到着!オルフェンス港
道中でゴブリンの群れを発見したり、休憩地点の村の家で小火が発生したり等と、ちょっとしたハプニングに見舞われつつも俺達は無事にオルフェンス港へ到着した。
「着いたあぁっ!」
「所々で街に泊まったとはいえ、これだけの長旅はやっぱり疲れるわね」
「ようやく、か……アリーの意見に同意だぜ」
「……ここがあのオルフェンス港……なんだか、変わった匂いがします…」
「海がすぐそこにあるからだよっ。潮の香りってやつだねー」
「ほんと、慣れないけれどいい香りよね。海に来たって感じがするもの」
「………植物の死骸の臭いなんだがな…」
「うっそぉ……」
「そうなんですか……」
あれ、確かそうじゃなかったか?潮の香りって、海草とか植物性のプランクトンとかが死んで泥とか砂に堆積していくと臭ってくるものだよな?中学の理科の授業で使った資料集かなんかのコラムにそんなことが書いてあったと思うんだが…。
「―――さて、私はここの代表者とお話があるから領主館に行こうと思っているのだけれど……貴女達も来る?」
「私はいつでも御嬢様のお側に」
「私もよ~」
「げっ……それ、ボクも行かなきゃダメな感じ…?」
「さぁ……どうなのかしら?べつに私は来なくても咎めはしないけれど……」
「あー……もしかして、代表者ってのはオルフェンス公爵なのか?」
「そうね。オルフェンス公もワーデルスのようにこの街で暮らして統治を行っているわ。そして、その公爵様も狩猟祭に参加するのよ……だから顔だけでも出しておかないと、と思ってね」
「うそだろ……当主が自ら危険へと飛び込むのか…?」
「ほんとだよねー……たしか四年前からだっけ?たぶんだけど、息子さんの教育や業務の引き継ぎとかが完了したんでしょ」
「それでも、高位の貴族が率先して参加するなんて……普通じゃないと思いますが…」
「とはいっても、先代も先々代も隠居前になると狩猟祭に参加してたしねー。そういう伝統じみた何かがあるんじゃないかな?」
「どのみち、貴族は魔法が使えるから後方よ。前衛ではないから少しは安全ね。
話が逸れてしまったけど、結局レイラは一緒に来るのかしら?」
「うーん……そう、だね。今回はついてくことにするよ。ほんとは、リオに色んな所を紹介するつもりだったんだけどなぁ」
「そんなの明日や明後日にでもできるでしょう?狩猟祭まで一週間近くは余裕があるのだから、焦る必要は無いわよ……一応聞いてみるけど、レオンとリオも来る?」
「断るッ!」
「えーっと……遠慮させていただきます…」
「ふふっ……分かったわ。それじゃあ、宿だけ先に取ってから各々自由行動といきましょ」
「うぃーす…自由行動……いいなー」
「あいあい、キャプテンっ」
「はいっ!」
アリー達と別れてから、リオと一緒に海岸沿いまで来てみたが……海沿いは崖じゃなくて、ひっろい砂浜になってるんだな。道理で、冒険王と多くの民が無事に上陸できたわけだ。あの千里浜よりも広いんじゃないか?
「ちぇっ……もう少し早くに着いてれば釣りとかができたのかもしれねえのになぁ…」
「あはは……漁師ギルドでのことは残念でしたけど、あの方達の作業を邪魔するわけにもいかないですしね。今回は仕方がないですよ」
「まぁ、防衛線の構築作業はなぁ……よく、あんなに大きな岩を運べるよな。消波ブロックより持ちづらいぜ、あれ」
「…あの方たちはほとんどが漁師の方らしいですよ?」
「ほんと、凄いよなぁ……冒険者になってたら銀級は堅いと思うぜ。しかも、あの人たちも狩猟祭に参加するんだろ?」
「そうみたいです。漁に出る度に魔大陸の魔物と戦ってるそうですし……海の魔物においては、冒険者よりも詳しいと聞いてます」
「漁師ってのは過酷な職業なんだな……でも、狩猟祭の日に関しては陸地の魔物も海を渡ってくるんだよな?」
「これまでの記録だと…ですね。陸に棲む魔物が海を渡るだなんて、ちょっと考えられないですけど……」
まぁ、全ての生物は海から始まってるからな。哺乳類とか爬虫類みたいな魔物なら海くらい泳げるんだろう。問題は、空を飛んでくる魔物の対処と砂地でいつも通り戦えるように馴れておかないとマズいってところか。
「リオはこの地面でも問題なく立ち回れそうか?」
「うーん……そうですね。弓を留まって射るくらいなら問題はなさそうですが、動き回りながらとなるとちょっと……」
「だよなぁ……よし!あそこの漁師さんに話つけて、砂浜での特訓としゃれこもうぜ。俺もさすがに、砂に足をとられながら戦った経験はないんでな。
―――おーいっ!そこの漁師さんっ。ちょいと足を砂場に慣らしておきたいんで!暫くここ借りてもいいっすかーっ?」
「ん?おうよっ!あんたら他所から来た冒険者かっ?いい心がけしてんじゃねぇかっ!そこはまだ手が入らねぇから、思う存分使いなっ!」
「うっす!使用料は酒場でエール一杯とかどうっすかねっ?」
「がははっ!いらねぇいらねぇっ!自分一人だけ貰っちまったら、周りからドヤされちまうよっ。タダでいいぜっ!」
「おう、ありがとさんっ!存分に使わせていただくぜーっ!
――ってことで、始めるか」
「せんぱいはすごいなぁ………あ、はいっ!」




