白い洗面器(もう一度だけ・・・)
そういう弱い自分を、彼が好きになってくれるだろうか・・・麻衣には不安もあった。でも、今は自分の思いに正直でいたい、そう思った。
「外に干してたら、もうすっかり乾いたよ。ほら」
翔人の言葉に、麻衣はまどろみから覚めた。
麻衣が翔人から受け取ったサブリナパンツは、ほのかに石鹸の香りがした。それはしなやかに、丸くて可愛らしい麻衣のおしりを包んだ。
「翔人、ほんとにありがと。もう大丈夫だから、いまコーヒーを入れるね」
キッチンに立った麻衣は、カップにドリップコーヒーをセットし、ポットのお湯を注いだ。透明なお湯が注がれ、湯気が立ち上り、コーヒーを包む不織布の袋が濡れて、そこから幾筋もの水滴が滴り落ちてきた。その様子に、麻衣は自分がおしっこを漏らしてショーツを濡らしてしまう情景を重ね合わせずにはいられなかった。
麻衣は、思い出を懐かしむまどろみの中にいる間から、あの頃の幼い自分と、さっきのか弱い自分を重ね合わせ、無意識におしっこを我慢し続けていた。そして、ポットの透明なお湯が注がれるのを見て、麻衣は自分の思いが止められなくなっているのを感じた。さっきの翔人のやさしさを、もう一度受けてみたいと思った。
いま穿いたばかりの乾いたサブリナパンツが、歩くたびにしなやかに衣擦れして、不思議に麻衣の下腹部をくすぐった。2つのカップを両手に持ちながら、麻衣はぎこちない足取りでゆっくりと歩くと、内股にそっと腰をかがめるようにしてそれらを彼のいる窓辺のテーブルに置いた。
翔人はその様子を見て麻衣に問いかけた。
「麻衣、ほんとにもう大丈夫なの? まだ気持ちわるそうだよ・・・」
麻衣の身体をやさしく気遣ってくれる翔人の言葉に、麻衣は思わず、身体ごと甘えずにはいられなかった。そこには、幼い頃かくれんぼで見つけてくれた男の子に甘えようとする自分がいた。
このまま、翔人の前で恥ずかしい姿を見せて、翔人に嫌われるかもしれない・・・でも、それでも構わない、もう麻衣は自分に嘘をつけなかった。
「・・・きもち、わるい」
麻衣はコーヒーを置いた手でそのまま口元をふさぎ、急に吐きそうなそぶりをしながらつぶやいた。
翔人はおもむろにその場から立ち上がると、近くに置いてあった白いバスタオルを取り、彼女の口元にそっと差し出した。そして、ふたたび彼女の背中をさすりはじめた。
そのままトイレに連れて行こうとすればできるのに、あえてそうせず、翔人がその場で背中をさすってくれたことが、麻衣はうれしかった。バスタオルを出してくれたのも、麻衣の本当の気持ちを分かってくれたのかもしれない・・・。
《すごく気持ちいい・・・。いつもこうして翔人に甘えていい?》
翔人の手が速く、そして力強く、麻衣の背中をさすった。そして、
「げっ・・・、えぇ・・・」
麻衣はあごをタオルに沈めながら口を開け、おなかに力を入れ、吐こうとした。
「麻衣、げぇ、出そう?」
「うん・・・、うっ・・・げっ・・・ぇぇぇ・・・」
おなかの力を振り絞り、何度えずいても、麻衣の胃の中のものが出ることはなかった。
「麻衣・・・げぇ、したいんだね・・・?」
背中をさすっていた翔人の手が少しずつ下がってきて、麻衣のおしりをやさしくさすりはじめた。
恥ずかしい気持ちも、彼に甘えたい気持ちには勝てなかった。
やがて、ためらいなく下腹部にあふれた水は熱かった。それは翔人がやさしく愛撫してくれているおしりの内側に渦巻きながら、太腿のうしろを温かく濡らしていくのを麻衣は感じていた。
「げぇ、しちゃったね、麻衣。いいんだよ、いま着替えさせてあげるね」
翔人は、麻衣の口もとのバスタオルをゆっくりと離すと、彼女の足もとにそっと広げた。
(「白い洗面器」終わり)