表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/100

冬の人気者


 冬場に森へ入りたい理由。それは……ボア狩りじゃあっ!


 この時期のボアは脂がかなりノっていて旨いのよ。しかも、秋に食べたものがカスクスピーナの実であることが多いんで、肉の味もほんのり甘いんだわ。

 まぁ、そんなことくらい狩猟ギルドの人たちは百も承知なんで獲物の早い者勝ち……言ってしまえば競争、だな。それが発生する。優秀なハンターなら既に数頭狩ってきてるだろうな。



「さながら、出遅れ組ってね……あー、この辺の巣の主も既に獲られてるな。印がちゃんと着いてるわ」


「ほんとだ……ボア狩りって意外と難しいんですね…」


「まぁなー……狩猟ギルドの奴等はプロなのよ。俺ら冒険者みたいに手広くなんでもやって稼ぐとかじゃなくて、狩りの道一本で食ってるわけだからな」


「職人ってことですか……でも、そんな中でも先輩は狩れてるってことですもんね!先輩もぷろじゃないですかっ」


「あー……ありがとな」



 とはいえ、俺はズルしてるだけなんでそんな真っ正面から褒められると照れる以前に罪悪感がな。マップでサーチかければどこにいるかは分かるのよ…。

 毎年、これのおかげで旬のボア肉を堪能できてるっす。マップチート様々っす。

 


「冬のボアは高額で取り扱われてっからなぁ……自分達で食べるのもいいが、売ってもいい稼ぎになるんだわ。だけども、俺は自分で食う分しか獲れてないんでね。その点で俺はプロじゃないぜ…」


「それでも、獲れるだけすごいですって!今のところ、僕の力じゃ一頭も狩れる気がしませんし……」


「まぁ、足跡とか糞とかの見つけやすい痕跡はだいたい先に嗅ぎ付けられてるわな……狩猟人は仕事が早いのよ」


「うぅ……お誘いをもらった手前、先輩に頼りきりにはなりたくなかったんですが……お願いします…」


「おう!任せなっ――」




「―――つーわけで、だいたいこの辺だな」


「えぇ……っと。特に、来る途中に痕跡のようなものはなかったと思うんですけど……」


「たしかにな。痕跡はなかったが、今から痕跡ができると思うぜ……とりあえず、ここの木の陰に潜んでおくぞ」


「はいっ」



 いきなりマップでサーチをかけてボアと遭遇しました!……ってのはさすがにおかしい。

 それに俺が狙うのは、巣の主とか痕跡の先にある群れとかじゃあない。そんなのは、だいたい狩猟ギルドの連中が先に目をつけてたりする獲物なんでね。さっきみたいに空振りすることが多いのよ。

 

 ボアは冬が明けた直後に繁殖期を迎える。そのため、営巣によいポイントを探している時期が今なのだ。雪が積もるなかよく探せるなとは思うが……積雪よりも高く伸びてる草や低木のあるところが巣に向いてるんだろうな。ある意味見つけやすいのかもしれん。


 そんな、巣作り物件を下見しにきたはぐれの個体こそが、俺の狙うボアなのよ。

 というか、マップにボア一体だけでサーチをかけると自然とそうなる……。



「ほれ……あっち側から一頭、向かってきてるのが視えるだろ?」


「…うわぁ……先輩っ、すごいですっ」


「だろぉ?んじゃ、後はリオがやってくれや……俺、弓を置いてきちまった」


「えっ?」


「てへっ。まっ、リオならやれるさ」


「…ありがとうございますっ……うぅ、緊張が………"貫通射(ピアースショット)"」



 リオが放ったスキルの一矢は、横向きになったボアの頭を綺麗に射ち抜いた。素早く矢が貫通したためか、衝撃のあまりボアが吹き飛ぶということもなく、その場に崩れ落ちるようにして倒れる。

 


「うおぉしっ!よくやったぞー、リオ!よーしよしよし…」


「わわっ…んぅ……えへへ――あっ、すぐに、血抜きしないと!」


「…っとと。それもそうだな。この辺に水場は……あの洞窟っぽいところに湧き水が出てたな、そういや」


「それじゃあ、そこまで運びましょう!」


「おうよ!……しっかし、スキルってのは便利だよなぁ……一撃かつ、矢が頭を貫通するとはな…」


「ですね……僕も覚えたのがこのスキルで良かったと思います!でも、矢じりはダメになっちゃうんですよね……一応、あとで矢の回収をしに行ってもいいですか?」


「いいぜー。なんなら、いま行ってきてもいいぞ?運ぶのは一人でもできるし、水場のある場所もそこの洞窟内だから、俺を見失うことはまずないだろうしよ」


「で、でも……」


「コレを仕留めたのはリオなんだから、運搬と解体くらいは俺にやらせてくれや。」


「…ありがとうございますっ。すぐに戻ってきますね!」



 あいよ――気のせいじゃなければ、後ろの木々すらも貫通してたが……すぐに見つかるのか…?


 とりあえず、リオが戻ってくるまでに血抜きと……解体作業まで始められれば上々っすかね。

 


「それにしても、良い個体だな。丸々と太ってやがる……おぉ、メスか!いいねぇ…仕留め方もかなり上出来だし、こりゃあ焼いて食うだけでもかなりうまいぞ?」



 太陽もまだ高いんで、久々にバーベキューでもしますかね。そうと決まれば、血を抜いてる間に火の準備とかしないとだな……せっかくだし、燻製の用意もしとくか。脂のノリ次第ではかなり良い仕上がりになりそうなんだよなぁ。



「あぁ――楽しみだ」


リオ「戻りましたー……矢はやっぱりダメになってました……くすん」

レオン「おぉ、おかえり。まぁ…頭蓋骨ぶち抜いて、木も数本貫通してりゃあ、なぁ。

それよりも、ほら!見てみろよ、この脂のノリ方っ。真っ白だぜ!こりゃあ、旨いぞぉ」

リオ「わぁっ……あれ、火の準備がしてあるってことは……もしかして――」

レオン「おうよ!バーベキューだぁっ!」

リオ「いいんですかっ?!やったぁっ!」

レオン「こんだけ良い肉なんだ。売るのは勿体ねぇだろ?食えるだけ食っちまおうぜ!」

リオ「はいっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