一章 始まりの日
Ⅰ
「僕は、物語の主人公になりたかったんだ。」
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毎日毎日、日は昇り、人々は騒ぎ、日が暮れると街は静かになる。
それの繰り返しだ。全く馬鹿らしいよ。
毎日、そんな意味もなく笑って悲しくならないの?
僕はこの世界が憎い。
人一人がいなくなっても何食わぬ顔で、変わってはくれないこの世界が憎い。
僕の大切な一生が、こいつなんかにくれてやるのが悔しくてしょうがないよ。
僕は物語の主人公になりたい。誰からも必要とされる主人公が。
主人公がいなくなれば世界が終ってしまうほどの主人公の存在が。
全てが羨ましい。妬ましい。どうして僕は主人公になれなかったんだ。
たとえ、その物語がデッドエンドだとしても、
どんな残酷な終わりにしても、
主人公に、僕はなりたかった。――――――――― >
クレインは筆を置いた。
大きく背伸びをして、全身の固まった筋肉をほぐす。
窓の外を見れば、人々が大きな声で笑い合っていた。
「全く馬鹿らしいよ。」
そう呟きながら、自分が書いた物語を閉じる。
物語の主人公はクレインそのものだった。
「 僕は物語の主人公になりたい。だからなってみせるさ。
僕が、“僕”を主人公とした物語を書くよ。
そうすれば、僕は主人公!」
満悦した表情で両腕を広げて、感情を露わにすると、
筆記の疲れで眠気が襲いかかって来た。
クレインは、すぐそばにあったソファーへ転がり、深い眠りについた。
≪ ようこそ、君を歓迎しよう。 ≫
クレインの声よりも低く、突き刺すような声。
「(これは……誰だ?)」
寝起きのおぼろげな目をこすって、目を開けた。
読んで頂いてありがとうございました!
ここから物語が始まっていきます。
夢とは一体何なのでしょうか。
これからも読んで頂ければ嬉しいです。