春は新たなスタート
桜咲く春
天候に恵まれた今日
八坂高校の入学式が行われた
◆◆◆
朝は決まって送って貰う。自転車の荷台に乗せて貰う。だから安心して…
凌「柚葉、2ケツで寝るな。」
柚「zzz」
柚葉こと凪勢 柚葉は、成績トップクラス、運動神経抜群でマイペースな女子だ。身長が低いことを気にしている。
凌こと日向 凌は、見た目性悪男子。職員室の常連。面倒事が嫌いだが、やる時はやる。
柚葉と凌は赤ん坊の時からの幼馴染み。家が隣同士なのと、親同士が高校時代の知り合いということから幼馴染みになった。
朝が苦手な柚葉は、寝惚けているから登校は事故を起こしそうで怖い。電信柱にぶつかったり、どぶ板の隙間に落ちたりということがあってから凌は柚葉と登校するようになった。幼馴染みだから別に構わない。けど、マジで寝るのは止めて欲しい。
凌「ったく…」
落ちないように俺の制服を掴んでいる。それにしても器用だな。まぁ、長年同じこと繰り返してたら慣れるものか。よだれ垂らすんじゃねぇぞー。
家から約15分にある八坂高校は文武両道を目標とした県立高校。県内では有名。レベルは中の上。制服のデザインが良い。ということが志願理由。
柚「着いた?」
凌「まだ。」
柚「おやすみ。」
入学早々怒られるのは勘弁なんだぞ。
柚「服装ちゃんとしないと怒られちゃうよー。」
凌「規律とか苦しいんだよ。着いたぞ。降りろ。」
柚「ありがと。」
凌「どうも。」
自転車を駐輪場に置いて柚葉とクラス発表表が貼り出されている廊下へ向かう。人が多くて混んでいる。
柚「琴音、あき、一樹、拓也、おはよぉ。」
琴音こと朝倉 琴音は、しっかり者で純粋な女子。
あきこと芹沢 あき(せりざわ あき)は、男勝りなスポーツ女子。
一樹こと神田 一樹は、しっかり者な男子。
拓也こと柴崎 拓也は、楽しいことが好きな男子。
4人は凌と柚葉の仲間。同じ実我中学校に通い、同じバスケ部に入っていた。
琴音、あき、一樹、拓也と校舎の入り口で待ち合わせていた。高校からも同じ学校に通うことになったのだ。
琴「クラス表見た?」
柚「まだ。見た?」
あ「まだ見てないよ。行こっ。」
手を引かれ、人混みの中へ入る。
一「俺たちも行こうぜ。」
拓「凌、早く来いよ。」
凌「分かってる。」
廊下の壁に貼られた紙の前に立つ。琴音の“せーのっ”という声で顔を上げた。
柚「2組?」
凌「また同じクラスかよ。」
琴「素直に喜びなさいよっ。」
凌「うるせぇな。」
あきと拓也は1組、柚葉と凌は2組、琴音と一樹は3組。クラスは1学年6クラス。
一年生は3、4階らしい。階段だるい。
階段がエスカレーターになればいいのになぁ。エレベーターでもいいなぁ。
1ー2に着いた。教室のドアを開けると、わいわいとうるさい。早速携帯でメアド交換している奴、落ち着いて自席に座っている奴など様々いる。担任の先生はまだ来ていないようだ。
凌「柚葉、こっち。」
凌に手招きしてくれて自分の席が分かった。一番後ろの席。凌の隣。
柚「ふわぁ…眠ぃ…」
凌「まだ寝るか?」
柚「入学式は寝るものさぁ。」
「座れー。」
スーツ姿の女の人が入ってきた。黒板に書いてある名前“東 杏子”先生みたいだ。大人の女性って感じがする。
東t「私は東杏子。あんたたちの担任だ。よろしく。」
男勝りな女だなぁ。ちょっと楽しみになってきたかも。
東t「もうすぐ入学式が始まるから移動するよ。廊下出て。」
言われるがまま、廊下に並ぶ。
わぁー凌早速女子に絡まれてるー。モテる男は辛いねー(笑)幼馴染みとして遠くから温かく見守ってあげよう。さっさと彼女の一人や二人つくれっつーの。(笑)
入学式の会場となった体育館に吹奏楽部の演奏と共に入る。春になってポカポカしてきたけど、まだちょっと肌寒い。
校長は男。教頭は女。歳は50前後っぽいね。後ろの方って人間観察しやすい。寝てる奴、手鏡を覗きこんでる奴、隣と話している奴。うわ…携帯いじってる奴いるよ。見つかったら怒られるって。
校長の話長いよー。眠くなってきた…。
―――
――
―
「凪勢!!起きろ!!」
柚「ん…」
目はいつの間にか閉じていた。開けると東先生がいた。
東t「お前ら…よく寝てたな。」
周りには誰もいない。
あれ?“お前ら”?
東t「服部!!服部 翼!!起きな!!」
服部?
