先輩、悩み中
そもそも申請がないと受理もできないし、何か被害があってから申し込みをするのが殺人課だ。
分かっているつもりだが、管轄外でも殺意を堪えることをできないのが最近の悩みである。
仕事上、顔には出さないで先輩面しているが、もしかしたら俺が一番仕事を理解していないのかもしれない。
例えば、所謂、毒親の子を救う手立てがなかった。
子ども支援課で、けんもほろろに相手された子へ、どうやって対応すればよかったのか。
電話では足らずに、自らの足で児童相談所を訪ねた覚悟をどうしてやればよかったのか。
未成年からの申請は受け付けていない。
どうしても想像してしまうのだ。その子が殺人業務委託を初めて知った時の期待と羨望を。
この家から出たい、この家族から逃げたいという気持ちが殺意に代わってしまうのが現代だ。
市町村の子ども支援課や児童相談所は圧倒的に職員数が少なく見える、少なくとも俺にはそう見える。
一時保護所の施設職員がしつけと称して虐待をしていたニュースを見たときは、心が重くなってしょうがなかった。
人手不足で現場崩壊を起こすなんて、もっと予算を割けばいいじゃないか。
殺人課は十分な人手と予算がある。毎年、殺す人数を予想して、ぴったりな予算計上をする課長の手腕は素晴らしい。
今年も子ども支援課の予算は増えていない。変わらないということは、足りているという判断なのだろう。
しかしながら、俺の業務は申込を受け付けることであり、児童相談を考える仕事ではない。
管轄が違うと言えばそれまでだが、できれば申請を受理して殺したかった。
そう、俺自身も解決方法が殺しに偏ってしまっている。
いや、そもそも人の生死について完全な回答などないのでは?
たまたま、現代は社会生活上、不要とした人を切り捨てる時代なだけであって……。
いかんいかん、悩み過ぎるのが自分の悪い癖だ。
俺は悩むけど、切り替えられる男。
最近、入ってきた後輩のように、もっと仕事をドライに考えられればいいんだが。




