少女の幻想文学∋番外編
ハルは、短時間で、崩れた茹で卵と葉物野菜が挟まれたサンドイッチをまおりに用意し、部屋から出ていこうとした。
「わぁ、ありがとうございますっ」
「ゆっくりで大丈夫だから」
「はい」
お母さんが作ってくれるものでない、はじめての食事で、少し心配だった。
そんなこと考えるのは、失礼かなと、緊張しつつ食べたサンドイッチは、甘いパンがしっとりしていて食べやすでていったく、卵と野菜にかかっている乳化ドレッシングがまったりしていて、良いものだった。
小さいようだが、少食のまおりにとって、丁度いい量だった。
「ごちそうさまでした」
合わせた手を離したとき、なんとなく、今初めて一人きりになったことを、意識した。
射し込む陽が明るくて、暖かくて、気持ちのいい家の中は、一人で住んでいるようには思えないくらい、広くてゆったりしている。
この家に着くまであった、孤独感や悲壮感は、今はほとんど無かった。
外の世界を、よく見てみたい気持ちがあった。
お父さんの頼みに応えて、一旦現実を受け入れて、生きていこうと思う。
魔法を使うことはどういう感じなのか興味がある。
ただ、これからどうなるのか、家族はどうなったのか、元いた世界はどうなったのか、それだけ、不安だ。
「お父さん、ハルさん、何を考えてるのかな」
解らないことが沢山ある、今は、二人のことを信じたい。
そういえば、ハルさんは、お父さんのことをよく知っているようだったが、いったい、どういう人なのだろうか。
歯がゆい気持ちを抱きながらも、まおりは、渡された大きな麻袋を抱えて、指定された部屋の扉を開いた。
読んでくださってありがとうございますね。
番外編というか、続きの挿入です。