サンジェロ孤児院の日常
壁の隙間風に吹かれてルーフィリアは目を覚ました。
寒さに体を震わせながらのっそりと起きた彼女は、伸びきった髪を邪魔そうにしながら暖炉へと向かった。
見た目は、10歳くらいの女の子で、腰に届くほどの長い青みがかった銀髪を持っている。
暖炉に着いた彼女は近くにおいてある薪をくべて火をつけた。
暖炉の日が大きくなるころにはルーフィリアは着替えを終えて、かまどに向かっていた。
この孤児院においてある食料はさほど多くはないが、ここにいる全員を満足させられるほどにはあった。
孤児院にいる人数は、院長含め10人にも満たない小さな孤児院である。
調理担当はその10人でローテーションしている。
「使う食材は、これと、これと・・・」
ルーフェリアは料理のメモを見ながら食材を手に取って机に置いた。
作る料理はいつも同じものでレシピは かまどのそばにおいてある。
メモの通り取っていると、一つの食材がないことに気が付いた。
「おかしいな、ここにフェルボクが置いてあるはずなのに」
フェルボクはジャガイモに似た芋類の野菜である。
「いつもこの場所においてあるはずなのに、リンが昨日使いすぎたのかな、まあいっか」
そんなことを考えともしょうがないかという風にルーフェリアは調理を始めた。
料理といっても質素なもので、細かく刻んだ野菜を入れたスープと、まともに食べられないほど固いパンである。
「よし、みんなを起こしに行かないと」
料理が完成したルーフェリアは皆が寝ている部屋へ向かった
「みんな起きてください朝ですよ」
子供たちは眠たそうに目をこすりながら起きた。
「リン、昨日フェルボクって使い切っちゃった?」
リンと呼ばれた女の子は、に疑問符を付けたような顔をして答えた。
「昨日までは、まだあったはずだよ、どうして?」
「実は・・・」
ルーフェリアは料理をしたときに、フェルボクがなかったことを話した。
「そっか、コルニルさんに聞いてみたいけど・・・まだ起きないよね」
この孤児院の院長、コルニル・サンジェロは朝がとても苦手なのだ。
「コルニルさん起きるのお昼だから、どうしてもね」
そんな話をしていると、院長室から赤い髪をした20代後半ぐらいの女性が出てきた。
彼女こそ先までルーフェリアたちが話していた院長、コルニル・サンジェロその人である。
『コルニルさんが起きてきた⁉』
二人の声がハモった。
「わたしがおきてきちゃまずいのか?」
コルニルは苦笑いをしながら、そう言った。
「いえ、この時間に起きてらっしゃるのが珍しくて、びっくりしただけです、申し訳ありません」
「はっはっは、冗談だよ、怒ってないからそんなにおびえないでくれたまえ」
そう言って、コルニルは二人の頭を撫でた。
「実は昨日は寝てなくてね、これから寝ようとしたところなんだ」
ふとコルニルの目元を見ると、大きなクマができていた。
「領主様に提出する書類がなかなか完成しなくてね、やっと今出来上がったところなんだよ。この書類は期限が今日まででね、すっかり忘れてたからすごく焦ってしまったよ」
笑いながら言っているが、とても大変なことではないかとルーフェリアたちは、思った。
「その書類は、何の書類なのですか?」
「この孤児院に足りないものとか、必要なものはないかっていう簡単なものだよ」
ここの領主は貴族でありながら、私たちのような孤児にまで、気を配るような、聖人君主のような人 だ。
「なんでそんな大事な書類を、今まで忘れてたんですか!」
「いやーなんでだろうね」
悪びれる様子もなく、コルニルは答えた。
「それはいいとして、私も一緒に食べたいんだけど、私の分ももいいかな?」
「はい、大丈夫ですよ」
ルーフェリアは、厨房へ向かいコルニルの分の食事を用意した。
皆がそろったことを確認したルーフェリアは自分の席に着いた。
『いただきます』
食べ始めたルーフェリアはフェルボクがないことを、コルニルに聞いてみることにした。
「コルニルさん、フェルボクがなかったのですが、何か知りませんか?昨日まではあったそうなのですけど」
「ごめん、それは私が昨日動かしたのが原因だ」
思い出したようにコルニルは答えた。
「先の書類のために野菜も見ていたんだけど、戻す位置を間違えてしまっていたようだ、後で戻すのを手伝ってくれないか?」
こんな私の小説を読んでくれた方、本当に感謝しています。
初めての小説ということで、拙く、読みづらいところもあるかと思いますがこれからも読んでいただけると嬉しいです。
更新頻度は、決して早くはないと思いますが、気長に待っていてください。