第22話 ちょっと呆れられた
「……まったく。私の食事を忘れられるとは」
「……すみませんでした」
「ルチャルは悪くない。……ザイルに呆れているだけだ」
「何回食っても美味いじゃん!」
「そこは否定しない」
まだ執務途中であったガイウスに食事はどうだと声をかければ、いただこうと返事をしてくれた。ザイルがいると知ると、挨拶ついでに少し残れと言われたので……食堂で起きた話を付け加えたのだった。
「えっと、公主様」
「公式でなければ、ガイウスでいい。敬称も簡略で構わない」
「いえいえ、それは……立場上、あたしは簡単にできませんよ」
「こちらとしては気にしないが。……ザイルにも見習ってほしいものだ」
「いいじゃん。俺は付き合い長いし~?」
「? ザイルはソーウェンの人だよね?」
「正確には、こいつの母君がゼストリアの出身者でな? 幼少期はこちらで過ごしていたんだ。シュートと同じような関係だったと言っていい」
「へぇ?」
貴族の出身かと聞けば、今では没落してしまった商人の家の出だとか。冒険者に憧れていたのは、ゼストリアに居た頃からだったため……シュートのように騎士を目指すことは視野に入れてなかったそうだ。
「あ、そーそー。ルチャルの護衛。俺に任命してくんね?」
「ん? 関所以降でもか?」
「おう。出来れば、ソーウェンにも行きたい」
「あたしはいいけど?」
「適当に騎士をあつらえるつもりではあったが。今の時期、氷熊の繁殖期だからな? 人員を削るのはなるべく避けたいから、その申し出は受けよう」
「氷熊?」
「氷系の魔術が得意な熊型の魔物だ。肉は美味いし、繫殖期には冒険者以外にも狩りが名物なんだよ」
「おお! お肉!!」
魚も好きではあるが、ルチャルの好物は肉だ。特に、焼いて肉汁があふれてくるようなタイプが。この話を聞く限り、その氷熊の肉はそれに近いタイプのようだ。
「肉と聞いて笑顔が増したな?」
「ルチャル、なんか美味いもん作れそ?」
「うーん。パンでも色々あるけど……あり過ぎて悩みそう~~」
「はは。これは私の食卓にも期待できそうな内容だな?」
「はい! 期待してください!! ここはサンドイッチにすべきか、ひき肉にしてハンバーガーにすべきか」
「「もう悩んでる……」」
これには少し呆れられたが、楽しい悩みだとも言ってもらえた。
ガイウスの食事が終わったあとの片づけは近習がさすがにすると申し出てくれたので、彼らに任せることとなった。
「ハンバーガーって、どんな食いもん?」
廊下を歩き、シュートらのいるらしい部屋まで向かうのにザイルが案内を買って出てくれたが。
歩いている間に、さっきのつぶやきの質問をされたのだ。
「サンドイッチの亜種って、師匠は言ってたね? 専用のパンを半分に割って、ひき肉を丸めて焼いたものを挟むんだよ。肉以外にも野菜とか色々挟めるんだ。あたし的には超おすすめ!!」
「それ、食いて~」
「けど、肉汁ジューシーだと。さっき言ってたサンドイッチも迷うんだよね~。カツサンドって言うんだけど」
「カツ?」
「肉を揚げ物にするんだけど。ソースとの絡み方が美味しくて止まんなくなるのぉ~~」
「選択肢やべぇ。どっちも食いてぇ!!」
「でしょでしょ!! どっちも作りたくなるけど……公主様のお口あんぐりは恥ずかしそうだなって」
「ガイウスが気にすると思うか?」
「……しなさそう?」
「だろ?」
「いいね!」
ハイタッチしたくなるとザイルがかがんでくれたので、廊下にいい音が響く。
すると、奥の扉がひとつ開いて見覚えのある人間が顔を出してきた。
「……なにしてんだ、お前ら?」
「お。シュート、そこに居たのか?」
「仕事してたんだよ! ……ガイウスの食事、届けてきたのか?」
「美味しいって言ってもらえました~」
「出来立てだから、そりゃ余計だろうな? んで? なんで、廊下で楽し気に話してんだ?」
「さらに、美味い飯食えるかもって話」
「お?」
「氷熊のお肉で、明日以降のメニューが大賑わいですよ~」
「そりゃ、俺でも楽しみになるなぁ?」
ということで、シュートの前に立つと手を出してくれたのでルチャルはタッチをしたのだった。
「あ。あたし、狩りに参加してもいいですか?」
「「ダメだ!!」」
「……ひとり旅してきたんですよ??」
「んなこと言ったって!!」
「図体のでかい熊と対峙して、潰されたらどーすんだよ!!?」
「……ザイルはサンドイッチを早く食べたいからでしょ?」
「だってよぉ。俺の駆け足についてこれる腕前知ってても、狩りに来たら疲れね?」
「お前はそこか!? ……駆け足についてこられる??」
「へへ!! お墨付きもらってまーす!!」
しかし、シュートには一応国賓扱いだから我慢しろと念を押されたので。仕方がないと、明日も調理場に立つだけとなった。
次回は火曜日〜




