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保護者の悩み


 俺はソロだ。どこにもクランやパーティーに所属していない。銅級以下のランクならそこまで珍しがることでもないんだがな。


 クランとパーティーの違いについては、大規模か小規模か程度の認識で充分だと思っている。この街で有名なクランやパーティーといえば“豊穣の灯り”、“クリムゾン”、“ワーデルス守備隊”の三つだな。

 

 “豊穣の灯り”はこの街で活動する金級冒険者のパーティー。金級にもなると拠点を転々として活動する人が多いらしいんだが、こいつらはずっとここに留まっている。だからこそ、この街で有名なパーティーでもあるんだが。


 次の“クリムゾン”はあのアレックスがリーダーを務めるクランだ。特筆する点を挙げると規模の大きさになる。金級の冒険者こそいないが、長年冒険者として活躍している銀級のベテラン層が多く所属している。それだけではなく、鉄級や銅級に上がった奴への指導も行っているため、下の層の加入も多い。初心者育成クランって感じだな。


 最後の“ワーデルス守備隊”に関しては、この街の衛兵……以上。なんなら、このクランのリーダーは辺境伯ご本人だしな…。冒険者らしい仕事はあまりしないため、ほぼ全員が鉄級だ。辺境伯だけ金級だが……。


 後は身内でよろしくやってるクランやパーティーがほとんど。



「さて、どうしたもんかね……」



 こんな話をしだしたのももちろん理由がある。


 というのも、リオの貢献度が銅級に上がれるレベルに達したそうで。普通はそんなこと俺に知らされないのだが、一応保護者をやってた時期があったんでね。あいつの境遇や環境的にも俺と近しいから、なにかアドバイスを…ってところだな。


 これが一般的な相手ならアレックスのところでお世話になってこい、って言えたんだが……。

 良くも悪くも、アレックスのクランはいろんなタイプの人がいる。アレックス本人やその周りの奴等の性格が出来ていても、下のやつらまでそうだとは言えねぇんだよなぁ……。

 かといって、ワーデルス守備隊は論外だろ?


 豊穣の灯りはなぁ……ほぼ全員が金級って意味も含めて、高嶺の花なパーティーだぜ?そこにリオを突っ込むのは、ちいとばかしかわいそうだろ。


 でもなぁ、絶対リオに聞いたら『ソロがいいですっ!…えへへ、レオンさんとおんなじですね』とか言うんだよ。ってか、既に何回か聴いてるんだよ!

 俺がパーティーを作れれば良かったんだが、あいにくと三人からなんだよなぁ。


 俺がいなくなってもあいつが過ごしやすい生活を送れるようにするには、誰でもわかる権力的な意味での力が必要なんだよな。今は俺にヘイトが向かってるんで、大丈夫だが。

 とすると、やっぱり最低でも銀級にはしておきたいところ。このタイミングでパーティーとかに所属しておけば貢献度は上がりやすくなるんだよ。


 ソロはランクを上げるのに向いてない。いろんな意味で。



「はぁ、俺はそんなに気にしたことがなかったが……第三者視点になるとこうも厳しいのか……せちがらい世の中だぜ、まったく」


「あら?あのお気楽で人の目なんて気にしない貴方が悩みごとかしら、珍しい。明日は雨ね…やだやだ、傘の用意をしなくっちゃ」


「げっ………何でお前さんが俺の行きつけの店を知ってんだよ……」


「げっ!とは何よ、そんな化け物を見たような反応しないでくれる?これでも私、見た目は整っている方よ?それに一端の冒険者でもあるわ」


 下から見て、ボンッ・キュッ・ストンッ……な美少女と言える顔立ちをした金髪の女性。齢16歳にして金級まで駆け上がった、豊穣の灯りリーダーの“アリー”

 噂では辺境伯の次女と言われているが……間違っていたら不敬に当たるところを、当人が諌めたり周りが動き出さないってことは、あながち間違いではないんだろうな……知らんけど。


 そんなお人が俺にいったい何の用向きだよ、まったく。

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