柚葉の右肩は重みを感じていた。隣の男子がもたれてきているのに気づく。
黒髪で猫っ毛な髪。少し首辺りに当たってくすぐったい。
「…おはようございまーす」
東t「はいはい。皆先に戻ったぞ。私は先に行くから早く来なよー。」
ヒラヒラと手を振り、私達を置いて行った。
柚「えっと…服部くん?」
「翼」
柚「え?」
「翼って呼んでよ。柚葉ちゃん。」
何で知ってるの?初対面だよね?
翼「柚葉って珍しい名前だよね。」
柚「そうかな?」
翼「そうそう。もたれててごめんね。」
立ち上がって手を引かれる。手を引かれるのは今日で二回目。翼は背が高い。凌と同じくらい高い。
柚「服部くん。」
翼「翼。」
柚「翼…、速い…」
翼「あぁ…ごめん。」
歩幅が大きいから速い。凌と同じだ。手を引かれているから自分にとって早歩き。
柚「謝らなくていいよ。いつものことだから。」
翼「日向と?」
急に凌の名字が出てきた。頭の上は?(クエスチョンマーク)でいっぱい。
翼は凌と知り合い?
気づけば教室の前。翼から教室に入る。怒られはしなかったけど、注意だけされた。
担任と副担任の自己紹介と明日の時間割を聞く。この後からは校舎内見学や部活見学をして良いらしい。
小・中とバスケをしていたけど、高校ではどうしよう。身長が低いからそれだけで負けのような気がする。とりあえず見学だけでも行こうか。
柚「りょ…」
声をかけようとしたけど止めた。なぜなら、凌は女子に囲まれていたから。メアドを教えて欲しいと迫られている。
入学早々モテやがって…見せつけんなよ。まぁいっか。
「ゆーずーはーちゃーん。」
翼が後ろから抱きついてきた。
柚「えっと…翼、何?」
翼「今から部活見学?」
柚「うん。」
翼「1人なら俺と行かない?俺も1人なんだ。」
1人より多い方が楽しいでしょ?と言われ、また手を引かれる。これで三回目。
凌はもう子供じゃないから大丈夫だよね。よし、置いて帰ろう。
拓「…柚葉?」
◆◆◆
その頃、凌は…
凌「教える気ないんだ。」
女子の陣から抜け出そうとしていた。
断るのに必死になっていたら、柚葉がいなくなっていた。まぁ、あいつはガキじゃないからと思うな俺っ!!あいつ方向音痴なんだぞ!!
「メアド教えてよぉ。」
凌「悪い。連れが待ってるから。」
そう言って抜け出し、柚葉を探す。この広い校内のどこを探せばいい?携帯の電源をONにして電話する。何度コールしてもでない。
「凌ー。」
違うクラスになった一樹たちに呼び止められた。
一「これから部活見学行かないか?」
凌「柚葉知らねぇか?」
拓「あっちで見たぞ。男といたな。」
男?
拓「手ぇ繋いでた。」
凌「探してくる。見つけたら連絡するから。」
拓也が指差した方向に歩く。
琴「心配性なのね~。」
あ「それにしても…柚葉といた男ってどこかで見たことない?」
黒髪、高い身長。そして、派手なガラTシャツが見えるくらい制服を崩している奴。
気になる。もう彼氏ができたのか。クラスに見たことある奴がいた。もし、そいつだったら納得できない。
走って探していると中庭に出た。八坂高校の憩いの場だとパンフレットに書いてあった。木や花が植えられている。中庭のあちこちに木製のベンチがある。
三人の男子が一人の女子を囲んでいるのが視界に入った。見たところ、ナンパの最中のようだ。
柚葉…あんなのに絡まれてなかったらいいんだが…。
「今から部活見学?それより俺らと遊ばない?」
イライライラ
「え…でも…」
イライライラ
「いいから遊ぼうぜ」
イライラ…ぶちっ
何かが切れた。
「てめぇ!!何すんだ!!」
蹴飛ばした男は、どうやら年上のようだ。凌はナンパの最中を割り切った。
凌「こっちは苛立ってんだよ。サンドバッグになりてぇか…?」
ギロリと睨むと逃げ腰になるナンパ野郎共。
それでも偉そうに言うから…
―――
――
―
「あ、ありがとう。助かりました。」
ナンパ野郎共が逃げた後、ナンパされていた女がお礼を言ってきた。
凌「別に。急いでるから。」
「待って!!名前教えて…?」
これって漫画みたいな展開だな。名前教えてどうしろっていうんだ。ごちゃごちゃ考えてたら日が暮れるぞ。とにかく柚葉を探さないと。
凌「日向凌。」
そう言って走った。
「かっこいい…。」
初めまして。
鷹羅と申します。
distanceを読んでくださり、ありがとうございます。
初心者で駄文ばかりだと思いますが、よろしくお願いします。m(_ _)m
distanceは主人公が二人います。日向凌、凪勢柚葉です。主にこの二人目線ですが、他のキャラ目線も書く予定です。
最近本当に寒くなりました。こたつが恋しいです。
皆さんもお体に気をつけてください。