第7話 猫人族の三姉妹5 盟友の契り(通常版)
治療を終えて、目の前の三姉妹を見つめる。奴隷商館での初見時とは雲泥の差だ。身体から発せられるオーラが、明らかに違うのを感じ取れる。リドネイの時も同じだったので、間違いなく完全回復したと言えた。
後は身形の問題だが、これはリドネイとナーシャに任せるしかない。男性の俺には無理な領域だしな・・・。
「これで大丈夫そうだの。」
「完璧ですね。」
治療が終わった身体を見入る3人。その彼女達の身体に触れていくリドネイとナーシャ。先程までの衰弱した様相ではなく、すっかり健康体へと戻っていた。
今も自身の身体を見て、驚き続ける三姉妹。その彼女達のそれぞれの頭を、優しく撫でてあげた。何も心配しなくていい、その一念を込めて。すると、不意に涙を流しだした。この涙に込められているのは、悲しみの払拭と歓喜の一念だろう。
ただし、これだけでは終わらない。リドネイにも行った、最後の一手を行う必要がある。それに、リドネイ自身にも同じく行うべきだ。
リドネイとナーシャに慰められている三姉妹。彼女達の前で、巾着袋に入れてあった奴隷の首輪を取り出す。それを見て、サーッと顔を青褪めていく。
その彼女達の前で、両手に持った3つの首輪に“トドメの一撃”を加えた。腰に装着している、通常日本刀を鞘から抜き放つ。その刃を使い、3つの首輪を可能な限り滅多切りにして破壊した。
その様相を見て、驚愕の表情を浮かべる三姉妹。リドネイとナーシャの方も、同じく驚愕の表情をしていた。そのボロボロになった元奴隷の首輪の残骸を、再度巾着袋に戻していく。
そして、向かって左側にいたリドネイの前へと進む。一旦彼女に通常日本刀を持って貰い、徐にその首へと手を回した。今もカモフラージュとして装着していた奴隷の首輪を取り外す。再び通常日本刀を受け取り、先と同じ様に奴隷の首輪を滅多切りにして破壊する。
この行動に対しても、5人は驚愕の表情を浮かべていた。特にリドネイが一番、驚愕の表情を浮かべている。こちらも、元奴隷の首輪の残骸を巾着袋へと入れた。
「これで、本当の意味で自由だ。今後は、奴隷の身分など一切気にしなくていい。」
通常日本刀を鞘に仕舞いつつ、呆然としている彼女達に語る。三姉妹は今を以て、奴隷から解放された。リドネイの方も、改めて奴隷から解放された事になる。
一応、ティルネアに4人に“隷属魔法の残滓”が無いか調査して貰った。俺にはそういった探索能力はないため、彼女に委ねるしかない。結果は、“完全なる自由”だと告げてくれた。
目の前で起きた現実を、信じられないといった雰囲気でいる4人。その彼女達に対して、改めて両膝を付いて頭を下げる。
「同族のカス共が、貴方達に酷い仕打ちをした・・・。本当に申し訳ない・・・。」
彼女達を解放した時に、俺は必ず行おうと決めていた。俺自身は当事者ではないが、同じ人間である以上同罪に等しい。その彼女達に、俺は心から謝罪をする。
「俺にできる事は、このぐらいだ。詫びても許されるものではない。だが、あえて貴方達にお願いしたい。今後も盟友として、共に戦ってはくれないか?」
頭を上げて4人を見遣る。呆然としている彼女達を見ながら、改めて本当の思いを語った。彼女達以外にも、その傍らに居るナーシャにも目を向ける。
先の謝罪は4人に対してだが、盟友として共闘を望む姿勢にはナーシャ自身も含まれる。俺にできる事は限られているが、できる限り彼女達の助力を賜りたい。
こちらの懇願を伺い、徐に俺の手に自身の手を添えるリドネイ。同じく、ソファーに座っている三姉妹も添えて来た。何時の間にか、4人とも号泣している。
「こんな・・・夢みたいな事・・・ありがとう・・ございます・・・。」
「・・・盟友は・・・詳しく分かりませんが・・・私にできる事なら何でも・・・。」
「本当に・・・ありがとうございます・・・。」
