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ぶらり散歩道


「ふあぁぁ………ん?今日は雨降ってないのか。んー、四日ぶりに外にでも出るとしますかね…」



 ずっと部屋に籠りっぱなしだと体が鈍ってしまう。それに、梅雨が明けるのはだいたい二~三週間後だしなぁ……こっちの世界の方がちょっぴり早くに明けるっぽいが。

 それでも、長期間であることには変わらないんでね。雨の止んでる間に、気分転換の一つや二つくらい挟んでおきたいわけですわ。


 ただなぁ、昨日まではガッツリ降ってたわけだし……露店や屋台はさすがに出てないだろうな。日用品の不足は特にないし、補充目的で買い物に行く必要もなさそうだ。



「んー、困った……去年はどんな風に過ごしてたんだっけな……あー、そうだ。お金稼ぎで清掃依頼とかこなしてたりしたなぁ、俺」



 古代魔術の記録書って謳われてた高額な本を露店で購入したせいで、ちょっと懐が寂しくなってたんだよなぁ。まさか購入した翌日に雨が降り始めるなんて、だれが予想できるってんだ。

 そのせいで、泣く泣く下水道の清掃依頼とか、森の魔物共を駆逐するはめになったんだぞ……。

 

 下水道の清掃といっても、処理槽で分解の魔道具を使ってるみたいでな。そこに、途中で引っ掛かってる汚物を押し込むだけの簡単な仕事ではあるんだ。もうやりたくはないが……というか、やりたくないからこそ、それ以降は危険な森での魔物退治に変えた訳だし。



「今年の梅雨はまだお金には困ってないんだよなー……ま、とりあえず外には出ますか。せっかく雨が止んでるんだしな」



 相変わらず、空は灰色の雲に覆われたままだが。まぁ、雲の色は昨日よりも薄くなってるし。今日一日……早くても夜になるまでは降ってこないだろ、たぶん。


 俺と同じ考えの人が多いのか、道を歩く住民の姿がよく目に入る。主な目的は買い出しです、って感じの人が大半だけどな。

 特に食材関係の店が賑わってるようで。まぁ、湿気がこうも高いとなぁ。早めの消費や都度の購入が必要になってくるよな。



 しっかし、店員さんも朝から声がようでとる……あちらこちらで購買意欲を掻き立てる文言が飛び交ってらぁ。客側も良いものを見定めようと、熱をもって買い物に挑んでいるし。

 知り合いかご近所さんかはしらんが、雑談に花を咲かせて笑い声を響かせる人も多い。どんよりとした空には不揃いな、晴れ晴れとした人の営みが至る所で繰り広げられてる。


 ま、活気のよさを肌に感じられて、こっちまで元気になれる。ここはいい街だよ、ほんと。



「あっこに寄ろうかと思ってたが……図鑑を渡しに行くときにまとめて行けばいいか。

――たまにはなんの目的もなしに、ぶらぶらと歩くだけってのも楽しそうだ」



 今日の一言。活気溢れる街並みは、ただ歩いているだけでも気分がアガる。


 

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