第5話 修行と武具作成5 タッグバトルとハンディキャップバトル(通常版)
武器防具の選定が終わり、冒険者ギルドへと戻る。雑務に明け暮れるテネットに申し出て、訓練場を借りる事にした。テスト試合と言う名の修行である。今回は、実戦さながらの流れを取る事にした。
更に今回は、リドネイ以外にトーラや4人もいる。集団戦闘を踏まえた修行を行う必要がある。先日のパワーベアー達との戦いを考えれば、やっておいて損はない。
負傷をした場合は、俺の回復魔法で治療が可能だ。危険でない限りの、本気で戦っても良い流れとしたい。ただし、攻撃魔法は非常に危険なため、今回は使用しないで行う事にした。
冒険者稼業では、相手が魔物だけとは限らない。タブーとされるが、冒険者同士での対決も十分有り得る。先日の愚物冒険者共の事例がそれだ。
それに、今後もし戦争の類が起きた場合、こういった修行は必ず役に立ってくる。更には、そこには武器以外にも魔法も投じられる。今回の試合は、まだまだヌルい部類に入るしな。
警護者の生き様でも、同じ様な心構えで行動をしている。特に紛争以上、戦争に近い抗争になるなら、事前に修行をしておいた方が断然良い。
「あの~・・・私も参戦しても、よろしいでしょうか?」
その言葉に、一同して呆気に取られた。どうやら、先の昇格試験の様相を伺ってか、彼女の冒険者魂に火が着いたようなのだ。その目を見れば、彼女が本気である事を痛感させられる。
「ふむ・・・戦闘スタイルは?」
「軽業師的な感じです。」
そう言いつつ、腰に装備されたダガーを見せてきた。受付嬢には似付かわない、非常に大型のダガーだ。それが2本あり、鞘に収められ、ベルトで括り付けられている。
と言うか、再度俺達の元に訪れた時、彼女の衣服は冒険者風の出で立ちだった。本気モードであると物語っている。それに、雰囲気からして相当な手練れだと直感ができた。
「了解した。今回は魔法以外の、普通の立ち回りの修行にする。」
「腕が鳴りますぜぃ!」
テネット以外は、既に準備万端の状態だ。それと、今回はチーム分けでの対決とした。
俺はリドネイ・トーラ・テネットと組み、相手はウェイス・サイジア・ナディト・エルフィの4人となる。チームという形なら、ウェイス達の方が断然有利だろう。
こちらはチームを組んで日が浅く、特にテネットとの共闘に関しては初対面同士となる。連携を重視するのなら、非常に不利だと言えるだろう。ブランクがあるとは言うが、それでも彼女の基本戦闘力は相当なものだと思われる。
何はともあれ、今は論より証拠だ。実際に挑んでみて、この目で確認してみるしかない。実践ほど有効なものはないのだから。
そんな中、俺達のテスト試合を聞きつけたのか、ギルドに屯している冒険者達が駆け付けて来ている。どうやら、引退者のテネットが冒険者に復帰したと勘違いしたようである。だが、当の本人は気にしていない様子だ。
まあ、彼女自身もまだまだ若い。自身の夢を掴む行動をしても良いだろう。こればかりは、異世界の俺には何とも言えない。
ただ1つだけ言えるのは、周りを不幸にはさせないという事だけだ。ここは今後も貫いていく決意である。
訓練場で対峙する俺達。その周りは、観戦する冒険者達が見守っている。今回は武器のみの応戦式にしているため、被害が拡大する事はないだろう。これに魔法を加えた場合は、悪化する恐れがあるのでお勧めできない。
双方とも、武器を構えつつ静止状態。先の昇格試験の様な、相手から猛攻を加えてくる形ではないため、出方を待つ後手側戦法を取らざろう得ない。それは、お互いに拮抗した戦闘力を持っている証拠でもある。
先手を打ったのはテネットだった。両手に持つダガーを構え、相手へと突撃を開始。その彼女に追随するのはリドネイ。丁度彼女の真後ろに付く感じで突撃を始めた。
その2人の時間差攻撃を迎え撃つは、新装備のウェイスとサイジアだ。白銀の大盾を構え、テネットとリドネイの猛攻を受け止めようと動き出す。そこに、何とトーラが突撃を開始するではないか。特大剣の二刀流による自重の増加を物ともしない、非常に軽快した動きだ。
しかも彼女、特大剣を外面向きに構えている。胸を曝け出すかの様な姿は、非常に隙を生む体勢だ。だが、その死角をテネットとリドネイが隠しているため、若干隙が相殺されている。
こちらの4人のうち、3人が突撃を開始した現状。相手側も反撃を開始しだす。ナディトとエルフィが俺に向けて動き出してきた。この場合は、突撃した女性陣をウェイスとサイジアに任せ、俺にターゲットを切り替えたようである。
俺へと突撃する2人に、俺はあえて白銀の大盾から手を離す。2人の特性からして、防御に回るのは不利である。そこで、腰と背中の格納兵装を展開する事にした。右手に携帯方天戟、左手に携帯十字戟を構える。
