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雪かきの達人


 早朝に家を出ると、辺り一面が銀世界になっていた。なんなら、綿菓子みたいにふわふわした大粒の雪が今も降り積もっている。



「うげっ、足が完全に埋まりやがった。一晩でこうかよ……こりゃ、救援依頼も何件か届いてそうだな」



 足を踏み出す度に脛の真ん中まで雪に埋もれるもんで、非常に歩きにくいし、冷たい。当たり前のように、ブーツのなかに雪が侵入してくるんだわ。

 明日になれば、雪かきの依頼を受けた冒険者たちの手によって、この辺の道も多少は歩きやすくなるんだろうが……貴族街の道と平民区画の主要な通りは報酬額が少し高めに設定されてるんでね。そこそこ、人気の依頼なのよ。


 一応、今日は森に行く予定だったが……雪かきの依頼を受けるのでもいいな。ってか、さすがにこんだけ積もられちゃ、しばらく森には入れんか。一週間程は様子見ないと、だな。



 ふかふかな雪に苦心しつつも歩き続けて、ようやく平民区画に入ると、とたんにスコップを持った冒険者とすれ違うようになった。何故か気軽に挨拶してくる奴等が多かったんで不思議に思いながらも挨拶を返しながら、やっとのことでギルドに到着する。

 太陽の位置は判らんが……昼の鐘がなる前なんで、だいたい時間で言うところの十一時ってところだろ。

 

 

「うーっす……ってあれ?アレックスじゃねぇか。久しぶりだなぁっ」


「んお?…レオンか……そうだ!レオン!ちょっと雪かきの依頼を手伝ってくれねぇかっ?」

「それはいい案だね……木の道具で三人分の働きをすると噂されてるレオンが手伝ってくれるのは心強いよ」

「よっ!雪かき名人っ」

「棒のついてる扱いは達人級っ!」


「おいコラ、ランス。変な言い方するんじゃねぇよ……んで、手伝いだったか?アレックスの頼みともあれば全然いいぞ。早速行こうぜー」


「あー、ちょっと待て。その判断をするのは早いかもしんねぇんだわ……ひとまず、依頼内容とかを聞いてから決めてくれや」



 んん?別にアレックスには恩しかないんだから、そんな律儀にしなくたって………そういや、この場にいるのって古参連中のなかでも金の縁がついてるメンバーだけだな。こりゃ、なんか大きな依頼でも来たのか?



「あー、どっから話したもんかな……まず、俺たちが受けることになった依頼は、雪で立ち往生しちまった馬車の救援依頼だ」

「ただ、乗っている人が実権を持つ貴族のご子息様みたいでね」


「……豊穣の灯りはどうしたよ。こういう類いの依頼はあっちが率先して受けてなかったか?」


「それなんだが……ギルド側も最初は、豊穣の灯りに依頼することを奨めたそうだ。だが、先方のお願いで豊穣の灯り以外の冒険者がいいってなってなぁ」


「なんだそりゃ。貴族ってのは面倒……あー、もしかしてアリーに会いたくない、とかなのかね」


「たぶんなぁ……貴族の名前を知ることができれば良かったんだがよ…」


「んー……まぁ、いいぜ。ここまで聞いたけど、アレックスの手伝いは犯罪でもなけりゃ断らねぇよ。むしろ、そんなお貴族様を待たせる方が怖ーや」


「…そうか。助かるっ!」

「これで5人かな……あっちの護衛を含めて客車を持つ人が五人、道の雪かきが三人でいけるから、なんとか最低人数は揃ったね」

「うっし!持つのは任せなぁっ」

「槍もこれも同じ棒だろ?雪どかすのは得意だぜっ」



 アレックスに副リーダーのジェイメス。俺と同じ位の身長のなのにガタイと筋肉量が倍以上なアンドル。ノッポな槍使いのランス。どいつもこいつも、銀級の金縁付きだ。つまるところ、貢献度で言えば金級になっててもおかしくない連中ってことでもある。

 クリムゾンの古参。しかも、上澄みばかりがいる輪の中で場違いな気もするが……こいつらには散々お世話になってるんでね。手伝えることがあるなら、苦手な貴族関係でも手を挙げるさ。



「本当にありがとな。貴族絡みの依頼を手伝ってくれてよ…」


「気にすんなよな!んなこといったら、最近関わってる豊穣の灯りのリーダーはアリーだぜ?」


「がははっ!そういや、そうだったなぁ……そうだ!今から救援しに行く貴族のご子息だけどよ、冒険者にたいそう理解がある方らしくてな。敬語とか作法、服装なんかは自由でいいんだとさ。アリーと似た感じなら、気が合うかもなっ?」


「おー、それは助かる……けど、親しくはなりたくねぇなぁ……正真正銘のお貴族様だしよ………依頼中に嫌な空気が流れないだけで十分だわ」


「たしかになっ!俺も貴族は苦手だわ」


「お喋りもいいけれど、早く行かないと暗い中救援する羽目になるよ、アレックスさん?」


「おぉっ、わりぃわりぃ。ジェイの言う通りだな。話なんて道すがらでもできるし、さっさと向かうか!」


「おっけー。んじゃ、ギルドから雪すかすやつ借りてくるわ。ついでに、助っ人制度で同行の処理してくればいいか?」


「うん。そうだね、それでお願い」


「あいよー…」



 さぁて、久々の雪かきだな。雪国出身の底力ってのを見せてやるぜ!

 

 不安があるとすれば、俺を除いたメンバーの年齢が四十前後ってところよな。一番若くてジェイメスの36歳だからなぁ。雪かきに客車持ち……腰をやらないか心配だ…。


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