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藍童話  作者: 十浦 圭
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白鴉

Twitter上の創作企画「空想の街」(http://www4.atwiki.jp/fancytwon)に参加した作品(を加筆修正して纏めたものです。

作中に企画の設定に準拠した表現がありますが、これ単体でも読めます。


 昔々あるところに、大層綺麗なことで有名な一人の娘がおりました。母を病気で亡くした娘は木こりの父と二人で、貧しいながらも楽しく暮らしていました。そしてその娘は、美貌以外にも一つ不思議な特技を持っていました。彼女が流す涙はみな、美しい宝石に変わるのです。

 そんな訳で、年頃になったその少女は木こりの娘でありながら様々な人から求婚を受けるようになりました。宝石の力を差し引いても、娘の銀色の髪と白銀の瞳はとても美しく、やがてその噂は町に溢れとうとう王様の耳に届くまでになりました。


 興味を持った王様はある日町人に変装して娘を見に行きました。ちょうどその時、娘は森で薪を拾っていました。木の影から見た娘はやはり大層美しく王様はため息を吐きました。と、てきぱき動いていた娘の手がふいに止まりました。娘が抱き上げたのは傷ついた小鳥でした。

「なんて可哀そうに!」

 娘は叫ぶとはらはらと涙をこぼしました。その涙はきらきら光りながら娘の膝に落ち銀に輝きました。王様は思わず息を飲みました。その瞬間、娘は誰も見たことがないほど、美しく見えたのです。

「助けてさしあげましょう」

 そう言うと王様は木陰から出て小鳥の手当を手伝ってやりました。そして手当が終わると娘の手を取り跪いてこう言いました。

「私はこの国の王なのです。貴女のように美しく優しい方は会ったことがない。私と結婚してくださいませんか」

 娘の方も王様の優しさを好ましく思っておりましたので、喜んで頷きました。大喜びした王様に、城や町の人々もとても喜んで、1か月後にはもう結婚式があげられたのでした!


 ところで町中の人々が大喜びしたこの婚姻を、一人だけ面白く思わない人間がいました。王様のお母様、娘にとってのお義母さまでした。

 優しい王様に優遇してもらい、その美しさでも名高かった皇太后は、娘の王様の結婚によってその全てを失ってしまったのです。皇太后は嫉妬に怒り狂いました。そして、腹心の部下をこっそり呼びつけて言いました。

「あの娘をどうにかする方法を考えなくっちゃあ」


 そんなことも知らずに、王様と娘はとても楽しく毎日過ごしておりました。やがて、年に一度の王様の狩りの日がやってきました。毎年この日には、王様は町よりももっともっと遠いところまで狩りに出かけるのです。

「大人しく待っておいで」

 王様は娘の額にキスしました。


 王様が狩りに行くのを見て、皇太后はよろこびました。そして早速部下に命じて娘を捕えてしまいました。蹴破られた扉を見て娘は悲鳴をあげました。

「一体なんの理由があってこんなことをなさるのです!」

 部下はこう答えました。

「魔女め!王様を誑かしおって!」


 捕まった娘は一晩もしないうちに、死刑が決まってしまいました。皇太后は言いました。

「この者は魔女である!その魔法で王を誑かそうとしているのをこの部下が見つけたのだ!」

 張りつけにされたまま娘はぽろぽろと涙をこぼし、こぼれた涙は宝石となって輝いていました。

 町の人々はうろたえました。あれは魔法だったのだろうか、しかしあんなに美しい人が、ざわめく人々を見下ろして皇太后はこう言いました。

「王はこの魔女の術のとりこじゃ。王が帰るまでに魔女を退治しなければならない」.

 広場の十字架に張りつけにされた娘の足元に高く薪が積まれました。


「ああ、神様」

 と娘が悲しそうに呟いたとたん、空にばたばたという音が響きました。町人から戸惑いの声が上がりました。見たこともない美しい白鴉が上空にたくさん飛んできたのです。白鴉はばさばさと翼を動かし、娘の上空をぐるぐると彷徨いました。

 張りつけにされ鴉を従える娘は神々しく、慄く町人を見下ろして皇太后は歯噛みしました。

「ええい妙な術を使いおって!」

 娘が魔女などとは思っていなかった皇太后も少し気味が悪くなったのです。震える指で彼女は部下を指さしました。

「薪に火を点けよ!」

 薪に火がつけられました。

「ああ!」

 娘は悲鳴をあげました。十字架に止まっていた鴉が飛び立ちました。娘はすっかり火に包まれてしまいました。

 十字架が燃えて薪に崩れ落ちました。皇太后は笑い声をあげました。町人から嘆きの声があがりました。


「なんてことだ!」

 人々が振り返ると、広場の隅に王様が立ち尽くしていました。その足元には泣き崩れた王の部下がおりました。王様はあと一歩で間に合わなかったのでした。

 膝をついて泣きだした王様が、はっと顔を上げました。火の消えたぐずぐずの黒い燃えかすの中から、何か大きなものが飛び出しました。

 それは、大きな大きな美しい、白い鴉でした。

 広場を囲むようにして止まっていた白鴉が一斉に飛び立ちました。ぽかん、と人々は空を見上げました。涙に濡れた顔の王様も、笑っていたはずの皇太后も空を飛ぶ白鴉を見つめました。

 空からきらきら光る大きな氷が振ってきて、皇太后とその部下の胸を貫きました。驚愕の顔のまま、二人はよろよろと倒れました。

 白鴉は町を去っていこうとしていました。くあ、と鴉の声が響きました。


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