第11話『クリームシチューとライ麦パンのセット』
「けど、ルチャル。シチューって、普通茶色のだろ? 牛乳使って作れるものなのか?」
シュートの質問に、ルチャルは大丈夫と言わんばかりに頷く。【枯渇の悪食】でレシピが点在してしまっているゼスティア公国の場合は、職人の祖らが持つ改善されたレシピとかが整っていないのはたしかだった。
だからこそ、使命だけでなく『美味しいものをたくさん食べて欲しい』という、ルチャルの思いを伝えたいのもあって……まずは、クリームシチューを作ることにした。ライ麦パンは料理長からひとつ譲ってもらったが、ひと口食べてかなり口の中の水気を持っていかれた。
(うん。大丈夫。あたしとかが作るのとだいたい同じ美味しさ)
酸っぱくてぼそぼそするのは仕方ないものの。このパンはこのパンで身体にいいものだとは教わっている。だからこそ、スープもいいがシチューでさらに美味しく食べれる方法を教えたかったのだ。
「材料はこんな感じです」
肉ではなく赤身の魚。根菜類と粉。あとバターに牛乳。それに味付けの調味料。
シンプルだが、身体の温まるクリームシチューにすべく。今回は手早く作るのに、材料を簡略化したのである。
「……芋と甘みの強い野菜?」
「に、魚の切り身? なんで粉も?」
「シチューなので、とろみをつけた汁物にするためです」
「なるほど?」
「シュスイ! ここでなら変換していいよ!!」
『ほいきた! レンジ?』
「うん!」
ルチャルに請われ、道具に変身した契約精霊の姿を見たので。当然とばかりに、ガイウスらは驚いたが。これが『職人』クラスの普通だというのを見せるので、ここを秘密にする必要はない。
さっと、皮を剥いてごろごろサイズに切った根菜類をフタを開けるだけの箱に入れ。その間に、魚の切り身に小骨がないかピンセットで丁寧に処理をしていくのも忘れない。
(骨多いなぁ? この赤身のだと、たしか喉に刺さりやすいから)
それは言わないとと、ガイウスらに告げれば何故かげんなりと言う表情になった。
「……小骨が刺さるのは普通だと思っていたが」
「重病になる可能性……なくもないな。声が出にくいとか言い訳にならん」
「結構鋭いので、気を付けてくださいね?」
「「ああ……」」
魚は先に軽く焦げ目がつくくらい焼く。レンジで茹でたように火が通った野菜を、玉ねぎといっしょに鍋で軽く炒めて半透明になったら粉を投入。
「ここで粉がしっかり混ざらないと舌触りが悪くなるので、しっかり。バターは軽く味付け程度に溶かして……粉っぽさがなくなったら、牛乳と調味料を入れていきます」
具材に火が通り、粉のお陰でとろみがつくまで煮込んだら塩コショウ。調整したら、魚をいれてまた混ぜる。途中、臭み抜きに入れておいたハーブは回収したら。
「シチューの完成でーす」
盛り付ければ、ルチャルには馴染みのあるクリームシチューが。見ていたふたりは本当にこんな料理が……と言わんばかりに驚きの表情をしているばかり。せっかくなので、出来立てを食べて欲しいからと、『どうぞ』と促してみた。
先に食べだしたのはシュートで、スプーンに入れたのを軽く匂ってから口に運び……美味しさがわかったのか、すぐに目を丸くしてくれた。
「うんめ!? 乳臭くないし、魚の臭みもねぇ!! おまけに食べ易い!!」
「! 私も!! ……これは、優しい味わいだ。普通のクリームスープよりも好みだ」
「よかったです。ここに、ライ麦パンを少し浸して食べてみてください」
「「浸す??」」
「ちょっとふやけて、美味しいんですよ~?」
『とろとろのアレか!』
「そうそう」
「「じゃあ……」」
それがふたりのツボにはまったのか、用意していたライ麦パンとシチューの皿が……秒殺で無くなる勢いで食べ進めていくのはルチャル的に見ていて面白かった。さっき、関所で別れたザイルもあんな食べ方をしていたなと思い出したからだ。
「これは!! 茶色のシチューでも食べ方を思いつくはずなのに……牛乳の方が一段と食べやすい!!」
口の端にシチューをつけたガイウスは、余程気に入ってくれたようだ。そんな彼に、シチューはスープ同様に具材を変えるだけで無限にレシピがあることを伝えれば、非常に驚いて目を丸くしてしまったが。
次回は木曜日〜




