第18話 絶対零度の兎
今回短いです><
ごめんなさい;;
「……ハク君……」
「アリス」
振り向いた先の、冷めた笑みが呼ぶ。
降り注ぐ光に輝く金髪に、ルビーのような宝玉の瞳。その頭の上からは、長くて白い耳がアンテナのように伸びている。
小柄で華奢な身体と対照的に、顔に浮かぶのはひどく大人びた表情。そのアンバランスさがまた似合う少年。それが私の目の前に立っていた。
――彼は、間違いなく、ハク君だ。
「ハク君……あ、あの」
私はこんがらがった頭のままで、とにかく何かを言おうと口を開く。
……けれど。
「初日で、そこまで集めるなんて……すごい、ですね」
私の言葉を遮って、すっと目を細める少年。
言い返す気もなくなるほど、彼には大人びた仕草が似合っている。それは、似合いすぎているほどに。
私が、すごい? 何故かどきりとさせられる言葉だった。――出会った当初もそうだったのだけれど。
けれど、何だろう。何だか私は、その雰囲気に曖昧な違和感を覚えた。何となく……前会ったハク君とは、どこか、違う気がして。
私は気のせいかと思ったけれど、やっぱり思い違いなどではなく。
ハク君はちょっとだけ面白そうに、唇の端をくっと吊り上げる。
「今回のアリスは――出来損ないで、どうなることやらと心配しましたが」
「は、ハク、君……?」
私は心底冷えたその声に震えた。外見は、何も変わらないのに。
その声はひどく冷たくて、出会ったときの冷たさと同等の――ううん、それ以上に冷たいかもしれない。
言葉すらもが、刺々しかった。『出来損ない』なんて……あんまりだ。
どうしてだろう。前には少しだけでも近付いて、仲良くなったと思ったのに。そんなことはなかったんだろうか?
私の思い過ごし? 勘違いだった?
「ねえ、でも、アリス。これからが本番なんですよ」
それでもハク君は淡々と続ける。道化の笑みを浮かべたまま、シニカルな表情はひどくすれていた。
「は……、ハク君? ね、ねえ……どういうことなの!?」
綺麗に微笑むも、その微笑みは人形のようだ。
私のまわりは、驚くほど静かで。私の叫びすら、無に吸収されているみたい。
他にいる3人の存在を感じさせない。まるで、二人っきりの空間になっている。
……こんな、だっけ。
私は思う。
ハク君は、こんな子だった?
もっと、優しくなかった?
あれを気のせいというには、少し、深すぎるほどに。
打ち解けて、もっと、もっと――……
手をつないだときに感じた優しさは、全部嘘だったの?
――全部、疑いたくなるほどの冷たさで、私を射抜く。
「……ハク、君……!」
私には彼の名を呼ぶことしかできなかった。
でも、その声も届かず、虚空に消えていく。
「――アリス。僕はここにいますよ、名前を呼ばなくたって」
そしてハク君は――ひらりと身をかわすように、私の思いを避けて微笑む。
「何故そんな顔をするんですか? 貴女が捕まえるべきものはほら、ここにいるでしょう?」
微笑は綺麗。だけど、壊れそうなくらい脆い。
だってね、ハク君。
こんな顔をするしかないでしょう?
遠すぎるよ。捕まえられるわけ、ないよ。
――追い掛けて、捕まえるべきなのだとしても。
「……ハク、君……っ」
「アリス。まあ、せいぜい頑張って下さいね」
彼は、静かに、冷たくそう言って、私の前から消えた。
伸ばした手は、僅かに、届かなかった。
――どうして? 私は、彼を追いかけられなかった。
私は、彼に何も言えなかった……
どう、して?
――私は彼を捕まえなきゃいけないの。
それは私がアリスだから?
それは彼が白兎だから?
でもね、見てよ。二人の距離は、こんなにも遠いのに――
チェシャ猫「ちょっとー、俺が空気になってるんだけど」
シリアスな雰囲気ブチ壊しになるからね、お前が出たら。
チェシャ猫「そんなことないよ、ほら、ほかのアリスパロ見てみなよ。チェシャ猫すごいじゃん?」
そこは作者の文章力不足というか何というか……
チェシャ猫「素直に自分のせいだって認めなよ」
……すみません。
チェシャ猫「しかもさ、次回も出ないらしいね、俺」
いいんだよ、次回主人公も出ないから。
チェシャ猫「あ、じゃあ、画面外で色々やーっちゃお♪」
いや、そういうことはやめようね!?
……はい、それでは、次回も宜しければお付き合い下さいー。