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親離れ、子離れ


「ふぅ……食った食った…」


「僕も……もう、お腹いっぱいです…」



 一頭を二人がかりとはいえ、ボアそのものが大きいからなぁ……一頭丸々はさすがに時間がかかったわ。

 まぁ、残さず食べきれたことに驚きではあるけどよ……ってか、リオは意外と食べるんだな。やっぱり男の子だから肉が大好きなのかね。脂の多いところもガッツガツ食べてくんだぜ?俺もちょくちょく口に運んではいたが……今、胃もたれしそうで戦々恐々としてらぁ。


 後は、臭いにつられたのか魔物が寄ってくるのが地味に面倒だった。魔物といっても、ゴブリンしか来てないが……そういや、数年前にリオとバーベキューしたときもそうだったな。

 対策としては、サッと一匹殺したあと首を切り落として頭を適当な枝にぶっ刺す。んで、旗っぽくその辺の地面に立てとけば、寄ってきても大抵は逃げていく。ザ森で得た知識だぜ…。

 だからといって無警戒でいるのは阿呆なんで、奴等が逃げるまでは油断できない。そこが面倒なんですわ……いやまぁ、魔物がいる森で悠長にバーベキューなんかしてる俺らの方が頭おかしいんだけどよ。



「さて、後は帰るだけなんだが……リオ、街の門…開いてると思うか?」


「………たぶん、閉まってると思います…」


「だよなぁ……冬は日が暮れるのが早いんだった。うっかりしてたわ……後、思ったよりも盛り上がりすぎて長居しちまったな」


「ですね……どうしましょう…?」



 うーむ……すぐそこに洞窟あるし、入り口に簡単な警報装置と適当な皮でカーテンみたいに吊るしとけば、雨風凌げる拠点にはなるが……インベントリから素材出さなきゃなんだよなぁ…。今から材料取りに行くのはさすがに厳しいしよ。

 交代で見張りして一晩明かしたり、俺が寝ずの番をするってのも大いにアリだが……こっちから誘った手前、リオに見てもらうのは申し訳ない。かといって、俺が寝ずの番をするとリオが気にするんだよなぁ……せっかくの楽しい思い出を罪悪感とかのモヤモヤした気持ちで締めさせるのは主催者として駄目だろう?


 だが、チートを明かしたくないのが一番の本心であってだな……俺が恐れているのは、穏やかな生活を乱されることなんだわ。チートは便利だから使うけれども、他者にバレることで日常が壊されることを何よりも嫌っているわけで―――ふぅ……リオなら、アイテムボックスのスキルとして言っても――大丈夫か。


 ダメだなぁ、ここ最近の俺は………解ってるんだわ。どんな状況であれ、一度決めた自分ルールや線引きを突破しちまうと段々縛りが緩くなることくらいはな。

 こりゃ、早いとこラインを新しく引き直さないとだな。このままじゃあ、ずるずると秘密をひけらかしそうだ…。


 しっかし、リオやアリーにずいぶんと絆されてるなぁ……――気ぃ引き締めろよー?俺…。



「まっ、ここは野宿一択だな。キャンプしようぜ!とりあえず、拠点作りにそこの洞窟へ入るぞー」


「はいっ」


「なんて言ってみたものの……この時間だと洞窟は暗すぎてなんも見えねぇな…」

 

「あ、それだったら僕がひ―――」


「なんちゃって……こういうときのために、ランタンの類いは常備してるんだわ」


「――え……先輩、どこから……い、いえっ!僕は何も見てないですっ!気にしないでくださいっ!」


「ははっ、そんなに慌てなくてもいいぜー。いま見たから分かると思うが、これはアイテムボックスのスキルだ。エマも持ってるし、どんなものかは知ってるよな?」


「んぇ?……えっ…と………はい…」


「これがなかなか便利でなぁ。この中に敷物とか火の魔道具とかも入ってっから……今日は安心して眠れるぞー?」


「…あ、あの…交替で見―――いえ……先輩っ!僕を信頼してくれて、ありがとうございますっ。絶対に……アリーさんにも、この事は言いませんっ」


「そうかい……んじゃ、ひとまず野外でお泊まりセットをここに置いとくんで……体拭くなり、寝床用意するなり、まぁ好きに過ごしてくれや。俺は外で、侵入を知らせる罠とかの諸々を設置してくるんでね。


 ――あー……代えの服は俺のしかないんでぶかぶかになるとは思うが……着れないことはないだろうし、適当に選んでくれ」


「せんぱいの服っ―――は、はいっ…!」



 ん?やっぱ、おっさんが着てた服って年頃の子にとっては嫌だよな………一応、しっかり洗ってるやつだから臭いとかは問題ないはずなんだが……今はそれしかないんで我慢してくれ………すまん。


 よ、よし!とにかく、思う存分インベントリを活用できるようになったんだわ。気持ちを切り替えて、魔道具込みの本格的な警報装置を設置してやるぜ!

 一応、人が引っ掛かかる可能性も考慮して、殺傷能力はついてない物にするつもりだ。まぁ、ビリビリ痺れるくらいは堪忍な?



 それにしても、信頼してくれてありがとう、か。リオはいい子に育ったなぁ……パーティーメンバーよりも俺に重きがあるのはちと問題なんだがよ。

 


「――うんにゃ、善意に甘えるのはここまでにしとかねぇと………こっから離れた遠い場所へ一人……旅に出るってのも、いいかもしれんな…」



リオ「…せ、せんぱい……寒いので、ぎゅってしてもらっても…い、いいですか?」

レオン「ん?寒いなら火の魔道具を近くに持ってくるが……」

リオ「え……えっと……火の魔道具だとちょっと暑いので……ひ、人肌が丁度いいかなぁ~……なんて…」

レオン「ったく、しゃあねぇな……んじゃ、そっちのフトン…あー、敷物の方に入るぞ?間違っても、寝惚けて顎とかに頭突きしないでくれよな」

リオ「し、しないですよ!――あっ、えっと…肩に手を置くんじゃなくて……こう、両腕で僕を抱き締める感じで……」

レオン「あー?んなことしたら下側にくる腕が痺れるだろうが。はぁ――んじゃあ、うで枕してやっから…こっちに頭のせろ」

リオ「…こ、こんな感じ……ですか…?」

レオン「おう。んで、抱き締めるんだったか――おー…やっぱ、すっぽりと収まるよな。これでいいか?」

リオ「…っ……!………は、はぃ………えへへ……」


レオン(ったく……なぁに、笑ってんだか。この甘えんぼさんめ)



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