涙で顔をグシャグシャにしつつ、感謝の言葉を述べていく三姉妹。数時間前では、全く考えられない未来だろう。少なくとも、3人をプラスへと進められたのは間違いない。
「・・・貴方様には、多大な恩があるのですよ・・・。それなのに・・・。」
「まあ・・・“ルデ・シスターズ”への行動の手前、お前さんだけ行わないのはな。」
三姉妹と同じく、涙で顔をグシャグシャにしながら語ってくる。リドネイ自身の解放は、既に行っていた。ただ、今回の流れは仮の奴隷の姿を消すためもある。
俺が語った通り、三姉妹だけ完全解放するのは失礼だ。となれば、リドネイも含めた完全解放が良い。これで、真の意味で足枷は取れたと思いたい。
「・・・“マスター”の心意気、感服致しました・・・。そして、貴方様が望まれる盟友の間柄・・・、“エルフ族の女王ナーシャ”は心からお受け致します・・・。」
今度はナーシャの方が片膝を付き、俺に頭を下げてくる。一部始終を見続けていた彼女の、心からの語りだろう。それに、彼女は自身を女王と語ってきた。それが何よりの証である。
今までは、一般のエルフ族であると語っていた。それを撤回し、改めて女王と語ったのだ。これには薄々感じてはいたが、彼女の口から語るまで待つ事にしていた。
素性を語るのに、どれだけの勇気が必要だったのか。今の俺には、とても想像はできない。だが、この様に改めて語ってくれた事に、心から感謝するしかない。
「・・・お嬢様方、ありがとう。」
彼女達の思いと厚意を受けて、心から感謝を述べた。同時に、どんな事があろうが彼女達を厳守するのだと決意した。一介の警護者たる存在だが、俺にできる事を遂行するのみだ。
徐に、俺の周りを囲む彼女達を抱き締める。少々無理な姿勢だが、彼女達を包み込む様に抱き締めてあげた。今の俺にできる、行動による厚意だ。
今も胸の中で泣き、色々な思いを抱く5人。その彼女達を見つつ、この出逢いへと導いてくれたティルネアに感謝をした。そんな俺の目の前で、静かに見守る彼女であった。
余談だが、完全復活を遂げた三姉妹は、創生者ティルネアの気配を察知する。自分達の背後にいる彼女を見つめて、驚愕の表情を浮かべたのは言うまでもない・・・。
これに関してだが、獣人族は霊体的な存在を見る事ができるらしい。リドネイやナーシャといった、ダークエルフ族やエルフ族も同じだ。狼人族のトーラもしかり。
ウェイス達やテネットは、ティルネアの顕現化した時に、その存在を知るに至っている。神様的存在のティルネア。何だかんだで、意外なほど周りに知られていっている・・・。
まあ、隠し立てするような事ではないのは確かだ。俺が罪悪感を感じるのは、そう安々と彼女を現しても良いのかという事だ。それに、言葉を悪くすれば、創生者ティルネアを利用しているともいえてくる。
これは直ぐに彼女に見抜かれ、一切気にするなと断言された。彼女自身が進んで顕現化しているのだから、責任は自身にあるとまで断言してきている。それに、彼女自身は世上に関わりを持つ事を望んでいるようだ。
何だか、とんでも無い事になりそうな気がしてならない。だが、当の本人がそう望むなら、それを叶え続けるのが遂行者たる存在だ。
彼女も含めた全ての存在を、守り通すのが俺の使命である・・・。
第7話・6へ続く。
奴隷の首輪を通常日本刀で破壊する。カキカキしていて、刃毀れしないのかと思ったのは自分だけでしょうか?@@; まあ、異世界仕様により、超強力な獲物に化けているので、多分大丈夫だろうという見解です(-∞-)
詳細描写に慣れだすと、本当にマズい感じですよね@@; 書き足したい部分が多く出てしまい、必然的に話数も増えていく><; 探索者側でも挙げましたが、今度の同話の執筆は詳細描写搭載版で続けようと思います><; でないと、恐らく執筆自体できなくなりそうで・・・何とも(>∞<)




