まで迫っていたのだから……
「アリス!」
ああ、それは絶望に満ちた律動で、私を壊していく。
アリス「ちょっ……。こ、この展開ってどうよ?」
はい。反省しております。
ってか作者的にはコメディが書きたいのですが。
アリス「私もそうしてほしいわよ!!」
あとハク君が書きたい。
アリス「個人的な意見すぎるし!」
……まあ、この先もマイペースにグタグタ頑張っていきますのでよろしくお願いします。