プロローグ:始まりの前
これは主人公の独白形式で進んでいきます。最後まで誰か1人でも読んでくれたらそれでいいという気持ちで書きました。1日おきに投稿していきます。読んでいただけたら幸いです。
私はまだ、誰にも見送られていない。
誰かに残されることも、誰かに残すものも、持たずに生きていくつもりだった。
誰かの大切になることも、誰かを大切にすることも、私には必要なかった。
静かに、誰にも触れず、誰にも触れられず、ただ、終わっていくだけの人生でいいと思っていた。
それは、私にとって自然な選択だった。
誰にも頼らず、
誰にも残さず、
自分の時間だけを積み重ねていく。
それだけで、十分だった。
だから、最初に見かけたときも、何も感じなかった。
そこに何かがいた。
けれど、ただの景色の一部だった。
風の音や、街の匂いと同じように、通り過ぎるもののひとつだった。
それが、なぜか、残った。
時間が経っても、その姿が頭の隅に残っていた。
理由はわからない。
理解する気もなかった。
ただ、消えなかった。
こんなはずじゃなかった。
そう思った。
それだけだった。
これは、私が誰かを見つけた日から始まる話。
そして、いつかその誰かが
私を見送る日へと続いていく。
誤字等ありましたらご報告ください。感想お待ちしております