第14話 アリスのピンチ!?
にっこり笑った目の前の美男。
ここには美形ばっかりなんで、最早驚きませんが。
……とてつもなく、悪魔っぽく見える……。
グリフォンに噂なんかを聞いたのが悪かったんだ。
いつも鞭やら手錠やら何やら……あああ!!
「アリス?」
「ごごごめんなさいっ! 許して下さい! 私はただの女子中学生ですぅぅぅ!」
何も聞かれてやしないのに、びくりと反応する私。
情けないことは分かっています。でも怖いです。本気で。
「ん、何を怯えてるの」
くい、と顎を持ち上げられる。
見つめた瞳は、燃えるようなオレンジ。
「……や、やめて、下さい」
何とか絞り出せた言葉は、それだけ。
でも、目の前の人は笑って。
「そう言うわりには、随分虐めてほしそうだね」
「!?」
バッと目の前の悪魔を払い除ける。
な……何つー。噂通りの。
「ご主人ー、ご褒美はぁー?」
「もうちょっと待って。アリスをモノにしたらね」
……モ、ノ?
恐怖。
恐怖。
恐怖。
その感情だけが、私の頭と心を支配する。
身体は動かない。
悪魔は、私の方へと歩いてくる。
優しそうなのは見かけだけ。
中身は、悪魔だケダモノだ。
その薄ら笑いは、今は……冷たく、怖い……。
「本当は家まで持って帰って、じっくり調理してあげようと思ったんだけど……」
だんだん近くなる声。
優しい声とは裏腹に、恐ろしい言葉が私をさらに深い恐怖へと突き落とす。
「前回のように逃げられちゃたまらないからね、アリス。今回はもう…逃がさない」
恐怖が、私の心を、壊した。
「い……やぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
その悲鳴は、ずっと遠くまで響き渡っていく……
☆★☆
「……あれ?」
ありすの声がした、気がする。
どこからだろう。嫌な予感がする。
グリフォンか何かに捕まったかなぁ〜……んー。
「んなら、早く助けに行ってあげないとねっ」
走り出す。住み慣れた、森を抜けて。
青い空の下。久しぶりに、全力で。
何のために?
愛する彼女のために。
あんな奴には渡すもんか。
彼女は、元の世界に帰らなきゃいけない。
こんなクダラナイ呪いの犠牲になる人は、もう要らないんだよ。
それが、もしルール違反だったとしても。
それは、俺の使命として。
ねえ、ありす。
君が愛する人は、ここにはいないでしょ?
だから、帰んなきゃ駄目だよ―――
まだ留まるというのなら、呪いは深く君の身体を蝕むだろう。
誰かと一緒にと望むなら、呪いは強く君の身体をしめつけるだろう。
所詮この国は君の幻想。
いつかは終わる儚い物語。
深く入り込んじゃいけない世界―――
だから。
皆はアリスを愛した。
でも俺は、アリスじゃなくて、ありすを愛そう。
アリスなんて空っぽの人形じゃなくて、ありすを、彼女という一人の女の子を―――……
仮初めじゃない、ホンモノの愛をあげるから、目を覚まして愛しいありす。
―――真実を知る猫は、彼女を愛する為に―――
はいこんにちは、展開間違ったかなー……と少し後悔してます白邪アリスでございます。
アリス「ちょ……っ、えええええ!? 何てことになってるの私!?」
大丈夫、そんなに危ないことにはならない……はず。
アリス「はず!? 何その微妙な保証!」
だって私だってそんな展開になると思ってなかったもーん。
アリス「無責任&行き当たりばったりな作者だなおい!」
すみません。
そんなわけで……まあ、きっと噂の彼が助けに来てくれるでしょう! とか開き直って書きますんで(駄目だろ)、応援どうぞよろしくお願いします。
あー……そろそろハク君やら双子やら出さねば。