地に足ついたヒヨコたち 前編
「んー!お久しぶりです!レオンさん!」
「よっ、イオも元気そうで何よりだ」
「ふふ、今年も元気に梅雨を越せたのはレオンさんのおかげですよ」
「はっ……お前さんらが必死に学んだ努力の結果だろうが。易々と自分達の力を他人の成果にすんなよ。そんなんじゃ自信つかねえぞ?」
「あはは、それは失礼しました。でも、感謝だけはさせてくださいね?
そうだ、今日もシスターと子供たちに会われていきます?」
「ああ。そのつもりで来たしな……しっかし、イオは今年の夏頃で14になるんだったか?」
「覚えてくれていたんですね!……寂しいことに、もう少しでこことお別れです」
俺が今訪れている場所は、現代でいう児童養護施設にあたる。この世界では、資金面では国が、管理人の派遣や建物は教会預かりで運営されている共同経営の施設だ。
特に、辺境伯領の街には必ず一つ以上建てられている。この街はここの一つだが、建物の規模としてはそこそこ大きい。ま、辺境伯が孤児の問題に力を入れてくれているってことだ。
理由は単純明快。戦争による孤児の発生率が多い地域だから。最近こそ、隣国とは小競り合い程度の争いしかしてないが……それでも人死にがでない訳じゃあない。
それに、亡命しようとした親子が途中で魔物等に殺されて、生き残った子供だけが街に辿り着くケースなんてのもそこそこある。
きっと親はよかれと思って子供を庇ってるんだろうな。子供にとっちゃ一生のトラウマものだぞ。まぁ、一緒に逝けるのと意地でも生き残ることの、どっちが幸せかなんて俺には断言できないがな。
まっ、これらの理由から親や引き取り手の無い子供を保護する施設があるわけだが……当然、ずっと預かれる訳じゃあない。なんで原則14歳までとなっている。それまでに手に職をつけなきゃいけないってことだな。
「イオはたしか…薬師に師事してたんだったか?」
「はい。年越し前に合格をもらえていたので、しばらくは師匠のお店を手伝いつつお金をためて……ゆくゆくは自分の店を持てたらな、と。自分の店があれば、ここのみんなにとっての雇用先にもなりますし…」
「おう、いいんじゃねえか?応援してるぜ」
「はい!ありがとうございます!
それじゃあ自分は、シスターとみんなにレオンさんが来たことを伝えてきますね。レオンさんも中に入っちゃってください」
「ありがとさん。お言葉に甘えてじゃまするぜー」
あいつはここに来て十年だったかな。俺が初めてここに来たときはまだ6歳のガキだったってのに、もうあんなに立派になりやがって。おっさん、嬉しすぎて涙がちょちょぎれそうだよ。




