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ビックリな成果

後半部分は

“豊穣の灯り”

レイラの視点です


「……レオンさん……これ、本当に釣れるのかな……?」


「あら、音を上げるのが早いんじゃないかしら?ギル。きっと、レイラでもまだ我慢できると思うわよ……食に関することなら真剣だもの」


「いやぁ……さすがに、早朝から始めてもう昼だよ?……一匹も釣れないのは、ちょっと…ね」



 ……アリーよ。お前さんのそれは、ちょいとばかし身内びいきが入ってるんじゃないか?……音を上げるどころか、レイラなら途中で文句言ってくると思うぞ?なんなら釣りを放棄して、素潜りを始めそうだ…。

 というか、全員分の天幕を張り終わってから少しした段階でどっか行ったしなあいつ……そこそこ大きめな魔力反応を感知したとかなんだかで、倒しに行ってくると言ったっきり戻ってこねぇし。

 一応はマップで居所を把握してはいるが、ここからちょっと離れたところをうろうろしてるだけなんだよなぁ……ほんとに何してんだか。



「……やっぱり場所が悪いのかなぁ……レオンさんの近くにいる自分たちだけ、釣れてないみたいだしさ…」


「……確かにリオは釣れてるけどよ。こんだけやってまだ10匹とかだぜ?もともと、そんなに居ないのかもな」


「それでも、0匹と10匹は大きな差だと思うんだけど……」


「……うし!んじゃあ、俺だけ場所変えてみるわ!お前さん達は引き続きそこを頼むぜ」


「ギル……余計なこと言うから………はぁ、分かったわ。ここは私たちに任せてちょうだい。天幕はどうするのかしら?」


「あー……ま、いらんだろ。体が冷えてきたらまたこっちに戻ってくればいいしな」



 さて、何処にしようかね。リオがこっちとほぼ真反対のとこなんで……ここは、間をとって湖のど真ん中で始めてみますか!



 さっそく、穴を開けて釣糸を垂らす。鉈を刺してみた感じから、氷の層はさっきのところよりも薄めのようだ。

 つまり、光が比較的入ってる場所なんで、こっちの方が活発に動いている可能性アリってことだな。


 既にリオが釣ってるように、この世界にもワカサギ…っぽい何かが居ることは判明してるんだわ。俺が今まで釣れなかったのは餌とか場所が悪かったのかもしれんな。ったく、魔物の肉を食らうなんて……小魚にしては贅沢な野郎だぜ…。

 もしかすると、今夜の晩飯はリオ頼みになるかもしれん………今日は、俺も含めてここに来ている全員が野営許可を貰ってきている。あ、ギルは知らん。

 まぁ、そういうわけで日暮れまではワカサギ釣りに勤しむわけなんだがよ……釣れるかねぇ…。

 


「今からでも、リオに釣りのコツを聞いてきた方がいい気がしてきたな……よし!どうせ待ってても掛からないだろうし、暇潰しがてら聞きに行きますかっ――ん?今、竿が動いたよな…?」




 ―――◇◆◇―――




「あっれぇ…?確かに魔力反応はあったんだけどなー……逃がしちゃった?うがぁぁっ、もう!この山の地中は魔力濃度が高すぎて判りづらいよっ!」


「おかえりなさい、レイラ。貴女が獲物を逃がすなんて珍しいじゃない?」


「そもそもの魔力を感知したってやつが嘘なんじゃない?待つのに飽きたから遊びに行ってた、とかさ」


「ふんだっ。待つのに飽きたからっていうのはそうだけど、魔力を感知したのは本当だよっ。実際のところ魔大陸の魔物に匹敵するくらいの魔力量だったからね!追い払えるならそうしておいたほうがいいでしょっ?」


「はぁ……そう怒らないでちょうだい。私はレイラのことは疑ってないから。……ギル?今度余計なことを言ったら、貴方のそのお喋りな口を縫い合わせるわよ?」


「…は、はぁい………それで、逃げた方向とかはわかってるのかい?」


「…ふぅ……ううんっ、分かってないよ。そもそもだけどさ、ボクは魔力の持ち主を直接目で確認できてないんだよね……たぶん、地中に居たんだとは思うけど…」



 うーん……ほんと、どこに行ったんだろ?地中を掘り進める魔物なら、少しくらい地面が振動しても良さそうなんだけどなぁ……土魔法を使うならそれはそれで、ボクが探知できないわけがないしさっ。

 まっ、逃しちゃったモノはしょうがないよね。少なくとも、ここら一帯の安全さえ確保できてればそれでいいんだし!気にしない、気にしないっ。



「あれ?そういえばおっさんは……へー、場所変えたんだ?」


「ええ、そうね。ギルがいらないこと言うから…」


「えぇっ?自分は事実を言っただけだよ?」


「はっはーん……なるほどねー。あらかたおっさんの近くは釣れないとか言ったんでしょ~?」


「……それが事実だったからね。実際、レオンさんが離れてからはアリーと自分は一匹釣れてるしさ」


「まぁ、仕方ないのよ。彼の持つ魔力量は桁違いに多いわ。それこそ魔法の修練をしていない人でも、漏れ出る魔力を本能的に感じ取って避けようとするくらいにはね…」


「闘争本能の強い生物とか魔力の高い生き物以外は大抵逃げちゃうよねー……リオみたいにさ、魔法のスキルがあって魔力を操作する術を身に付けられれば良いんだろうけど…」


「あぁ……やっぱりそうだったんだね。自分が初めて彼を直接見たとき、咄嗟にさん付けで呼んでしまったのは畏れからきてたのか……」



 ふんっ……そんなことにも気づけないなんて、ちょっと魔法の修練をサボりすぎじゃないかな?成人前から王位継承を手放す話があったにしても、王族なことに変わりはないんだからさー……これはワーデルス現当主に報告だね。



