何か言った? 後半
スタートした時に足かけよう。途中で押してこかしたらいい。
柚葉がいないところで、同じグループになった女子たちがコソコソしていた。
その話は凌には聞こえていた。何故なら地獄耳だからだ。丸聞こえなのだ。
凌「馬鹿な奴らだな」
ゴール地点にいる先生が旗を振る。その合図でスタート地点にいる体育委員が
「いちについて…」
と、声をあげる。
柚葉たちのグループが並ぶ。
「負けたら…分かってるよね?」
隣の女子が耳うちする。
「よーい…どん‼」
スタートの合図。隣の女子が柚葉の足を蹴ろうとする。
柚「何か言った?」
ザワッ
隣の女子たちは何が起こったか分からなかった。見物していた生徒たちは分かった。
凌「見せものじゃねぇんだぞ」
あ「相変わらずだな」
拓「だな」
柚葉は、男子並みの、いや、それ以上の速さでゴールしたのだ。同じグループの女子は唖然として立ち尽くしていた。さすがの体育の先生もタイマーを押し忘れそうになっていた。危ない危ない。
「ろ、6秒9‼」
先生の発表で皆が騒ぎ出した。
柚「ふぅ…」
凌「あの女子たち、お前に何か言ったのか?」
柚「別に、何も言ってないよ」
恥をかかすつもりが逆に恥をかかされた女子は悔しそうに柚葉を睨んでいた。
それから数日間、柚葉の電光石火の走りは学校で有名になり、柚葉本人へ先輩直々にあらゆる部活の勧誘が絶えなかった。