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卒業旅行(高鳴りゆく胸)

「ごめんね・・・海斗くんのこと、ちゃんと気づいてあげられなくて・・・」



まさか海斗が、おもらししてしまうほど我慢できない状態だったとは紗季は思わなかった。しかし、それを察することができず、その結果彼がこんなに恥ずかしい思いをしてしまったことを、紗季は後ろめたく思った。



急いで玄関にバスタオルを敷き、海斗のスニーカーと靴下を脱がせて立たせると、紗季はしゃがんで、彼のジーンズのホックを外しながら、考えはじめた。


《海斗くん、いったいどうして漏らしちゃったんだろう?》



紗季がファスナーを下ろすと、ジーンズに入れていた彼のコットンのシャツが見えてきた。それはショーツに重なっていたため巻き添えになる形で、ひどく濡れてしわになっていた。


「海斗くん、車の中でおしっこしたいって、言ってたのにね」


そう言いながら、紗季は海斗のジーンズを下げはじめた。濡れた細身のジーンズは脚に張り付いて脱がせにくく、紗季はデニムを引っ張ってずらすように少しずつ下ろしていった。




海斗は、恥ずかしい失敗をしたにもかかわらず、妙にすっきりした気持ちに包まれていた。おもらしして、これから紗季に服を脱がされて、裸を徐々に見られることを、不思議に素直に受け入れていた。着替えを持って自分だけでバスルームで着替えることもできたのに、あえてそうせず彼女のなすがままに身を委ねた。



「でも、そんなにしたかったのなら、漏らしちゃう前にどうしてそう言わなかったの?」


海斗は返事に困り、あたりは沈黙した。




やがて、シャツのむこうに隠れた薄いグレーのショーツと、女性のように綺麗な太腿が紗季の目に映った。紗季はどきどきしそうになる気持ちを振り払うように、着替えの手を休めずに続けざまに彼に声をかけた。


「海斗くん、車を降りたとき、安心しちゃったのかな?」




海斗も、自分の肌が露わになるにつれ、次第にこみ上げてくる恥ずかしさから逃れるように、自分を客観的に思い返すように話し出した。


「途中のコンビニで買ったお茶、あれ・・・車の中で飲み過ぎちゃったのが、いけなかった・・・のかな? 我慢してたつもりだったんだけど・・・」


海斗のジーンズはくるぶしまで下げられ、紗季の手によって彼の脚から片方ずつ順番に外されていた。




紗季も客観的に自分の経験を思い返すふりをして言った。


「我慢してたつもりなのに、急に我慢できなくなって・・・しちゃう、そういうこと、あったかも・・・」


紗季にとっても彼のおもらしは衝撃的な出来事だった。にもかかわらず、てきぱきと彼の服をどんどん脱がせている自分に、紗季自身が驚いていた。おもらししてしまった彼のことを可哀想に思い、そうさせた自分が悪いと思いながらも、何か初めて見る、あるいは初めて体験することに否応なく気持ちが高揚していく自分がいた。



「海斗くん、このシャツも着替えないとダメね」


高揚する自分の気持ちに紗季が罪悪感を覚えたのも確かだった。それゆえ、とにかく彼の着替えという仕事に没頭することで、その気持ちを誤魔化そうとしていた。


しかし、海斗が、裾の濡れたシャツを脱ぎはじめると、彼の下腹部をぴったり包んでいる薄いグレーのショーツが、前の上の方からおしりの下までぐっしょり濡れている様子が、紗季の目に飛び込んできた。




「紗季にもあったの? そういうことって」


海斗が泣きそうな声で、紗季に訊いた。




恥ずかしそうに片ひざをちょっと曲げた綺麗な太腿が、女性のように魅力的で深いVのラインをつくっている姿に、紗季は胸が高鳴った。その思いを見透かされないように、紗季は海斗の承諾を待たずに、彼が痛がらないようショーツのゴムをまず前に引いて、続いてうしろに手を掛けて素早く下げた。


紗季は、表面上は至って冷静に、海斗の裸を気にも留めないふりをして、両手でタオルの両端を持ち、一方を下腹部にあて、押しつけるようにして水分を取りながら、もう一方の端をおしりや太腿など、ほかの濡れているほうに回し、丁寧に拭いた。




「恥ずかしい・・・」


海斗は声を震わせてそう言うと、顔を両手で覆って、泣きべそをかいた。




紗季がこんなふうに彼の裸を見るのも初めてだった。いまふたりの身に実際に起きていることが、紗季はまだ信じられずにいた。


紗季は精一杯の平静を装って、海斗に接した。


「うぅん、おしっこを我慢できないことって誰にでもあることだから、恥ずかしくないから気にしないで・・・。すぐにパンツ穿かせてあげるから待ってね」



紗季は、新しいショーツを用意すると、海斗が穿きやすいようにくるくると器用に丸めて片方ずつ裾を広げて海斗の足もとに差し出した。彼がそれに足を入れると、紗季はするするとショーツを上げ、海斗の下腹部とおしりをやさしく、すっぽりと覆った。



「よかった、これでだいじょうぶ」


きっと恥ずかしい思いをして傷ついている彼の心を癒そうと、紗季は彼のすっかり冷たくなったおしりに両手を当てて、しばらくの間暖めた。しかし、それで誰よりもほっとしたのは、紗季自身だった。

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