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あの日の僕へ

作者: 空詩
掲載日:2026/01/30

三十歳の誕生日、和也は実家の押し入れから古い日記帳を見つけた。

中学二年の夏、将来の自分へ向けて書いた手紙が挟まっていた。


「三十歳の僕へ。夢はちゃんと叶いましたか?」


当時の自分は漫画家になりたかった。

でも現実は、安定を選んで会社員になり、毎日同じ日々の繰り返し。


手紙の最後には、こんな一文があった。

「迷ったら、神社のおみくじを引いてみて。あそこのおみくじ、いつも当たるから」


翌日、懐かしい神社を訪れた。

おみくじを引くと「大吉」。


「失くしたものが戻る。勇気を持って一歩踏み出せば、道は開かれる」


帰り道、中学時代の同級生、美咲に偶然出会った。

「和也くん、久しぶり」


彼女は今、地元で小さな出版社を営んでいるという。

「実は、地域の人の物語を集めた本を作りたくて。

和也くん、確か絵が上手かったよね?

挿絵、描いてくれないかな」


心が揺れた。あの日書いた自分の言葉が胸に響く。


「…やってみます」

勇気を出して言った。週末だけ、絵を描き始めた。最初は下手だったが、描くたびに楽しさが蘇った。


三ヶ月後、本が完成した。

手に取った瞬間、涙が溢れた。


「ありがとう。素敵な絵だった」と美咲が微笑んだ。


和也は気づいた。夢は形を変えても、追い続けられる。

もう一度、あの神社を訪れた。

おみくじには「失くしたものが戻る」と書かれていた。

失くしていたのは、夢を追う情熱だった。ずっと、忘れたふりをしていただけで。


あの日の自分に、今なら言える。

「大丈夫、僕は少しずつ進んでいるよ」


占いは未来を映す鏡。

でも未来を作るのは、今の自分だ。

読んでいただきありがとうございます。

他にも短編を投稿しています。

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