第13話 しばらくお世話になる場所
ガイウスはセルディアスから使者がきたことを臣下らに伝えるのに、しばらく忙しくなるからと退室していく。
代わりに、シュートがこの料理を何人かに食べさせたいと提案してきたので、ルチャルは『もちろん』だと頷いた。
「騎士団の連中なんだ」
『悪いこと言わないだろーね?』
「……シュスイ~?」
『だってさ~』
「大丈夫だ。隊長はガイウス以上に堅物だが悪い人物じゃねぇよ」
「堅物……」
ちょっと、故郷のとある人物を思い出したが美味しいものには目がなく……特に、甘いものには執心し過ぎて周囲に怒られていたな、と。そんな似た者がほいほいいるわけでもないだろうと、シュートが魔法鳥で呼び出した『連中』に会うことになったが。
(……おお。なんとなく、似てる)
表情からして『堅物』丸わかりの人物が入ってくると、ルチャルは師の父親である『カイルキア=ディス=ローザリオン』を思い出したのだ。普段はにこりともしない表情が堅いままのそれだが、シチューを食べて表情が変わるかどうかが少し気になってしまう。
ほかにも、若い男女の騎士が数名。うちひとりの女性と目が合えば、彼女はいきなりルチャルに間合いを詰めて抱き着いてきた。
「なぁにぃ!? この子、めっちゃ可愛い!!」
「……エクシス。いきなり何を」
「だって、団長!? こんな可愛い子がいるだなんて聞いてなかったですって!! お嬢ちゃ~ん? お名前は??」
「る、ルチャル=クラスターです……」
「なーんで、ここにいるの~? あたしたちは副団長に呼ばれたけど? 関係者?」
「大有りだ。団長らに食ってほしい料理の、調理人。噂のセルディアスからの来た使者のひとりだよ」
「「「「は??」」」」
「ほ、本当でーす……」
そろっと、エクシスから離れてシュートの横に立つ。頭を軽く撫でられたので、大丈夫なのを示してくれてるのだろうか。ぶっきらぼうに見えて、存外優しいのだなと再認識した。
「……いい匂いはするが。そんな子どもがか?」
ルチャルが使者である証拠の紹介状はガイウスの執務室に置きっぱなしのままだし、シュートの証言があっても証明になるかはわからない。団長らしい無表情ながらも整った顔立ちの彼については、ルチャルを訝しむばかり。シュスイが唸るように怒りを出しかけたので、影に入るよう無理やり命じた。
「ライオス? 今さっきここにはガイウスも居たんだぜ? 公主が認めた存在を貶すのは不敬に値するが?」
「……魔力の残滓でそれはわかる。だが、油断していいと判断すべきではない」
「手厳しいな、相変わらず。エクシス、ちょっとこっち来いよ」
「ほーい? ルチャルちゃんが何作ったんす??」
「この汁物だ」
ルチャルの代わりに器へよそってくれたシュートが食べ方などを、大雑把に説明してやった。副団長にそんなことを……よりも、団長のライオスからの視線が痛いので動かずがいいだろうと判断しておくしかない。
クリームシチューをまずひと口食べたエクシスだったが、少しはねっけの髪が揺れると犬か猫の耳が立つように見えて可愛らしく見える。味に問題はないはずだが、余程感銘を受けたような印象だった。
「え? あま……いより、コクがあって食べやすい?? クリームスープよりとろとろしてて、魚も臭くないし美味しいっす!!」
「そこに、いつものパンつけてみろ」
「は? つけ……うっひょー!? とろとろが増して、うっま!!」
「食事にうるさいエクシスでこうだ。お前らも食ってみろって」
「食べたいです!!」
「俺も!!」
「……私にも、ひとついいか」
「お? ライオスも興味持ったか?」
「そんな反応を見せられるとな……」
なので、ルチャルも手伝って呼んだ人数分よそっていくと。たまたまだが、ライオスに手渡すことになってしまった。少し緊張はしたが、ライオスの口元が緩んだのを逃さなかったので、祖の旦那様そっくりだと納得。
美味しいものには、美味しいんだと反応できる人に悪い人はいないのだから。
「「うっま!!?」」
「……風味がいいな。これが牛乳主体だと??」
「……ハーブとかも使いました」
「! そうか。……貶すような言い方をしてすまなかった」
「いいえ~」
とりあえず、和む雰囲気にはなれたので。せっかくだからと、このあと滞在場所をガイウスが割り振るまで騎士団の詰め所にお邪魔することとなった。
次回は火曜日〜




