暖かな季節(幼い記憶)
沙織は、いつしか記憶の中を旅していた。
沙織の目の前の風景が、木洩れ日の差し込むちょっと古びた木の床に変わっていった。
不思議なことに、沙織の尿意が少しずつ引いていった。
「だいじょうぶ? がまんできないの?」
先生の声にサオリは、はっとした。先生の視線の先を追うように振り向くと、茶色のズボンを穿いた細い両脚を内股にくねらせて、おしっこを我慢しているリョウがいた。
彼は、振り向いたサオリのほうを切なそうな目で見ていた。だが、サオリの視線は思わず、リョウの股間から内股に集中した。
クラスのみんなは帰りの歌を歌っていた。
”むかし、むかし、そのむかし・・・♪”
この歌が終われば教室を出て、おのおの決められた時間のバスで帰るまで自由に遊べるはずだった。
その若い女の先生は、リョウのもとに駆け寄り、彼の前にしゃがんで何か話しかけている。
”おひさま、にこにこ、声かけた・・・♪”
歌がちょうど終わりかけた頃、再び先生の声がした。
「だめ? もれちゃう? ごめんね、先生さっき、気づいてあげればよかったのにね・・・、ごめんね」
サオリの胸が高鳴った。そしてその直後・・・
「リョウくん、おしっこしちゃってる!」
まわりの友達の騒ぐ声にサオリが再び振り向くと、くねらせたリョウの両脚のズボンの裾から、まるで水道の蛇口をひねったように、透明な「水」が勢いよく流れ出ていた。
クラスは騒然となったが、先生はすぐにみんなを静かにさせたあと、
「リョウくんは、おしっこが我慢できなかったんです。でも誰にでもあることですから、けっしてからかったりしちゃいけません」
「先生は、これからリョウくんの着替えをしますから、みんなはすぐに教室から出て遊んでいらっしゃい」
と言った。
サオリは、クラスのみんなが教室の外に出ようとしても、リョウのことが気になっていた。
そのとき先生がサオリに声をかけた。
「サオリちゃん、リョウくんとお友達だったよね。悪いけど、保健の先生のところに行って、着替えをもらってきてくれる?」
サオリはうなずいて、教室をあとにした。本当はその場から目が離せない気持ちだった。
”このあとどうなっちゃうんだろう・・・”
サオリはできるだけ早く教室へ戻れるよう、急いで保健室へ向かった。
保健の先生が渡してくれたのは、床を拭くためのぞうきんと、リョウの濡れた身体を拭くためのタオル、そして濡らしてしまったズボンの代わりにリョウが今日穿いて帰るための、毛糸でできた水色のブルマーのようなパンツだった。
サオリは急いで教室へ戻った。教室のドアは開けっ放しになっていて、サオリが近づいたとき、教室の奥の隅に先生とリョウの姿が見えた。
先生はリョウの前にしゃがんでいて、リョウは立ったままこちらに背を向けていた。
サオリが近づいてくるのもお構いなしに、先生の手がリョウのズボンを下げはじめていた。サオリの目に突然、彼の真白いパンツが映った。
そして近づくにつれ、彼のパンツはおしりの半分あたりから下が、透明なおしっこでぐっしょり濡れているのが分かった。
「サオリちゃん、ありがとう。リョウくんはいつものバスじゃ帰れないから、今日サオリちゃんは先に帰ってね」
リョウの濡れたズボンを、慣れた手つきでひざから下まで一気に下ろし、それを片方ずつリョウの足首から外しながら、先生はサオリに言った。
リョウは泣きも笑いもせず、ただ立ったまま先生のなすがままにされていた。頭の回転がよく、サオリと楽しくしゃべりあっている、いつものリョウの姿とは全く違っていた。
サオリは教室から出るため、ドアのほうへ数歩歩いたあと、
”見ちゃいけない・・・”
そう思いつつも、思いきってリョウのほうを振り向いた。
そこには、丸くて切れ上がった、リョウの可愛らしいおしりが露わになっていた。サオリの想像通り、すでにリョウはパンツを下げられていた。
「リョウくん、もうすぐ一年生になるのに、どうするの?」
下半身裸のまま、タオルで前のほうを丁寧に拭かれながら、リョウは先生にやさしい口調でしかられていた。
一連の光景は、サオリの心に衝撃的であった。
窓からは、春先の優しい陽射しが差し込んでいて、教室の中は暖かだった。
みんなの前でおしっこを漏らして、教室にひとり残されて、先生や私の目の前で下半身を裸にされて、お世話をされているリョウ・・・
サオリはそんなリョウのことを気の毒に思うのと裏腹に、なぜだかとても羨ましく思った。
それから教室を出たサオリは、隣にリョウがいないまま、いつものバスで家路に着いた。
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あのあと、リョウくんはどうしただろう?
脚とかおしりとか、先生にあちこち拭かれたのかな?
どんな風にしかられたのかな?
それとも優しいことを言われたのかな?
水色の毛糸のパンツは自分で穿いたのかな?
それとも先生に穿かせてもらったのかな?
あのパンツじゃ、誰が見てもおもらししたって分かるはず?
あのパンツのままバスに乗ると、みんな何て言うのかな?
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サオリはしばらく気がかりだった。
”あのとき自分もその場に残り、先生と一緒にリョウのお世話をしてあげたかった”
”そして、リョウくんと一緒に、バスに乗って帰ってあげればよかった”
と思いはじめていた。
でもそれは、リョウのためだけでなく、自分のためでもあった。
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もし自分がおもらししたとしたら、どんなふうにされるのかな?
先生やリョウくんの前で、パンツを脱がされるって、どんな気持ちなのかな?
それは、どのくらい恥ずかしいのかな?
しかられるのはいやだけど、優しくされるのなら・・・?
先生に、あのパンツを穿かせてもらえるのなら・・・?
そして、あのパンツのままバスに乗ったら、どんな気持ちがするのかな?
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そのことを知りたかった。
でも、それからすぐ、ふたりは卒園して離れ離れに・・・
そして十数年が経った。
”時が経ち、いつしかそんな思いも消えてしまったんだ・・・”
と、沙織は思い出していた。




