表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/15

第8話《side:ランス・マグダレーナ》

「ああ、もう! 忌々しい!!」

前王妃マグダレーナはノックも忘れ、奥の宮の一室――息子ランスが謹慎中の部屋に荒々しく踏み入った。


「母上……」

ランスはびくりと肩を震わす。

マグダレーナは荒い息をつき、憤怒に肩を震わせた。


「すべてあなたのせいですよ!? あなたが勝手に婚約破棄などするから、王位が脅かされたのです!!」

「も、申し訳ありません。……で、でも、母上も『好きになさい』と……」

「なんですって?」

「ひっ。いえ、その……!」


母親に威圧され、ランスは情けなく慌てふためいた。

マグダレーナは息を吐き出し、ぎりり、と奥歯を噛む。


「それにしても、まさかエヴァンジュリンが加護持ちだったなんて……」


数百年に一度、不定期に誕生する伝説の乙女。 

そんな存在が息子の代に現れるなんて、想定できるはずがない。


だからランスが『妹にすげ替えたい』と言ってきたときは反対しなかった。

ヴェルトワーズ侯爵家の長女は生意気だけれど、次女は頭が空っぽだから従えやすい――その程度にしか考えなかった。


しかし、エヴァンジュリンを王妃になるのは決定事項。

二千年の掟を覆すことは、さすがのマグダレーナにもできない。


「こ、これからどうしましょう……母上」

「大丈夫よランス。わたくしが、あんな男の思うようにはさせないわ」


グラディウス。

あの男は心底気に入らない。

母親も許せなかった。

正妃である自分を差し置いて、前王に寵愛されたあの女。

古参貴族ファーレン伯爵家の華、誰もがうらやむ絶世の美女アリシア……!

でも、あの女はもういない。

だから今度は、息子(グラディウス)を潰す。


「ランス。お前はもっと堂々となさい。妾腹のグラディウスなどに引けを取ったら許しませんよ。次の王はお前です」

「……はい」

「ほら、背筋を伸ばしなさいと言っているでしょう!! まったく、みっともない子ね。どうしてわたくしに似なかったのかしら!?」

「は、母上ぇ……」


ランスは青ざめながら直立した。それからキリっと表情を引き締める。

「そうよ、それでいいの。まさに王者の風格よ」

ランスはとても見栄えが良い。

頭は多少アレだが、黙って立っていればグラディウスなんかに見劣りするものか。


「グラディウスが実績を盾にするなら、お前にも相応の実績を積めばよいのです。――そう、実績さえあれば、正当な血であるお前が負ける理由など何もない」

「実績……?」


マグダレーナはしばし考え込み、やがてにんまりと唇を吊り上げた。


「ランス。――ベル=ツェルネ王国へ行きなさい」

「ベル=ツェルネ王国? 往復だけでも1か月以上かかりますよ……なぜ、そんな遠い国に?」

「あの国には、()()()がいるからよ」


そこまで言うと、ランスもぴんと来たらしい。

「ああ……あの女、ですね」

「そう。あの女」

マグダレーナは、暗い笑みをこぼした。


(どんな手を使ってでも、ランスを王にしてみせるわ。この国の王位は、わたくしの子のためのものなのよ!!)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