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時間旅行(おもらし、してもいい・・・)

彩夏は、自分の胸に顔をうずめながら、翔が激しい尿意のため時おり小刻みに震えているのが分かった。自分もトイレに行きたかったが、翔の気持ちを思うと、いま彼にトイレに行くように促すことはできなかった。



「翔くん・・・」



彩夏はどうすることもできず、ただ翔の名前をつぶやいた。



すると彩夏の胸に顔をうずめながら、翔が言った。



「彩夏・・・社会に出て、ほんとに大丈夫?」



彩夏がそっと答えた。


「大丈夫。ちゃんとやっていくから」


翔は、ついに自分の心細さを打ち明けた。


「あんなに吐いちゃったのに・・・? 僕、すごく心配なんだ」


「うん、今日はちょっとね・・・でも翔くんに背中さすってもらって、気持ちよかった」


「ごめんね、僕、それくらいしか、してあげられなくて・・・」


「翔くん・・・」


「彩夏の気持ち、変わっていくんじゃないかって・・・」


「そんなことない。大丈夫」


「ほんと?」


「私、ずっと翔のこと守る。離さないから」


横向きに寝ていた翔の両手が、彼女のわき腹の辺りにしがみついた。彩夏はさっき自分がしてもらったように、やさしく翔の背中をさすった。



翔は彩夏の気持ちを聞いて、心の安らぎを得ることができた。それと同時に、



≪彩夏が自分のことを守ってくれる≫


≪自分は彩夏に甘えることができる≫



そういう気持ちが心をよぎったことで、今まで波のように打ち寄せながらも我慢してきた尿意に、急に自分の身体が我慢できなくなっていくのを感じた。


自分の意思に関係なく、下腹部が自然に押し広げられていくのを感じた翔は、急に動揺した。


≪え、ちょっと待って・・・≫


≪僕、漏らしちゃうかも・・・≫


・・・大人になって初めて覚える感覚に、翔は動揺した。まさか自分が本当におもらしすることになるなんて、思うはずもなかった。



「翔・・・どうしたの?」


翔のただならぬ様子に、彩夏が問いかけた。翔は上ずった声で答えた。


「ぇ・・・ぁ・・・僕・・・」



彩夏は、翔がこのままおもらししてしまうことを直感した。


そして、


《おもらししても、いい》


と思った。



「ごめん、翔くん、私がもっと早く言ってあげればよかったのにね。ごめんなさい、翔くん・・・でも、だいじょうぶ・・・だから」



彩夏は謝りながら、翔の背中をさすり続けた。まるでこれから吐いてしまう子を見守るように、胸が少し高鳴っている自分に気づいた。



≪おもらしする直前って、こんな感じだった≫


勝手に下腹部が緩んでいく翔には、ほんのわずかな時間だった。しようと思えば彩夏の手を払いのけるようにして、本気でベッドを飛び出しトイレに駆け込むことも・・・でも、翔はその力を振り絞るよりも、たとえおもらししても、このまま彼女の胸に抱かれ、甘えてみることを選んだ。


「あぁ・・・彩夏・・・」

「翔くん・・・」


翔のしがみつく手がいっそう強くなった。彩夏は翔の身体を抱き寄せ、翔の背中をさすった。



そして、ついにその時がきた。


自然に押し広げられていく下腹部の感覚が激しい寒気に変わり翔の身体を襲った。絶対に後戻りできないその感覚に、翔は自分がいよいよ失禁することを悟った。


≪彩夏・・・しちゃう・・・しちゃった・・・≫


衣服に包まれた下腹部から噴き出すようにあふれた温かい水は、翔のブリーフの中を渦巻くように満たしながら、ベッドに接する腰から脇腹にかけて熱く火照らせていった。それまで切迫していた身体がどんどん楽になっていった。それは言いようのない解放感とともに、不安で冷え切っていた翔の心を温かく灯した。


それは遠い昔に感じたことのある、懐かしい感覚だった。年上の女性の胸に甘え、不安を吐露し、慰められ、失禁する・・・そうした陽だまりのような解放感で、どんな不安も消え去った頃のこと。実際にそういう体験をした記憶はないが、なんとなく身体が覚えている感じがした。



まどろんでいく翔の中で、時があの頃に戻ろうとしていた。

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