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ユキコとシンスケ2

「えっと何が食べたい?」

松山さんは車の助手席に私を乗せた後、そう聞いた。

冷房が効いてない中、車の中はすこし息苦しかった。

「あ、ごめん。まだエアコン入れたばかりだから、すこし窓開けるね」

松山さんがそう言うと窓が開き新鮮な空気が入ってきた。窓の外から見える空は、夕暮れが終わりをつげ、薄暗くなっていた。

「さあ、どこ行こうか。俺より東京に住んでる宮園さんの方が詳しいよね。カーナビがあるからどこでも行けるよ。どこの店がいい?」

松山さんはそう言いながら、ギアを操作した。エンジンをかけると自動的に動くようになっていたのか、後ろのスピーカーから少し懐かしい曲が聞こえ始める。

「あ、スピッ○だ。松山さんも好きなの?」

私は自分の好きな曲が聞こえて嬉しくなってそう聞いた。松山さんは少し困った顔をした後、口を開いた。

「カナエが好きだった曲だ‥」

カナエ‥上杉さんか‥

松山さんはそれっきり黙ってしまい、車を動かした。そして窓を閉め冷房が効いてくるのがわかった。

優しい音楽が車内に流れていた。

でも私達は黙っていた。

薄暗い車の中、外のネオンの光が入ってくる。

一度しか会ったことがない男の人と二人っきり。

でも少しも恐怖心を抱かなかった。

それは多分、お互いに同じ傷をもっているからだ、

私はそう思った。


しばらく走って松山さんは車を止めた。そして私を見た。

辛そうな顔だった。

「ごめん。やっぱりご飯はやめよう。家まで送るよ」

「うん。私こそ思い出させてごめん」

多分彼は私に会うまでは思い出さないようにしていたんだろう。

でも私と会って上杉さんへ気持ちを思い出した。

彼もまだ引きずってる。

私と同じ‥。


「ここでいい。ありがとう」

私は家の近くの駅で車を止めてもらった。

家の近くまで送ってもらって親に妙な詮索をされるのが嫌だった。


「じゃ。ありがとう。元気で」

私がそう言うと松山さんは少し笑った。

「宮園さんも元気で」

私は松山さんの車が視界から消えるまで見ていた。


私と同じ心に傷を持った人。

私達が癒されることはあるのだろうか?


電話番号でも聞いておけばよかったかな。


私はなぜかそう思った。



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