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ロケット生肉


 俺に愛用の武器というのはない。時と場合、相手によってコロコロ武器を変えるのが自分流だ……器用貧乏なのは認める。


 今回狙う予定のボアという生き物なんだが、ただの猪と侮るなかれ。平均体長約200㎝。反り返った立派な一対の牙と茶色の分厚い毛皮。視界に入った動くものにたいしてとりあえず突進するといった凶暴性。繁殖力が高く、冬の間も溜め込んだ脂肪で活発に活動する程の適応力。どれをとっても厄介だ。


 魔物でもなんでもない、ただの野生動物のくせにその危険度は星二つ。ボアが縄張りに侵入したゴブリンを倒してしまう事がわりとある位には強い。


 こいつを安全に狩る方法としては罠にかける、弓を用いるといった手段が挙げられるな。だが、どちらも狩猟者のやり方で、そんなノウハウは冒険者の俺が知る由もない。まぁ、弓は持てばそれなりに使えるのだろうが……使ってないのにいきなり扱えるとなれば不審がられるんで、やらない。



 てなわけで、今回俺が使う武器はエストック。両手で扱う刺突系の剣で、大きさは110センチ程。想像がつきにくければ、レイピアをでっかくしたようなものだと思えばいい。


 俺は狩人じゃないんで足跡とか糞の古さとかの判断がつけられないが、そこはチートでカバーする。いやまぁ……なにとは言わないが、ゲームのマップってめっちゃ便利だよな。



 というわけで、近くの川で水を飲んでいるボアを一頭発見。この森、山の一部分だからか川がいくつか流れている。水資源に困らないのはいいことだ。



「っしゃあ!かかってこいやっ!」


 

 挑発の声に気づいたボアの突進を横にさっと躱し、こめかみ付近目掛けてエストックをズブリ。脳へと達した一刺しによって、ボアは地面に倒れ伏す。


 自身の体の三分の一ほどある牙を用いた突進は凶悪の一言。その威力は木を貫通することもしばしば。突き刺さって動けなくなる姿は可愛いが、人の体に当たればひとたまりもない。

 事実として、森のなかに入る新人冒険者たちの死因のトップがこいつだから、洒落にならん。


 だが、こいつの肉はかなり旨い。この前倒したオークの方が美味しくはあるのだが、あんな奴そんなに現れないしな。ジャンルも魔物だし。



「よっし、急げ急げ!血抜きぃっ!」



 100㎏を優に越える重さはさすがに持ち上げられないんで、いったんしまい込むことにはなるが……川まで運んで中へドボンッ。エストックの出番はここで終了なんで、適当なショートソードと入れ換える。


 さっそくボアの腹を縦に掻っ捌いて、素早く内臓を取り除いていく。内臓は正直なところそこまで好きじゃなかったんだが、自分で獲らないと食える機会が無いのもあって、こっちに来てからは喰うようになった。まぁ、処理とか手間とかの問題で腸は食べないんだが。


 こういった解体もアレックスが教えてくれたんだよなぁ……リオのやつは教えずとも知っていたが。あいつの過去はあまり詮索してないんでわからんことだらけだ。魔法も使えるしな。



 ふぅっ、ボアをばらすだけで日が落ちてきやがるぜ。こっちに来てから十二年も経つが、解体作業はいつまで経っても慣れない。解体用のナイフにも補正が乗ってくれよ、そこは……。

 ひとまず、自分が食べる用の部位とギルドに卸す用の部位は分けられたんでよしとする。


 この世界のボアはでかいこともあって、タンの肉厚がすごい。豚でもそんなにねえぞってくらいには分厚いんで、食べがいがある。自分用として欠かせない部位の一つだ。

 後はヒレだな。サイズがでかいとはいえ、とれる量がそんなに多くないのは変わらない希少な部位だ。残りのロースやらバラは適当に頂いておいて仕舞っておく。時間経過しないのはテンプレよな。


 

 うし、担い棒使えば持てるくらいには軽くなったか。地味に牙も重たいんだよなぁ。安いが金になるので持っていくけど。

 っとと、日が完全に落ちたら門が閉まるんで……ちょいと急がなきゃマズイな。


 うおおぉっ!全力ダッシュじゃいっ!

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