第9章 said雨 そばにいたいだけだった
プレゼントは、誕生日の前日に買った。
空のことを考えながら、いつもより心が躍っていた。心が躍って、うきうきして、選んだ。
少し大人っぽいプレゼントを選んだ。ネックレス。
空に似合いそうな色。オレの誕生石がついたやつにした。少しでも空に近づきたくて、オレを意識して欲しくてオレの誕生石を選んだ。
“オレを、少しだけ持っていてほしい”そんな気持ちが、自然に湧いてきた。
空は、オレを見つけてくれた人だ。
誰も気づかなかったオレを、空だけが見つけて、連れて帰ってくれた。
それから、ずっと育ててくれた。
ごはんを作ってくれて、熱を出したら看病してくれて、オレが黙っていても、そばにいてくれた。
空は、オレの憧れだった。
かっこよくて、静かで、でも、あたたかくて。誰よりも、大切な人。でも、ただの“親”じゃない。
空がいないと、オレは生きていけない。
空が誰かと遠くへ行ってしまったら、オレは、きっと壊れてしまう。だから、空とずっと一緒にいたい。
そばにいたい。
それが、恋なのか、愛なのか、わからないけど、空が笑ってくれるなら、それだけで、オレは生きていける気がする。
誕生日に、喜んでほしくて、プレゼントを選んだ。
陽翔に相談して、選んだ。少しあきれていたけれど、一緒に選んでくれた。「空さん、絶対喜ぶよ」って言ってくれた。
渡すのが、楽しみだった。でも、誕生日前日。
オレは、空に言ってしまった。言ってはいけない言葉。
「本当の親でもないくせに」
言った瞬間、空の顔が少しだけ動いた気がした。
怒ったかもしれない。
嫌われたかもしれない。
また捨てられるかもしれない。
そんなこと、ないって思いたいのに、頭の中でぐるぐるして、プレゼントを渡せなくなった。
渡す資格なんて、ないと思った。
それから、数日が過ぎた。
空は、いつも通りだった。でも、何も言わなかった。私の中では、ずっと、あの言葉が響いていた。
今日、空が帰ってくる音がした。オレは、箱を握りしめた。
前の日の気持ちを、思い出して、渡したい。喜んでほしい。
怖いけど、それでも、渡したい。
咄嗟にプレゼントを隠してしまったけど、渡すなら今しかない。タイミングを逃せばまた、意地を張って渡せなくなってしまう。
「……あの。これ、誕生日……だったから」
空が、受け取ってくれた。
「ありがとう」って言ってくれた。
それだけなのに、胸の奥が、じんわりとあたたかくなった。
空が、ネックレスをつけた。オレの誕生石が、空の胸元で光っていた。
渡せてよかった。
受け取ってもらえてよかった。
あの日の言葉は、消えないけど。
それでも、少しだけ、オレは、空の“子ども”になれた気がした。
そして、空のそばにいられるなら、
それだけで、オレは、生きていける。
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