ユキコとシンスケ13
その公園ではすでにクリスマスイルミネーションがされていた。
「もうそういう時期なのかあ」
光り輝く木々を見て松山さんはそう言った。
「11月から始まるみたいです。きれいですよね」
私は松山さんの隣に立った。
夕食を済ませた後、少し歩こうと近くの公園に来た。カップルが多いかと思えばそうでもないことにほっとした。
言わないと、気持ちが焦るけどなかなか言えなかった。
「こういうところって来たことがなかったんだよな。カナエが好きじゃなかったし。」
松山さんはぽつりとそう言った。そしてはっと気付いたように私を見た。
「ごめん。会うたびになんだか‥」
「ううん、大丈夫。わかってるから」
私は首を横に振った。
彼の気持ちはわかってる。
忘れられない人。
わかってる。
心臓がきゅっと掴まれる気がしたけど、私は深呼吸をした。
言わないと‥
「松山さん!」
そう呼んだ自分の声が大きくて自分で驚いた。
松山さんは苦笑して私を見た。
黒い瞳の中に自分の姿が見えた。
「あの‥私。松山さんが好きです」
私の言葉に彼が驚くのがわかった。そして彼の眉が辛そうに寄せられるのを見た。
わかっていた。
私の告白が彼に辛い思いをさせるのも。
でも言わずにはいられなかった。
「ごめん。俺‥」
「わかっています。知っています。あなたがまだ上杉さんのことを忘れられないのを。でもごめんなさい。」
彼が私を見るのがわかった。でも私は視線を上げられなかった。
結果はわかっていたけど、つらかった。
泣いてしまいそうだった。
でも泣くと松山さんに迷惑をかける。
それだけは嫌だった。
これ以上の痛みを彼に与えたくなかった。
「大丈夫です。私は伝えられただけで十分です。」
私は必死に顔を上げると笑顔を作った。涙をこらえた。お腹がきゅっと痛くなった。
「松山さん。今日は私タクシーで帰ります。ありがとうございました」
私は松山さんに頭を下げると逃げるように背を向けた。
早くこの場を立ち去りたかった。
じゃないと泣いてしまいそうだった。
タクシーを路上で拾うと私は携帯電話をとりだした。
そして松山さんの電話番号を消した。