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パン職人の弟子の弟子。スローライフの旅へ出発  作者: 櫛田こころ


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第6話 関所に到着

「うぇ!? 五歳から?!」

「そうだよ~? 師匠にスキルを見破られちゃって~」

「へぇ~……」



 腹ごしらえもし、国境を目指してルチャルは同行者となったザイルに今までの経緯を簡単に説明していた。歳の差は大きいが気にしなくてもいいとの彼の言葉もあり、ルチャルは九つも年上のお兄さんへの敬語を外した。


 兄弟弟子でも一世代目にさえ外したことはないのだが、ザイルは『調子が狂う』と言うので仕方なしに外したわけである。慣れればいつもののんびり口調に戻れたし、それはそれでいいのだなと思えた。養育機関で育ったので世間知らずではないのだが、故郷を旅立つのはこれが初めてだったため。


 道中、魔物には出会わず、飲み食いもあれだけカレーを食べたお陰で腹が膨れていたから互いに問題はなかった。シュスイは契約精霊ということもあり、基本は主人の影に潜っているので今は会話に参加していない。



「失敗も多かったけど。師匠にたくさんパンとかの技術を教わったの。それで、今回の旅の一員にも選ばれたんだ~」

「けどよ? 腕っぷしがよくったって、危ないぞ? 俺くらいのソロでも……まあ、お見苦しい姿晒したし」

「それはね? でも、あたしみたいなお荷物ぽい職人が投げ捨てられる可能性あるじゃない?」

「……まあ。受付の職員でも、ルチャルくらいの見習い希望者が紹介状持ってて……いや、俺ならまず疑うか?」

「だから、ほかの皆が噂広めてくれてるかどうかで考えてたの~」

「……ほんとに、十歳?」

「十歳だよ~? 皆は鬼才とか天才とか勝手に言ってたけど」

「いや、それは言うぞ」

「そーお?」



 初対面の相手にもそう言われてしまうくらいの技術を見せたつもりはなかったが。他国にはまだまだ異能(ギフト)の恩恵に与かっている適合者が少ないせいもあるだろう。それを少しでも見つけるために、ルチャルたちの任務は今回の旅で役立てなくてはいけない。



「適当に旅してたっていう割には、ゼストリア公国に向かってたんだな?」

「白パンを知らない国って、師匠から聞いてて気になってたんだ~」

「ああ。あの黒くて酸っぱいパンか? まずくはないけど」

「それライ麦パンだね? スープに浸すとおいしいけど」

「なにそれ、知らね」

「じゃ、次作ってあげるー」

「おう、あんがと。……っと、関所着いたな?」



 公国の端の端に設置されているという関所のひとつ。北側に到着した時には、それなりに列が並んでいたのでルチャルたちもきちんとそこに続いた。



「ザイルはいくつから冒険者になったの~?」

「俺か? 十三だな。まあ、最初は雑魚にもてこずってたけど。今は相棒とよくやれてるよ」



 ザイルの獲物は双剣。短いのではなく、長刀に近い長さの双子の剣だった。柄は青く輝いていて鞘は真っ黒。武器を持っていないルチャルは素直に綺麗なものだと思ったくらいだ。



「え!? 『奏者のザイル』!?」

「は? マジ!!?」



 後ろに新しく並んできた者らに、ザイルの異名かなにかを呼ばれた。それが前方にまで伝わってどよめきがすごくなっていく。さらには、関所の兵士までやってきてくる始末。



「あ~……すまん、面倒なことになりそう」

「いいけど。そんなあだ名あったんだ?」

「冒険者たちに勝手につけられたんだよ。こっぱずかしいもんだぜ」

「へぇ……」



 奏者と呼ばれるからには、演舞のように綺麗に戦うのかと勝手に想像してしまうのだが。とりあえず、兵士にこちらへと呼ばれてしまったため、ついていくしかなかった。ルチャルが同行者なのにしかめっ面はされたが、ザイルがすぐに護衛してきた相手だと告げれば頭を下げた。



「失礼。では、お嬢さんもこちらに」

「はーい」



 みすぼらしい身なりはするなと師らから言われているので、そこそこ身綺麗にはしている。もともとは豪族だった家柄のため、衣服は可愛らしいものとかかっこいいものまで色々揃っていたが……裁縫が出来るようになってからは改造を重ね続けたので『女』とはわかりにくい。なので、蒼い長髪を特徴的な髪形にしているので目印にしているだけだ。



「ギルドカードのご提示をお願いできますか?」

「ん」



 ルチャルが横で待機している間、関所の受付ですぐに申請手続きが始まった。確認事項が色々あったが、自分の番が来た時どうしようかと思いながらも。この国でも提示必要な『紹介状』を出す必要はあるだろうと……こっそり、無限収納棚からその封書を出すことにした。



「では、お嬢さんの方は? なにか見習い専用のカードでも?」

「ううん。あたしは、これ! 偉い人に見せてって言われましたー」



 兵士に渡したのは、セルディアス王家特有の封蠟がある便箋。その色を見たことがあったのか、ほかにもいた兵士らの口をあんぐりと開けさせてしまった。どうしようかと思っていると、奥の方から『騒がしいな?』と言う声と同時に誰かが入ってきた。

次回は土曜日〜

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