心の束縛(まえがき:思い出の優しさ)
長時間車に乗ったり、トイレのないバスやベルトサインの出る飛行機などが苦手です。心因性と思われる軽度の頻尿が時々出てしまうからで、心や身体の調子によっては続けて20分と我慢できないこともあります。友人などには絶対に言えませんが、過去におもらししたこともあります。
一方で、おもらししたときの温もりや、やさしく世話してもらったこと、周囲の反応などから、自分が守られている感じや、注目されている感じなど、よく分からないけれど不思議な感じがしたことをずっと覚えていました。そのうち、空想の場面ではおもらしするのも悪くないと思うこともありました。実生活では漏らしたらどうしようと臆病になる反面、夢の世界では漏らすという物語も素敵かも、という二面性を持っていました。
最近になって、心因性の頻尿や尿失禁を抱えて困っている、私と同じような人がたくさんいることをネットで知りました。みなさん、漏らすのが怖くて、その不安や恐怖がさらに尿意を高めて悪循環に陥る、そのことに悩んでいます。私もそうです。
仕事や公式行事など、実生活ではそういう悩みを抱えている反面、プライベートでは、過去自分がおもらししたことが、恥ずかしさで真っ白だったはずなのに、思い出される感触は、なぜか優しくて、心地良くて、そこに下腹部の苦しさを重ね合わせた自分のことを「かわいい」と感じることがあります。それを思い出して、わざとおもらしすることもありました。
でも不謹慎かもしれませんが、漏らしてはいけないときに「漏らしたっていい」って思うことで気が楽になることもあります。私は実生活でときどき不安になると、「スプラッシュ」のような素敵なストーリーを頭の中で考えて、それで気を落ち着かせることもあります。そうすると不思議に我慢できるときもあります。
この症状を抱えている人は、やはりトイレのことを考えてしまい、デートなどにも及び腰になってしまいます。でも、彼氏、彼女との間なら
「病気なんだから、漏らしたっていいじゃない」
と思います。彼(彼女)がきちんと理解してくれるのはもちろんですが、それ以上に、そういうあなたを放っておけない、かわいらしい、魅力を感じてくれる彼(彼女)もきっといるはずです。その人の前なら、もしおもらししてしまっても、その衝撃をきっかけにドラマが生まれるかもしれません。そうしたら、自分の弱点だと思っていたものが、強みになることになります。
この症状が心因性のものであれば、原因は自分の心のなかにあり、すべては自分の気持ち次第なのだと思います。私も、そういう割り切りのもと小説「スプラッシュ」を書いています。登場してくるのはそういう症状を抱えた人ばかりではありませんが、おしっこなどの悩みを抱える人が気持ちの持ち方を変えることで、幸せになれるストーリーを浮かべては書いています。
おしっこの悩みに対してここまで割り切れるのか、ということにはもちろん異論もあるかと思います。私の小説が助けになれば、とは思っていませんが、私と同じ症状を抱えている人のうち、何人かの方でもいいので、少しでも心が前向きになるためのきっかけとなれば、と思っています。




