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時間旅行(エピローグ~恋のプロローグ)

5月になったある週末、彩夏が1ヶ月の社員研修を終えて、翔のもとに戻ってきた。



「彩夏、ここに干しておくね」



翔は、洗濯の終わった彩夏のデニムとショーツ、靴下やタオルなどを手かごに入れて窓際に持って行きながら、上半身は着飾ったまま下半身だけショーツの姿で立っている彩夏に言った。



「でも、ほんとびっくりした・・・。彩夏、いきなり漏らしちゃうから・・・」



入り口近くのフローリングには、彩夏の水たまりを隠すように白い大きなバスタオルが敷かれていた。




「だって、ずっと翔くんに会えない間、我慢してたんだもん・・・」



翔は彩夏の洗濯物を丁寧に一つひとつハンガーに掛けては、窓際の高いところにあるカーテンレールに吊るすようにして干していた。細くて小柄な翔の身体が、そのたびに上半身を反らしておしりをちょっとつき出しながら背伸びする様子が、彩夏には可愛らしかった。



ひと月ぶりに会うときは、一刻も早く翔を安心させたい・・・彩夏はそう思っていた。社会人としての厳しい訓練を経ても、あのときの翔との「時間旅行」の記憶が、彩夏の気持ちを変えさせることはなかった。いつでもあの頃に戻れる・・・そう思うことが心のバランスとなり、厳しい研修期間も乗り切ることができた。


そのことを伝えたかった。でも、あらかじめ考えてきたとしても言葉ではうまく伝える自信がなかった。どうしたら翔にきちんと伝えられるか・・・彩夏は考えた末、今日、翔に会う前からたくさん水分を摂った。あのときのように我慢しているうち、きっとそれが背中を押して、伝えるべきタイミングを教えてくれるだろうと思った。



「でも、ベッドに行くまで我慢できなくて、ごめんなさい。それに・・・普通におもらししちゃうのって、こんなに恥ずかしいんだね・・・」




翔の手かごには、洗ったばかりの彩夏の純白のショーツがあった。



《どうしたの、彩夏?》

《翔くん、ごめんなさい・・・あっ・・・》


さっき、部屋に入った途端、立ったまま失禁してしまった彩夏。その両脚に張りついたデニムを少しずつ少しずつ脱がせたときのショーツには、まだおしりから太腿へ滴ろうとするほどの水をたっぷりと含んでいた。翔はそこから彩夏の心に募っていた気持ちを垣間見た。


会えない時間の思いは、翔も同じだった。そして、あの日の出来事から今までの間、社会人になった彩夏の気持ちが自分から離れていくことを恐れていた。


そして、ひと月ぶりに彼女に会ったとき、自分の変わらぬ気持ちを、自然にどう表現したらいいか、翔は考えあぐねていた。



でも、そんな翔の気持ちを思い、そんな心配しないで、と彩夏は伝えるように、翔の前でおもらしした。こんな恥ずかしい失敗をしてまで、身をもって気持ちを示してくれた彼女のやさしさが、翔はとてもうれしかった。




「これで最後・・・だね」



翔は、残り一枚になった彩夏の洗濯物をじっと見つめた。そして、そのショーツを干すために、おしりをつき出して思いっきり背伸びした翔は、ひときわ打ち寄せた尿意の高まりに、ためらわず身を任せた。



《彩夏、ありがと・・・。これが、僕の気持ち・・・》



彩夏に伝えたい、そう思いながら、自分の下腹部に温かい水があふれていくのを、翔は感じていた。あのときと同じように、解放感とともに翔の不安が消えていった。



(「時間旅行」終わり)

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