「あら、遂にレオンも何か掛かったのかしらね?糸を手繰り寄せてるようだけれど…」


「……でも、手繰り寄せるのに踏ん張る必要なんてないよね?……この魚、そんなに引きが強かったかなぁ…」



「――ん?……んんっ?!ちょっと待って!さっきの魔力反応!おっさんの下にあるよっ!もしかしてっ……」



 そっか!地中は地中でも、土の中じゃなくて水脈に居たんだ!それならボクが見つけられなかったことも、すぐに逃げられたことにも説明がつくっ。

 


「マズイよっ!おっさんの足元の氷が……届くかわからないけど、ボクの魔法で――」



―――ザッパアァァン……



 おっさんの下の氷が割れるよりも先に、何かが湖の氷面を突き破り現れた。湖面に露出した部分は頭部と首だけ。それでいて、ボクたちの身長を越すほどに大きい。全長を考えると、どれくらいになるのか……考えるだけで恐ろしいよ…。


 さらには、全身が鋭い鱗に覆われていて、頭部の両側面には尖ったヒレのある蛇のような姿をしている。



「……あれは……水竜…の類い、かしら……」


「…とんだ大物をこっちに連れてきたね……君は…」


「……っ!おっさんは?!もしかしなくても水に落ちたよねっ?助けに行ってくるっ!」


「あっ、ちょっ、ちょっと!……これは、どうしよっか。アリー?」


 

 今のボクはいくらアリーの命令でも止まるつもりはないよっ。人命救助が優先だからねっ!アリーにしろギルにしろ、金級の実力持ちなんだから魔力も万全なら問題ないはず!

 それに、こんな真冬の湖に落ちでもしたら誰だって命が危ないに決まってるじゃん!竜の息吹(ブレス)に耐えれても、急な温度変化に人は耐えられないんだからねっ。



「先輩っ?!大丈夫ですかっ!いま僕が――」


「――待ってリオっ!ここは冷寒に耐性のあるボクが行くよっ。リオはあいつを引き付けてっ!」


「は、はいっ!任せてください!」



 リオが魔力を操作し始め、ボクが湖面の中心に出来た大きな穴めがけて飛び込もうとしたその時―――



「―――だらっしゃあぁぁぁっ!」



 どこからともなく聴こえてきたおっさんの声とともに、水竜が湖面から離れ、空を飛び、湖端の地面へ衝突した。



「……えっ…とー……」


「へっ…くしゅっ!…っあぁー……なんだよ!せっかく大物が釣れたと思ったのによぉ……いきなり、水ん中に落としやがって……冬だぞ冬っ!時期を考えろってんだ!」


「先輩っ!……ふぇっ……よ、良かったです……生きてた……」


「…あぁ?……はんっ、さすがにあんな魚程度に殺される程ヤワじゃねぇよ……でかくて大変だったが、尾ヒレとその付け根は中型の魚並にちっさかったからな……糸巻き付けて無理矢理投げ飛ばしてやったぜ……感覚的にはボアよりも軽かったぜ?そいつ……へっ、くしゅっ……あー寒っ」



 あまりの出来事にリオ以外の皆がポカンとしている間にも、おっさんは打ち上げた水竜?のもとに行ってとどめを刺した。



「あ"ー……とりあえず、今日の晩飯は困らずに済みそうだな。たぶん、食えるだろこいつ」


「………そうね。鑑定の魔道具を使ってみたけれど……毒とかはないみたいよ」


「……へぇ?鑑定の魔道具とかあんだな…」


「ギフトほど詳しくは観れないけれどね。それに、竜種じゃなかったわ。魚類系統の魔物種よ…」


「あ?竜種?……まぁ、たしかに頭だけは…ぽいな。さながら竜頭蛇尾……あー、いや。竜頭魚尾ってところか」



 うん、おっさんがよく分からないことを言ってるのはいつも通りだね……はぁぁ、無事で良かったよ~。



「それじゃあ、これの解体はボクとエマに任せてよっ!ボクも見たことない魔物だし……いい素材があったら選り分けしたいからさっ。鑑定の魔道具も貸してほしいなー?なんて…」


「べつにいいわよ。はい、どうぞ」


「ありがとー!……おっさんも解体の方に参加する?」


「あ"ー……いや、後で素材さえ見せてくれればそれでいいわ。料理の方も任せたぜ」


「先輩!早く天幕の中に入ってくださいっ。ふ、服も…だ、大丈夫ですからっ!……わぁ―――」



「…うぃっす!料理上手な二人組に期待しててねっ?――じゃあ、さっそく解体だー!っと、その前に血を抜かないとだねっ……こいつを湖まで運ぶのかぁ……あっ、ほんとに思ったよりも軽いや」


 

 湖面から出てた部分がほぼ全身で、全長が思ったよりも短かったってのもあるんだろうけど……意外と身がスッカスカなのかなー?うーん、過食部が少ないのは嫌だな~。

 それでもこれだけ大きいし、ボクたちが満足出来るくらいはあるっ!…って思いたいところだよ……。


 よしっ、ボクは温かい汁もの料理をメインに作ろっかな。でも、鍋だとこの前やったから……いいや!考えるの面倒だし、鍋にしよーっと。



 生き物としては歪な形に大きな魔力量………竜の成り損ない……かな。



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