ナディトはこちらから正面向かって右側から、エルフィは左側から攻撃を繰り出してきた。ナディトの獲物は巨大な槍で、エルフィの獲物は長剣の二刀流。前者は携帯方天戟で、後者は携帯十字戟で受け止める方が無難だろう。
2人の猛攻を2つの携帯兵装で防いでいく。自慢ではないが、俺は対多段戦闘に関しては、それなりに定評がある。頭を上手く使うのは苦手だが、こうした複数の相手からの攻撃に対処するのは朝飯前だ。
逆に、ナディトとエルフィや、身内の面々の様な対人戦は非常に苦手だ。特に攻めに入っている人物ほど、戦い難いものはない。俺はとにかく、後手側戦法を取るスタイルなので、攻め入るのは非常にやり難い。
ただし、指令されれば、どんな長時間であろうが“時間稼ぎ”を行う事はできる。
俺がナディトとエルフィの猛攻を引き付けている間、ウェイスとサイジアは攻め手を欠く状態に陥っていた。彼らの合間を見ての反撃は、全てトーラの特大剣で打ち落とされていた。そこに、テネットとリドネイの猛攻が突き刺さる。
2人の猛攻を白銀の大盾で防いでいくが、反撃をする事ができていない。そこにトーラの特大剣二刀流による、死角からの一撃だ。俺よりも体躯が良いウェイスとサイジアは、特大剣ではあっても回避が非常に困難である。
そう、テネットとリドネイが盾の効果を殺ぎ落とし、そこにトーラが攻撃を仕掛けたのだ。この流れに気付いた時には既に遅く、特大剣二刀流が2人に襲い掛かった。手持ちの武器で防ごうとするが、その武器ごと吹き飛ばされてしまう。
特大剣の質量は、大鎚に匹敵する。その重量武器を防いだだけでも凄いのだが、流石の2人も押されてしまう。そして、トドメと言わんばかりの一撃を放つテネットとリドネイ。同時にウェイスとサイジアの喉元に獲物を突き付けた。
裁定に関しては、自己申告的な感じになる。現状を踏まえれば、ウェイスとサイジアの敗北は確定したも当然だろう。それに、2人の方も現状を素直に受け入れ、降参の合図をした。
それを窺い、次なる目標へと突撃を開始する3人である。
俺への猛攻に終始するあまり、仲間の敗退に気付かなかったナディトとエルフィ。背後から迫る気配を察し、こちらへの猛攻を止めて間合いを取ろうとする。
しかし、そうは問屋が卸さない。手数が多いエルフィにテネットとリドネイが、一撃が重いナディトにトーラが向かう。その彼女に俺も追撃を開始した。
エルフィに関しては、幾ら双剣を使おうが、同じ手数勝負のテネットとリドネイに為す術がない。タイマン勝負なら分があったのだが、倍以上の連撃を防いでいるうちに決着が着く。2つの獲物を弾かれ、無防備になったエルフィ。そこに2人の獲物が喉元に迫る。
アレが本気であれば、その場で喉元を貫かれていただろう。あの2人の本気を見て、本当に恐怖としか言い様がない。
ナディトへは、トーラの特大剣二刀流の猛撃が襲い掛かる。獲物のリーチは同じだが、その質量は段違いである。特大剣を軽々とぶん回す彼女に、防戦一方になる彼。
そんなナディトに向かって、携帯十字戟を回転させながら放り投げた。ブーメランを投げる様な感じだ。重量配分的に、そうできるようになっているとの事である。実際にこうして実践して、その効果が実証できた。
携帯十字戟が迫り来るのを、その場でジャンプして回避する。そのナディトに対して、左右から特大剣を振り付けるトーラ。着地した際に、2つの刃が彼の喉元に肉薄した。一切の隙を排した鋭い一撃に為す術がない。
そうして、エルフィとナディトの敗退が決まった。ウェイスとサイジアの時よりも、実に呆気なく決着が着いてしまう。
この場合は、4人の戦略ミスだ。ウェイスとナディトといった、攻守を定めたタッグなら、女性陣の猛攻を防げていただろう。防御担当のウェイスやサイジアを留めようとしても、攻撃担当のナディトとエルフィが近場にいるのだ。
だが、今回は防御担当のタッグのみ、攻撃担当のタッグのみで打って出てしまった。これが明確な敗退理由だろう。まあ、女性陣のあの時間差攻撃を考えれば、攻守を備えたタッグでも勝ち目は薄いと思われる。
地球でも、身内とプロレス技の検証実験を行った際も、今の様な結果に至った事があった。ただ、あの時は女性陣の方が圧倒的戦闘力を見せ付けている。男性陣を完膚無きまでに粉砕していた。一時期、女性陣の事が怖いとボヤいていたわ・・・。
ともあれ、4人の今後を考えると、今回のテスト試合は有意義な結果となっただろうな。
第5話・6へ続く。
会話が少ない><; まあ、バトル描写の場合は、対峙する際の語り以外には、お互いにぶつかり合う描写だけになりますし@@; あと、この後にもありますが、長かったので分割しました><;
こうしたバトル描写は、後に探索者や警護者での大改修時に大いに役立つと思います。今はマスターデータ的に本編を完成させねばなりませんので><; 何とも(=∞=)




